第40話・仄暗い者
長谷寺の存在に注目しているのは、なにも生徒たちだけではない。教師たちもそうだ、治安の悪いこの近辺で、[敵に回してはならない]と言われている人物たちと顔見知り以上の関係であることが、容易に見てとれる彼の正体を解明しようとする動きもある。職員室の窓からも三人が並んでいた様子は、よく見えていた。多くの教師たちが関心を示している中、2D担任の吉川がボソリと言葉を
「先生方、妙な気は起こさないほうがイイっすよ。長谷寺先生のバックに誰が付いてると思います?[BillyBlack]のボスですよ?」
吉川は、[BillyBlack]の一員だ。
昨夜、
四六時中とはいかないが、彼を見張る者と、彼の行く道をそっと軌道修正してやる者が必要だ。そこで忍は前者に幹部である幸嶋を、後者に吉川を指名した。教師たちの中にも様々な組織に属する者、単独の犯罪者などがいる。彼等には、長谷寺に干渉する事で発生する危険性を、前もって充分に知らしめなければならない。その警告を無視して行動に
「敵に回すのは
吉川を含む教師たちの視線が、声の主のほうへ集中した。色白で華奢な身体、腰まである金色の髪をハーフアップにして
「綺麗な名前の先生ッスよね、長谷寺 紫陽花なんて。羨ましいッス」
「俺はお前の名前が好きだが、何にしても神域級の魔物だ、鉢合わせにならなけりゃ問題ないだろう」
「そうッスね、そん時はさっさと消えるッスよ」
肩に乗っている黒猫と喋りながら、ジャケットの内ポケットからタバコを取り出して
「ねぇ、名前、教えて?」
「─…九埜 真日留、隣のクラスの担任ッス」
早速鉢合わせてしまった二人に、興味を持たれてしまった九埜の事にも呆然としつつ溜息を吐く黒猫、その様子にも、彼は素早く反応した。黒猫の眼をジッと見詰めて、指をさす。
「その彼の名前は?」
「セラっていうッス」
長谷寺は、珍しいこの出会いにキラキラと目を輝かせて、もっと話したいといった様子の彼だったが、あまり良くない状況なのではないかと考えた黒腕に、背を押されて職員室へ向かっていく。彼は大きく手を振り、嬉しそうに九埜と黒猫の名前を叫びながら姿を消した。
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