L ボクと石像さん達
――気をつけてねの意味を履き違えていたのかな。
あの時のボクは、気付けなかった。
―――≫ドラクロア城第一城門
さっきまでは満点の夜空だったんだけど、雲が少しでてきました。
丘を抜け。
森を抜け。
その先に見えたのは、ドラクロア城。
ドラキュラ・吸血鬼・伯爵・処女の生血・不老不死、あらゆる妄想が頭の中に浮かびます。
グリーク国の女性の中で『妹にしたい娘ナンバーワン』と名高いボクですが、出会ったら狙われてしまうのでしょうか。
そんなロマンスに恋い焦がれる一生も送ってみたいものです。
積極的にお近づきになりたいので、護身用のニンニクと十字架は持っていませんよ。
準備万端です♪
ドラクロア城を取り囲むように流れる川。
かなり広めの川で、流れが速いですね。
落ちてしまったら海まで流されてしまいそうです。
ガイドブック『ヂャラソ(ドラクロア地方版)』によれば、第一城門から城までは『龍の首』と呼ばれる1kmもの長い橋を通る必要があるようです。
橋を抜けると第二城門から城郭へと続くのですね。
城の中は『王殊継承の儀』の最中のため警備が厳重になっているのでしょう。
――さてと。 どうやって中に入りましょうか。
奥の手としての色仕掛けも考えておかなければ――。
上はチュニックに、下は動きやすさを重視した裾絞りパンツ。
チュニックの胸元を開けて覗くと、そこにあるのはぺったんこの胸――もとい、Aカップの美乳が。
――はっ、しまった!!
この組み合わせは、まったくもって色気がないのでは。
「チラ見せは基本」セクシーバディの持ち主のディーテさんの声を思い出します。
しかし、チラりする所すらない今の服装。
せめて、ロトス君にあげたポンチョがあったならば色んなバリエーションが試せるのだが。
特殊(妹好き)属性を持つ守衛さんであることを願うべきか。
もしものことがあるようならば全部脱ぐことも頭に入れて――
などとぶつくさと考えていたのですが、どうやらその必要はないようです。
程よく近付いたことで気付いたのですが、城門は開いていました。
ドラクロア一族は陰湿謙虚でひっそり暮らしているという先入観があったのですが、歓迎ムード満載なのでしょうか。
高さ5m厚さ1mはあるだろう石造りの門をくぐるけど、なぜか守衛の気配は感じられません。
川が激しく流れる音以外は、辺りを静寂が包んでいます。
そこにあるのは驚きふためいた表情をした、守衛の格好をした4体の石造。
――なんて精巧な造りなのでしょう。
試しに近くにあった1体を指先でチョンっと軽く触ってみたところ、非常に脆かったらしくボロボロと崩れ落ちてしまいました。
!!
――ま、まさか底抜けのトラップ。
お、おのれ、ドラクロア。
――ではなかったようです。
残り三体の石像を良く見ると所々ひびが入っており、今にも崩れ落ちそうです。
あまりにも精巧に造られているために、お値打ち物かもしれません。
残りの石像はそっとしておきます。
他に気になることもなかったので、先に進もう。
門をくぐった先は、『龍の首』。
石造りの橋の幅は5mといった所で、両側の川から吹き付ける風が冷たく吹き付ける。
――クション!
ポンチョさんが留守していますからね、思わずくしゃみをしちゃったじゃないですか、てへぺろ。
悪戯に舌を出してみます♪
ゴゴゴ……ゴゴゴ……
後ろで石造のような何かが崩れ落ちる音。これも何かの罠なのでしょうか。
嫌な感じはしましたが、後ろは振り返りません。
進みます。
龍の首に見立てた橋は、一直線な道ではなく緩やかに曲りくねっていた。
ふと気付いたのですが、道中に絶望した表情の石造が数えきれないくらいありました。
そのまま残っているものもあれば、砕かれた石造もたくさん。その形は、老若男女様々。
――こんなおどろおどろしい石像を飾るとは、ドラキュラさんは悪趣味なのですかね。
石像に謎が隠されているか否かというどうどう巡りは埒があかないので、迷った時は前に進むだけです。
進めばわかることもあると、アゴが有名な人が言ってました。
――ドレミーレド、ドレミレドレー♪
ハミング快調。
第二城門が見えてきました。
その第二城門ですが、高さ厚さともに第一城門と同じくらいですね。
違いを言えば――
何かで大きな衝撃でも受けたように破壊されている所です。
―――≫ドラクロア城 第二城門
特段殺気も感じられないのですが、慎重に門に近づいきます。
剣撃や弾痕といった激しく争った形跡があるが、人の気配はない。
あるのは所々に散らばっている人型の石造。
この石像さん達、元は人間だったりして。
女の勘は良く当たるのです。
――正解ですか!?
特に誰も答えてくれなかったので、第二城門をくぐり城郭の中に入る。
城壁の高さは城門と同じ5m。
城郭の中は家が連なり迷路のような壁を形成していてる。
土地勘に慣れない侵入者から城を防ぐための仕組みなんだ。
川に囲まれた環境といい、守りに関してはかなり優秀ですね。
良くできています。
第二城門から城へはかなり上った先にあるようで、辿り着くまでに時間がかかるのでしょう。
王殊の継承式は離れにある大聖堂で行われるとディオさんは言っていた。
おそらく大聖堂とは、城とは逆の崖の上に立つ建物のようです。
道沿いに何か大きな生物が這って進んだ形跡がある。
何かが起こったのですね。
崖側に立つ大聖堂へと足早で進んだ。
アポロの冒険 クロノス @kronos20180404
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。アポロの冒険の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます