第35話 強くなりたい
「お初にお目にかかります、ソレイユ様。旅の傭兵、ファルコ・ウラガ―ノと申します」
「ルミエール領主フォルス・ルミエールが
状況が一段落着き、ソレイユは二槍の傭兵――ファルコと対面していた。
あれから5人の女性達が地下室から救出された。幸いなことに命に関わる怪我は無かったが、盗賊達に
現状、
「ニュクスと互角に渡り合ったと聞きました。相当な腕前のようですね」
「生きるために
「その気持ちはとてもよく分かります。私もこの愛刀を振るう時は、武器を手にしているというよりも、腕そのものが延長されて、意のままに動いてくれるような、そんな感覚を得る時がありますから」
「その若さでそういった感覚に行きつくとは、流石はソレイユ様ですね」
「流石、ですか?」
まるで以前から自分のことを知っているかのような口ぶりに、ソレイユは不思議そうに小首を傾げた。少なくともソレイユには、ファルコ・ウラガーノと過去に対面した記憶は無い。
そんなソレイユの疑問に答えるように、ファルコは間を空けずに口を開いた。
「数々の武勇を持つ、
「そういうことでしたか。しかし、お褒めに預かり光栄ですが、私はまだまだ未熟者です。民を、故郷を守るためには今のままでは足りません。もっと強くなりたい、その欲求が尽きることはありません」
「ソレイユ様はきっと、どこまでも強くなれると思います。あなたには才があり、それを引き出さんとする向上心がある。そういう戦士はどこまでも強くなるものです。これは決してお世辞で言っているわけではありません。長らく傭兵として戦場を歩いてきた者として、
「どこまでも強くなれるですか。これ以上ない、とても嬉しいお言葉です。ありがとうファルコ」
「勿体なきお言葉です」
ファルコは敬意を表し
その表情はとても
「ソレイユ様。遠くにクラージュらしき騎士の乗った騎馬の姿が見えました。向こうの状況が落ち着き、合流に来たのかもしれません」
「分かったわ。直ぐに行く」
去り際のソレイユへ、ファルコが傭兵らしく営業を投げかける。
「ここで出会ったのも何かの縁。傭兵の力が必要な際は、何時でも僕にご依頼ください。当面はグロワールを拠点に活動しておりますので」
「ありがとうファルコ」
満更でもなさそうに、ソレイユは笑顔でそう答えた。
強い正義感と、それを実行に移すだけの高い戦闘能力。ファルコ・ウラガ―ノという傭兵に、ソレイユは戦力としてとても強い魅力を感じていた。
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