本作は坂口航氏作「飛騨の職人」から着想を得た、カクヨム発クトゥルフ神話のクロスオーバーである。
飛騨の職人が彫った貌の無い仏は持ち主を害するという。
主人公の兄、助蔵は博打狂いである。
仏像の気味悪さに質流れさせようと訪れてみれば、その仏像は盗まれたものであろうから返却せねば、と説く。
さっそく主人公と質屋の主である観柳は寺院を訪ねてみるのだが……。
「無貌」という言葉はクトゥルフ神話を愛する者にとって、偏愛すべきガジェットであろう。本作は期待通りの展開を「魅せて」くれる。
クトゥルフファンを喜ばせる小ネタもきっちり仕込んである。
物語の冒頭、登場する茶屋の名前に作者の遊び心を感じられて嬉しい。