桜の花は青春のように過ぎ去る【前編】

 施設から出た遥河は住所の載った手紙を渡され、そこに向かっている。その姿は脱毛と散髪、それに禁煙により見事高校生の姿に見えるが、禁煙のおかげで毎日よく眠れず目にクマができて、目付きは悪くなった。

「えーと…ここか…」

 そこは立派なマンションであった。

「すげーな‥こんな所にこれから住むのか。入るか‥」

 エレベーターを使い、六階に着く。

「6の3ね…あったが、鍵がねーけど…」ガチャ

「開いてる‥」

 その部屋は4LDKでとても広い、ふと机を見ると、荷物と鍵とメモが残されていた。


(やっほー♡はるちゃん♡無事に研修終わったみたいだねぇ♡

 ここに学校の荷物とこれからの資金があるから、大事に使ってね♡

 あと、はるちゃんが入学する高校は私立帝都学院高校!

 お金持ちが集まる高校よ♡いっぱい宣伝して、私の懐をうるわせてね♡

                    あなたの神崎子音♡    )

 遥河はすぐさまメモ紙を丸るめて捨てた。

「まぁ‥明日から学校だ。今日は早めに寝て、明日に備えよう。」

 遥河はベッドに横になる。

「しかし施設から渡されたのはこの時計だけか‥…外れねーし、俺たちの管理の為か?…まぁ鬱陶うっとうしいが卒業すれば外れるし、我慢だな。」



 次の日 私立聖帝学院高校前にて。


「(でけぇ…敷地が半端ないな‥教室に向かうか‥)」


 遥河は教室に向かおうとした時、校舎裏の方で声が聞こえる。気になって見に行くと、そこでいじめが行われていた。

 物陰に隠れて見た所、男子3人が女子1人を囲んでいる。どうやら口論しているようだ。

「(おいおい・・・女相手に男3人か?情けねぇ…)」


 口論は激化してこっちまで話が聞こえてくる。


 「おいッ!てめぇーッこの状況わかって言ってんのか!?」不良Aが真ん中にいる事でこいつがリーダーだと遥河は確信する。

 「土田君、誤解だってばッ!」女は頬を赤くして不良に立ち向かう。しかし、この状態ではどんな状況なのか把握できない。だが、黙って見過ごすわけには行かない。

 「(…しょうがね、)」遥河は面倒事は嫌いだが、いじめには不快感があった。

 遥河は不良達に向かう。


「あのー?2-Ⅾの教室ってどこにありますかー?」これぞ無難かつ平和的解決方法ッ!要するに突然声かけられて、白けちゃった作戦である。


「あ?お前俺たちと一緒の2年か?‥にしちゃあ見かけない顔だな、3年かと思ったぜ。」不良Bは遥河の雰囲気や目付きで高学年かと思っていた。


「…ああ、同じ学年か、俺は今日転校してきたばっかりで、迷ってたんだよねぇ…ちなみにこれから職員室にも寄るけど、この状況の事、教師に説明したほうがいいかな?」遥河は少し脅迫を込めて言った。


「…ッ⁉  ち、白けちまったぜ。」作戦成功である。

 遥河は女子の方に向かい手を貸した。「あ、ありがとう・・・」

 不良達はそのまま去って行った。「あの転校生、おぼてろよ。」


 助けた女子は気恥ずかしそうにしていた。

 

(なにか話すとするか…)「俺は今日転校した、小芽川遥河だ」

「…僕は‥長谷川赤理はせがわ あかり!よろしくッ!!」赤理はニコッと話す。


 しかし、遥河は思った。


(‥‥僕ッ?…ん?あるぇ?よく見ると、なんでこいつズボン履いてんのッ?)「えっと、女の子‥だよね?」


「え?ううん、、僕、男の子だよ?」


「・・・・・ッ!?」


 そう、遥河は勘違いしていたのだ、声と見た目は女の子そのもの、だがこの子は女の子でもなく、男の子でもなく、おとこだったッ!


 「お前‥なんで絡まれてたんだ?」

 赤理はモジモジしながら答える。

 「えっとね‥笑わないでね‥、実は僕なよなよしてて、自分に自信がなくて、男らしさが無いって去年思ったんだ、お母さんも娘が欲しかったらしく、僕を女の子みたいに私服にスカートとか履かされたりして‥、なんかおかしいなって思ったんだけど、気にしないまま生きてきたんだ。そしたらそのせいで周りも女の子の友達だけだし、男の子の友達はこんな感じだからいないんだよね…。」 


 赤理は悲しい顔になった。


「…まぁ、誰にでもコンプレックスってのはあるよな。俺も遥河だから、昔は‥‥いや、前の学校ではよく女の子ってバカにされたよ。」そんな事を言って遥河は赤理を励ました。赤理は元気になった。

「そうなんだよ!それでね!2年生から髪を染めて自分を変えようとしたんだ!そこで丁度僕が憧れる男らしさがさっきの土田君をイメージしたものだったんだ、だから内面も見習おうと後ろからコッソリつけてたら、バレちゃった!えへへ。」

 

 (お前が原因かよッ!ってか話なげーッ)遥河は心の中でツッコム。

 「でも、もういいやッ!」

 「…諦めるのか?」

 赤理は照れくさそうにこっちを見て話す。

 「だってい今、友達ができたもん!」どうやら赤理に気に入られたらしい。

 

 しかし不覚にも可愛いと思ってしまった遥河であった。

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