第4話 そして変化
思い返せば、あの頃から潔子に対する見方が変わったように思う。
それぞれ別の道を歩いていたはずの相手が、途中の交差点でばったり出会って同じ道を歩くことになったかのような。
現にあのあとすぐに春休みに入ってしまったが、2年になると同じクラスになり、瑛美と潔子は出会った。
瑛美はあの時落とした何かを埋めるように、潔子をいじめた。
教師に当てられて黒板前に出ることになれば、わざと足を通路に伸ばして引っ掛け転ばせた。休憩時間に悪口をオブラートに包んで口にすることもあれば、飲み物を頭からかけることもある。他のクラスメートは何も言わない。ヒエラルキーの下位層は、潔子という最下位がいなくなれば明日は我が身の状態になるので何も言わない。
ただし、瑛美はその頂点に立つための努力を怠ってはいけない。髪も爪もメイクも媚も愛嬌も全て、手を抜くことは足元にいる2番目以降からあっさり引きずり落とされてしまうから。
瑛美は自分の持つもの、使えるもの、そこにある環境を知り、判断し、振舞っている。
取り巻きからは、笑顔で明るくメイクやダイエットのコツを教えあい、男子からは明るさと愛嬌で「やあだぁ」と甘ったるい声でつっこみを入れる。教師にはハキハキと答え真面目さを、関わることの少ない下位層には、手洗い後のハンカチを貸してやり優しさを、計算しながら瑛美は笑う。
瑛美が掴めないのはただ一人。潔子。
潔子は何も言わない。どれだけ悪口を言われても、悪く言われたことを直そうともせず、どれだけ物理的に何かをされても泣かず怒らず苦しまず、まるでそれが当たり前だというように受け入れる。
そんな彼女と目があうと、瑛美はひどくざらついた舌で心を
結局GWに入るまで、瑛美は潔子だけを把握できずに終わった。
そしてGWが明けたあと、潔子はヒエラルキーのトップ、つまり瑛美と同レベルの容姿を手に入れていた。
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