第37話・紫陽花の髪留め
朝の八時、高山が眠りから覚めた。懐かしい夢を見て、珍しく優しげな笑みを浮かべると、いつの間にか自分の膝を
「紫陽花、起きて」
「──…おはよぉ」
スッと彼の
「宝箱に入れてるよー、持ってるとなくしちゃう」
「じゃあ、僕が付けてあげる、僕だけが外していいっていう約束にしない?」
「する!!!」
もう二百五十年も昔のことだが、二万年前の大戦後に、人間の代表サリファノ・ルーデ王と魔物の代表である神王ティード・マルファスが交わした
彼が、面白そうだから乗り込んでみようとしていた革命戦争は、魔物達が暮らす地上世界にある巨大な学園都市、
そして、いつも当て
高山は神域級の獣人だ、他の神々に勝るとも劣らない嗅覚と聴覚を持ち合わせている。彼は[もしや]と、この島に長谷寺が居続けた理由に行き着いて、嬉しさで髪留めをしっかり握り締め駆けていき、それを彼の手にそっと置いた。髪に付けていれば、絶対に外れないのだが、その時は胸元に付けていた。そういう事はまたあるかも知れないと考えた長谷寺は、二度と失くすまいと決意して大事なものを入れるストラーナ作の特別な宝箱に仕舞ったのだった。
「持ってくるねっ!」
「紫陽花、髪持ってあげる、ちょっと待ってねー」
「はぁい」
長谷寺の長い長い闇色の髪を
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