失ったもの
社用車で二時間飛ばして着いた先にあるのが、この田園地域。ドアを開けて外に出ると感じる田舎の雰囲気。都会の喧騒から離れた、どこか非現実的な空が広がっている。思わず、膝を曲げ道路脇の雑草に目をやる。バッタがいる。掴もうとして右手を伸ばすが、トラクターの音で注意が横にそれる。
ふうぅ。どこからか空気が漏れ、現実世界に戻ってくる。ひびの入った年季のある田舎道をスーツの男が歩いていく。
コンコン。
「御免ください」
中からの応答は無い。誰もいないのだろうか。もう一度試すが、変わりはない。日差しを浴びて汗を垂らす中、こんな調子でほとんど人と出会うことが無い。気配はあるのだが、痕跡はあるのだが、そこからの応答は一切無いのである。まるで私がここにいない者であるかのように。
リーマンが見る異世界 異世界攻略班 @himajinnto
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