頭中将のすずろなる空ごとを聞きて
宮仕えしてから初めての正月は本当に慌ただしかった。様々な神事や正月の行事をこなすだけでも目が回るかと思われたのに、中宮へ新年のご挨拶に伺おうと、ひっきりなしに人が訪れる。
加えて中宮様の父君で、関白の道隆様が体調を崩された。それで、病を治す加持祈祷のための準備やら何やらで私たちの周りはてんやわんやだった。
僧たちの祈祷の甲斐あってか、道隆様の体調も戻られたようだ。今日は奥様である北の方と、中宮様の妹君である
淑景舎様は今年の正月十日に東宮妃としてお立ちになった。それから中宮様とはよくお手紙を交わしていらっしゃったようだが、入内されてから顔を合わせるのは初めてだろう。
お部屋に飾りつけなどを施していると、中宮様の身支度を終えた清少納言がやってきた。
その顔がやたらとにやけていたので、つい気になって声をかけてしまう。
「何かいいことでもあったんですか? 顔がにやけていますよ」
「だって、淑景舎様を拝見できるんですもの。楽しみで仕方ないわ。中宮様の妹君だなんて、どんなにお美しい方なのかしら」
そう言われて、ああ、と納得した。
「前から思っていたんですけど、清少納言さんって、顔が良い人お好きですよね」
「好きよ。だって、目に良いじゃない」
あっけらかんと言い放つ清少納言に呆れを通り越して感心してしまう。
「どんなに素晴らしい歌でも顔の悪い人間が詠むと良さが半減してしまうでしょう。逆に、ちょっとくらい下手でも詠みかけてきたのが美丈夫だったらそれだけで素晴らしい歌にならない?」
なんという暴論だろうか。いっそ清々しささえ覚える。
そうこう話をしている間に、いよいよ淑景舎様や、道隆様、北の方がいらっしゃった。
私たちは中宮様の後ろに屏風を挟んで控えていたのだが、清少納言はその屏風にぴったりとくっついて向こう側の様子を覗いていた。
「ちょっと、いくらなんでも無作法が過ぎますよ」
「中宮様が良いっておっしゃったのよ。静かにしているから大丈夫」
何が大丈夫なものか。こちらはいつ見とがめられるかと肝を冷やしているというのに。
一向に下がる気配がないので、もはや何を言っても無駄だろうと知らん顔をすることにした。
しばらくすると朝食が運ばれてきた。お食事の準備と共に屏風も片づけられてしまって、清少納言はあたふたしていた。
しかし、それでもあきらめ悪く御簾と几帳の陰に隠れて覗こうとする。本人は隠れられているつもりなのだろうが、着物の裾は御簾の外に飛び出してしまっていた。
「おや、あの着物は誰かね。こちらを覗いておられるようだが」
案の定、道隆様に見つかってしまった。思わずやれやれ、とため息をついてしまったが、それがやけに大きく聞こえた。どうやら、同じ気持ちの女房が多かったようだ。
「清少納言が様子を見たがっていたのです。私の入れ知恵ですわ」
中宮様がお返事すると、道隆様は大げさに顔をしかめて見せた。
「それはいけない。彼女とは懇意にしているからなあ。みっともない娘たちを持っていると思われては困るのだよ」
「そのようなことは決して! なんと素晴らしい光景だろうと思っていたところでございます。中宮様のお美しさは今更どういう言葉で表すこともできないほどですし、淑景舎様も本当にお可愛らしくておられます」
清少納言が慌てて申し上げると、道隆様はたいそうおかしそうにお笑いになる。
「それはよかった。あなた達は清少納言のお墨付きというわけだな」
そうやって中宮様と淑景舎様にお声かけすると、清少納言はしてやられた、という顔をして縮こまる。
その様子がまた面白くて、みんなで笑った。無作法に対する灸は十分に据えられたことだろう。
お食事中も道隆様はたくさんのご冗談をおっしゃって、私たち女房を笑わせようとなさる。
「楽しそうですね。こちらまで笑い声が聞こえてきましたよ」
