第24話 ドミニク・オードラン
「隊長、町の西側で生存者の一団を発見したとの報。ですが、周辺に教団の戦力が集中していて苦戦を強いられているようです」
「ここは自分一人で十分だ。ロイクは二人連れて加勢に向かえ。ソレイユ殿からこの場を引き取った以上、生存者の確保は最優先だ」
「了解しました」
ドミニクの指示を受け、副官である黒と金のツートンカラーの髪をした騎士、ロイク・デルピエールは即座に行動を開始。隊員二名を連れて町の西側へと向かった。
町のメインストリートに残ったドミニクは、周囲を取り囲む、黒いローブを纏った10名の教団戦闘員と20体程のエリュトン・リュコスを一人で迎え撃とうとしている。
「たった一人でこれだけの人数を相手にするつもりか?」
「たったこれだけの人数で俺の相手にするつもりか?」
挑発には挑発で返す。平時こそ穏やかな印象のドミニクだが、こと戦場となると秘めた攻撃性が表面化しやすい。ハルバードという、破壊力を重視した無骨な得物を好むことからもその片鱗が伺える。
「言ってくれる――」
挑発に苛立ち眉を
戦闘員の亡骸を見下すようにして、血まみれのハルバードを担いだドミニクが後方に立っている。挑発を口にするのとほぼ同時に、ドミニクは重量のある
「こいつ速いぞ! 動きを止めろ」
数の優位が有利に働くとは限らないと、教団戦闘員も悟ったらしい。
20体のエリュトン・リュコスをドミニク目掛けていっせいに
「大気は凶刃――」
エリュトン・リュコスごとドミニクを切り刻むべく、5人の魔術師が一斉に、斬撃を発生させる魔術ラーミナを詠唱。低ランクの魔術とはいえ、5人同時に発動となればその破壊力は馬鹿にならない。人一人を殺めるには十分すぎる凶器となる。
ラーミナは比較的詠唱が短く発動しやすい魔術でもある。20体のエリュトン・リュコスを使えば、発動までの時間稼ぎは容易と思われたが、
「何だと……」
危機感を抱いた接近戦専門の戦闘員が、長剣を構えて魔術師たちの防衛に入る。
ドミニクに襲い掛かったエリュトン・リュコスは驚くべき速度で数が減っていく。ドミニクが豪快に一撃を振るえば即座に5体が斬り飛ばされ、ある個体は足蹴りに、ある個体は硬質な籠手で、頭部を吹き飛ばされる勢いで殴りつけられ、次々と消滅していった。
ラーミナは短い詠唱であるにも関わらず、詠唱の半分にも満たぬ時間でドミニクはエリュトン・リュコスを
「がっ――」
ドミニクの圧倒的な速度に反応出来ず、剣を振るう間もなく、教団戦闘員の頭部がドミニクの右手に
「血霧の――」
姿勢を高くすると同時に地面を蹴り上げ加速、魔術師に接近するとそのままハルバードで強烈に切り上げ、一撃でその命を奪い去る。
近くにいた二名の魔術師の首も即座に刎ね飛ばし、少しでもドミニクの動きを鈍らせようと二人同時に斬りかかったてきた斧使いと大剣使いも、一太刀も浴びせることなく無残に胴体を両断されて血だまりの水源と化した。
「
一人の魔術師がラーミナの詠唱に成功。標的たるドミニク目掛けて魔術により発生した斬撃が襲い掛かるが、
「あっがああああああああ――」
ドミニクに背後から襟首を掴まれ、別の魔術師は斬撃からドミニクを守る肉盾にされた。豪快に血液と断末魔の悲鳴を撒き散らしながら、魔術師の体は次第に人の形を失っていた。
「おのれ――」
ドミニクは淡々と突き放すようにして、魔術師だった
この機を逃すまいと背後からナイフ使いがドミニクに仕掛けたが、ドミニクは即座に豪快にハルバートを振り抜き、ハルバードの刃はナイフ使いの横顔を直撃。あまりの破壊力に、ナイフ使いの顔は切断されずに消し飛んでしまった。
「大気は――」
ただ一人残された魔術師は果敢にも再度詠唱を試みるも、自身を守る近接戦闘員や魔物を失った状態で、完全詠唱を成し遂げられるはずもない。本人ももはや諦めているのだろう。その表情は恐怖に引き
「きょうじん……」
「さっさとくたばれ」
敵対する者にかける慈悲など存在しない。必死にラーミナの詠唱を続ける教団の魔術師の脳天目掛けて容赦なくハルバートを振り下ろした。
断末魔は詠唱の一部である「
戦闘開始から僅か3分程度で、10名の教団戦闘員と20体ものエリュトン・リュコスは、たった一人の騎士の手によって全滅した。
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