第45話・様々な生徒たち
長谷寺が3Dの教室に入ると、すでに教室内にいた全員から挨拶の言葉をかけられ、彼も元気に挨拶を返した。その手にはシッカリと石川に貰った国語辞典がある、しかし初日に見た彼の武器であるステッキが見当たらない。この治安が悪い地帯で、あの武器なしで大丈夫なのかと心配した生徒が質問をする。
「先生、あのステッキはー?」
「えっ?あ、忘れてきちゃった」
質問されてはじめて自身の両手を見た長谷寺は、すっかり頭の中から武器の存在を忘れ去っていたのだった。少し首を傾げて、何かを考える素振りを見せたが、すぐに笑顔を浮かべてモフッとした美しい闇色の髪に手を当てると、そこからギラリと光る細かな装飾がされてある短剣を取り出して見せた。見た目がステッキだった防御もできる先日の剣よりも、完全に、攻撃する為だけに作られたであろう短剣を目にして、3Dの生徒たちは
昨日の[鬼ごっこ]という名のデス・ゲームにも見えた爆走授業といい、隠し武器として持っていたステッキといい、長谷寺の知人たちの中でも一部を除いた者にとって彼の存在は謎でしかない。初期に長谷寺の恐ろしさを見た生徒や教師は、決して彼を敵には回すまいという判断が出来ただけ幸運だと言えるだろう。ステッキの次は短剣かと言葉にしかけた生徒もいたが、斬れ味を目の前で見せてくれそうな気がしたので、喉元まで出てきていたソレを飲み込んだ。
長谷寺が迷っている所へ毎度毎度、都合良く現れる高山が、楽しそうに笑ってスキップをしながら美術室へと連れて行ってくれた。美術室では、不良生徒たちが全員揃って席についていたが、高山の姿を見るや思いっきり椅子を倒して立ち上がり、後退りした。学園の誰もが知っているNO.1は2Dに在籍しているが、彼を見た事がある者は余りにも少ない。
2DにはNO.1以外にも
昨日の[鬼ごっこ]をする長谷寺と彼の姿を見るまでは、美しく、正体は気になるが、D組に相応しい生徒くらいの認識だった。彼等には、彼等にしか形成できない情報網がある。わりとボケ倒している長谷寺に対しては、従順にしていれば問題は無いはずだという情報が入っていたが、彼を連れてきた怪しげな笑みを浮かべている高山は、いつ何をして来るか分かったものではない。後退る少年たちの反応を見て、長谷寺は首を少し傾げ隣にいる高山に質問しようとした。
「人間、面白いねぇ。紫陽花に攻撃したら、僕が殺す。じゃあ紫陽花、またねー」
「うん!またねーっ!」
高山は、初日の朝に吉川が長谷寺に対して言って聞かせた言葉を、きっちりと覚えていた。そして、その言葉に対して長谷寺が返した言葉も、覚えていたのだ。[生徒たちは守るべき存在]であると吉川が口にして、彼は[それが決まりゴトなんだね、分かった]と返し、この
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