第2話 こんな奴が入学してすみません

【変わり者】

普通の人と性質、言動などが違う人。奇人。変人。




 幼稚園、小学校と附属の私立学校に通っていて、当然そのままエスカレーターでこれまた附属の中学校に通うものだと思っていたら、ひょんなことから受験することになり、過酷な受験勉強シーズンを乗り越え、見事第1志望校に合格し、今日の入学式を迎えていた。

 と、早口にごくごく平凡な私の生き様をごくごく平凡に語るは、わたくし、佐藤である。あ、嘘です。佐々木です。まあ、私の名前なんて地球が回る上でたいした影響を持つものではないので、割愛。

 恒例の自己紹介だ。

 性別。男である。もちろん嘘だ。女である。

 得意科目。国語である。

 苦手科目。理科である。

 好きな食べ物。タコライスである。

 嫌いな食べ物。ホタテである。ホタテ嫌いやだ。

 特技。初対面の人とのコミニュケーションである。正直、あまり役に立たない。

 最初のうちは良いのだ。そのコミュ力と明るさ故に、新しいクラスになって早々に催される学級委員決めの時には、なんと5、6票ほど獲得している。しかし、10月の第2回学級委員決めともなると、私という人間がどれほどふざけているのかを皆わかってくるので、1票たりとも入らない。どころか、話しかけてすら来ない。……寂しくなんかないもん。

 最近自分のこの性格が名前を持っていることを知った。『社交性コミュ障』というらしい。なんだこの反語は。面白いぞ(そうでもない)!

 おお、何とそんなことを言っているうちに、学級委員が決まったようである。投票ではなく、立候補制であったようだ。

 んんん?珍しい単語が書いてあるぞ。…………ほほう。宗教委員会、というものが我が校にはあるらしい。

 確かにキリスト教の学校ではあるが、毎日の礼拝を除けば、そこまで宗教を推してはこない。とは言え、宗教委員という単語を単体で聞いてしまうと、なんだか怪しさ満載で近寄り難いものがあるな。もっと別に良い名前があっただろうに。おお、こちらも立候補制か。おいおい、果たしてこんな怪しい委員会に入る変わり者がいるのかい?まあ、聞くだけ野暮というものか。さあ、せっかくの機会なのだから、クラスの変わり者を認識…………ああ、かわいそうな不幸者という可能性もあるのか。どちらにせよ、どんな人物なのか、気になることに変わりはない。


 そんなこんなで、私は見事、宗教委員となったのであった。はっはっは。

 隣の席の友人と仲良くやることにしたのである。 仲良しこよしである。

 ちなみにこの友人は、夏休み明けぐらいから友人ではなくなっていたのだが(自然消滅である)、理由は前述の通り、私のふざけ具合によるものであると思う。

 さて、この宗教委員に入ったおかげで、随分と大変な思いをしたのだが、それはまだあの頃の私が知るところではない。

 実に運命的な伏線を今張っているのだ。この出来事、後になっても忘れないでいてほしいものだ。

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