桜の花は青春のように過ぎ去る【後編】
教室では朝のホームルームが始まった。自己紹介という公開処刑が始まる。
教室に入った遥河、部屋の空気が重い、静かだ…。
(高校生ってこんなおとなしいものか?)
そこで目に入ったのは手を小さく振る赤理、同じクラスだった。
「では、転校生君、自己紹介をしたまえ。」
男性教師の上から目線に腹が立つ。
(この教師、確か
遥河は神崎にもらった荷物の中に教師のプロファイルを事前に見ていたので、名前や性格など知っていた。それは宣伝をしやすくする為のデータであった。
「えーと、小芽川遥河だ、よろしく。」全然よろしくしてない態度の遥河。
「え、なに、ちょっと怖いんだけどあの人」ひそひそ話が地味に聞こえる。
「小芽川か‥、あまり関心のできない態度だ…。まぁいい・・そこの空いてる席に座りたまえ。」空いてる席は廊下側の後ろから3番目、赤理の前の席だった。席に向かう途中、みんなの冷たい目線が気になる。しかし、赤理だけは満面の笑みだった。
「やっほーはるかー、また会えて僕嬉しいよ!」
(こいつもう名前呼びかよッ!)
クラスの男子も女子もざわつく
「え、なに、転校生赤理きゅんとなんで仲良しなの!?」「うっそー、ありえなーい。」「あの男子嫌いな赤理が!?」「・・羨ましい。」最後の奴は誰だ。
ちなみに赤理が男子嫌いと噂になっているのは、恥ずかしくて声を掛けられないのが原因であった。
「貴様ら静かにしろぉぉぉッ‼」
ざわついていた教室がピタッと静かになった。
「そんなに菓子折りを渡されたいのかね?」
その瞬間、みんなの顔が青ざめる。しかしそこに空気の読めない男が一匹。
「先生、菓子折りってなんすか?美味しそうですね。」
唖然とした顔で遥河の顔をクラス中が見る。
「ふふ‥面白いな小芽川、ほんとなら今すぐにでも渡したいが、転校初日に渡したらわたしの評価が悪くなる‥、しかし、長谷川…お前今朝土田財閥の御曹子に茶々を入れたようだな‥」
クラス中が赤理を見る。
「だからこれを渡す、喜びたまえ。」田代は不気味な笑顔で菓子折りを赤理に渡した。
赤理は絶望した顔で固まった。
「今日一日それを食べて、楽しんでくれたまえ」
田代は振り向き教卓に戻ろうとした瞬間
(バリバリ・・ボリボリッ)
「なんだ、ただのせんべいか、みんな真っ青だから毒でも入ってるのかと思ったぜ。」
空気の読めない遥河は菓子折りのせんべいを食いだしたッ!
「‥‥き、貴様ぁぁぁぁぁッ‼」
田代は凄い形相で遥河に襲い掛かる。
「待ってください!はるかは転校初日です!この学校の事まだわからない事があるので、失礼をお許しください!」
赤理が遥河の事をかばったのだ。足は震えていて、自分の事だけで精一杯なはずなのに。
「…ふん。よかろう、但し長谷川、放課後ちゃんと来いよ。あと、小芽川、おぼえてろ。」
こうして朝のホームルームは終わった。
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