第48話 合流

「どっちが早かった?」

「ほぼ同時だったと思うよ。引き分けでいいんじゃない?」


 霧散むさんしかけている二体の翼竜よくりゅうの亡骸の側で、ニュクスとファルコは背中合わせで石畳いしだたみの上に腰を下ろしていた。

 ファルコは翼竜が攻撃のために降下してきたタイミングを狙う戦術で、ニュクスは高い建物の屋根や壁を使い、積極的に翼竜へと斬りかかる戦術でそれぞれ応戦。ある程度は翼竜の速さや攻撃パターンにも慣れてきたので、危なげなく撃破することが出来た。

 決め手は、ファルコは正面から迫った翼竜の頭部を鋭い突きで一撃して顔面を粉砕。ニュクスの方は弱って高度の落ちた翼竜目掛けて近くの建物の煙突から跳躍ちょうやく、背面へと着地すると、初戦同様に脳目掛けて頭部に刀身を突き刺すことで止めとした。


 今回の戦いではっきりしたが、翼竜というのは非常に執念深い性格らしい。一度自分に傷を負わせた者を決して許さず、仇敵きゅうてきを殺すことに執心しゅうしんする。これは裏を返せば注意を引きやすいということでもある。実際今回の戦闘でも、当初は翼竜も避難中の人々を襲おうとしていたが、ニュクスやファルコが攻撃することで意識は完全に二人の方へと向いた。そこから先は、避難中の人達のことをそこまで気にせず、ひたすら戦っていればいいのだから楽なものだった。余計な心配はせずに全力が出せる上に、その行為事態が避難までの一番の時間稼ぎとなる。二人にとって実にやりやすい状況だったといえるだろう。

 翼竜のこの習性は、街を防衛するためにも大いに利用出来そうだ。危険な役目故に注意を引く役にはかなりの実力が要求されるが、上手くやれば、今後の避難活動や防衛戦を効率的に進めることが出来るはずだ。


「どうやら、コンサートホールへの避難が終わるよりも早く片付けてしまったみたいだね」

「危険を根本から取り除くに越したことはないさ」


 コンサートホールの方ではマクシミリアンら衛兵による避難誘導がまだ続いていた。翼竜が撃破されたのを見て安心したのか、住民達の足取りが少し鈍くなっており、マクシミリアンが足を止めないようにと声高に注意している。新手が現れないとも限らないのだから、避難自体は早めに終わらせてもらいたいところだ。


「あの短時間でさらに二体も。流石ですね」

「よう、お嬢さん。元気そうで何よりだ」


 ニュクスとファルコ以外の人気がない噴水広場へと、ソレイユとリスが到着した。

 二人に加勢して二体の竜と戦う気満々だったのだろう。ソレイユは抜刀済みだった。


「やはり、ファルコもこちらにいらしていたのですね」

「はい。初戦は出遅れて犠牲を出してしまいましたが、ニュクスの協力もあり二回目の襲撃は無事に乗り切ることが出来ました。このまま、最後までお付き合いさせていただきますよ」

「ありがとうファルコ。頼りにしています」

「勿体なきお言葉です」


 立ち上がって襟を正すと、ファルコはソレイユへと一礼した。


「お嬢さん。大通りの方はいいのか?」

「翼竜は撃破しましたし、オッフェンバックきょうの指示により騎士団や傭兵達も動き出しました。ギルドの面する大通りは、傭兵さん達に任せておいても大丈夫でしょう。今優先すべきは、事態を根本的に解決することだと考えています」

「今回の事態を引き起こした、アマルティア教団の人間をつか」

「その通りです。そのことについてニュクスのお知恵を拝借はいしゃくしたい。今回の襲撃は、以前私たちが経験したそれとは異なる点も多いですから」

「ちょうどお嬢さんと合流出来たら話そうと思っていたところだ。ただし、聞きかじりな部分も多いし、想像も多分に含まれることは了承しておいてくれ」

「構いません。あなたなりのお考えをお聞かせください」

「お嬢さんのお願いとあらば」


 どこか嬉しそうに笑い、ニュクスは語り始める。他の三人はニュクスを囲むようにしてその言葉に耳を傾けた。

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