第34話 二人の傭兵
「とりあえずは元気そうだね」
「……
槍使いが笑顔で肩に触れると、傭兵仲間である、センター分けの赤毛と
「弓使い殿。何があったんだ?」
「物音がしたからエントランスに戻ってきたの。そしたら突然、後ろから声をかけられて、振り向きざまに
「その結果が、冷や汗かいてへたり込んでるあのおっさんと」
「てへっ」
弓を手に、射る仕草であざといウインク。
「凶器を構えながら可愛い子ぶっても狂気しか感じないぞ。まあ、攻撃したことに関しては俺も人のことは言えないけども」
「その口振りだと、君は金髪のイケメン君と?」
「ちょっと殺し合ってた。誤解はすぐに解けたけどな」
「さらりと怖い事言うね。殺し合っていた割には、
「敵なら殺す。そうじゃなければ殺さない。僕も二刀流の彼も、切り替えが得意なだけだよ。可愛いお姉さん」
「可愛いお姉さん?」
槍使いはへたり込んでいた傭兵を引き起こすと、可愛いお姉さん発言に若干困惑気味のウーの方へと向き直った。
「自己紹介がまだだったね。僕はファルコ・ウラガ―ノ。旅の傭兵で、今はグロワールの傭兵ギルドを拠点に活動している」
「俺はシモン・ディフェンタール。元は高額な仕事を中心に活動していたんだが、ファルコに出会って以来、どうにもお人好しが移っちまったみたいでな。最近はファルコと二人、稼ぎは二の次に絶賛人助け中だ」
傭兵らしく、世慣れた様子で2人は語る。
名乗られたからには名乗り返すのが礼儀と、今度はウーが口を開く。
「私はウー・スプランディッド。北部のルミエール領を統治するルミエール家に仕える騎士だよ。あまり多くは語れないけど、ある任務のため、ルミエール家のご令嬢であるソレイユ・ルミエール様と共に旅の途中」
「ルミエールというと、フォルス・ルミエール
ルミエールの名にシモンが興奮気味に頷いた。
「二刀流の君も、ルミエール家の臣下なのかい?」
「俺はニュクス。弓使い殿と違って俺は臣下ではないが、故あってルミエール家のお嬢さんに力を貸している」
「それじゃあ、君も傭兵?」
「傭兵じゃない。強いて言うなら旅の絵描きだ」
「最近の絵描きは強いんだね」
「物騒な時代だからな」
「君が言う?」
苦笑いを浮かべつつ、ウーはニュクスの脇腹を小突いた。
ウーの心境としては、主君の命を狙った一見すると無害そうな隣の暗殺者の方がよっぽど物騒な存在だ。
「一度状況を整理しておこうか。僕とシモンは盗賊に
「盗賊の数が少なかったのは、たぶん私たちのせいだね。成り行きで
「なるほど、どうりで盗賊が少ないと思った。アジトにはどうして?」
この問いにはニュクスが答えた。
「盗賊の1人がアジトに女性を
「つまり、僕達の目的は一致しているということだね」
「そのようだな」
お互いに正義感で動いている者同士。目的が同じなら、初対面でもある程度は協力できるだろう。
「ファルコさん。女性達は見つかったの?」
「ホールの下に地下室らしき空間があるようだ。屋敷内は調べ尽くしたし、女性達がいるとしたらそこだと思う」
「思うって、中はまだ確認してないのか?」
「入口を発見した直後に君がやって来て戦闘に発展したんだ。仕方がないだろう」
「……申し訳ない」
お互いに勘違いしていたとはいえ、自分にも責任の一端があるのでニュクスは素直に頭を下げた。
「ファルコさん、私を地下室に案内して。女性である私がいた方が、囚われている女性達も少しは安心すると思うから」
「それがいい。僕もその点を心配していたんだ。シモンは
「悪かったな強面で」
なとと言いながらもシモンは嫌そうな顔はしていない。女性達が少しでも安心できるのならそれに越したことはないと、そう思っているのだろう。
「客人くんは、外で待つソレイユ様に事情を説明してもらってもいい? 残党はファルコさんとシモンさんのおかげで片付いているみたいだし、これ以上の戦闘は起こらないと思うから」
「了解だ」
「僕とウーさんで地下室に潜るから、シモンは地下室の入り口を見張っていてくれ。万が一閉じ込められたりしたら大変だからね」
「任せておけ」
役割分担が決まり、ウーたちは三人はホールの方へ、ニュクスは屋敷の外へと向かった。
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