そう言っていらっしゃったのは、伊周様と、弟君の隆家様であった。伊周様はご長男の松君様をお連れになっている。松君様はまだ四つか五つほどで、たいそうお可愛らしいご様子であった。道隆様はさっそく松君様を膝にお抱えになる。
「また大きくなったなあ。小さい頃の伊周にそっくりではないか。伊周と中宮様は、兄妹揃って母親似だからな、そのまま中宮様の皇子として世に出しても誰もわからないだろう」
そうおっしゃりながら、松君を中宮様のいらっしゃる障子の近くへ連れて行かれる。
地位も素晴らしい娘と息子も手にした道隆様の一番気にかかるのは、やはり中宮様のお産のことであるようだ。
中宮様は今までご懐妊がない。将来のことを考えれば後継ぎがお生まれにならないというのは、ご心配になるというのも当然というものだろう。
「本当に、そっくりだわ。今日から母親を名乗ってしまおうかしら」
中宮様がそうおっしゃると、松君様は何のことかわからないご様子で、父上の方をご覧になる。それがまた可愛らしくていらっしゃるので、皆で笑う。
冗談をおっしゃって、明るく振舞われるけれども、子供のことを一番気に病んでいらっしゃるのは中宮様であろう。一番お声かけがある立場にいらっしゃるというのに、これほど何の兆しもないというのは、私から見てもどれほどつらいことなのかと思われる。
この日の夜も中宮様には帝から清涼殿の方へ参られるようにとのお声かけがあった。
道隆様は娘が帝にご寵愛を受けているということにお喜びの様子であったが、やはりご懐妊のないことが気になるのか、中宮様を「早く、早く」と急かされる。
この日はそのまま解散となった。道隆様は、中宮様が参上される途中もお供なさる。
道中、またもや私たちを笑わせようと冗談を言われるので、だいぶ賑やかな参上となった。笑い声とともに吐き出される息がとても白く、春先とはいえまだ寒さから解放されることはなさそうだと感じた。
それから、しばらく経ったある日のことである。私はまた公任様に箏の稽古をつけていただいていた。寒い日の箏は嫌いだ。指がかじかんでうまく動かないし、弦をはじく痛みがより際立ってしまう。
「もう限界です。火鉢にあたらせてください……」
「これしきの事で音を上げるか。まあいい。指がさっきから全然動いていないからな。その凍りついた手を溶かしてくるといい」
しばらく稽古を受けていて気付いたのだが、公任様は、口は偉そうなことばかりおっしゃっているものの(実際偉い立場だけれども)、私の限界は見極めてくださっている。本当に無茶なことはおっしゃらないのだった。
政を行う方というのは、このような観察眼というのも重要になっているのだろう。
「あ、そうだ。こんな話を聞いたのだが」
さらに、この人の噂好きは本当に重症だ。隙があれば噂話を持ちこんで来られる。
噂なんて嘘か本当かもわからない話ばかりなので、私はあまり取り合わないようにしているのだが、それを聞きつけたほかの女房たちが輪に加わって、しばらくは練習どころではなくなる。
この人は私に稽古をつけに来ているのか、集めた噂を披露しに来ているのかわからなくなることもしばしばだった。
それに、今日は何の話をするつもりか、私にも予想できた。
「斉信と清少納言が絶交したそうじゃないか」
「正確には、斉信様が一方的に、ですけどね」
「なんだ、やはり知っていたか」
「当たり前でしょう。毎日顔を合わせる相手なんですから」
今、私の周りではこの話で持ちきりであった。
なんでも、斉信様が清少納言についての何かしらの噂をお聞きして、お怒りになっているのだとか。
「なぜ私はあんな女のことを一人前だと認めていたのかわからない」とまで宣っていたという話だから、この件は長くなるだろうと思われる。
斉信様が清少納言を訪ねてくることなどもってのほかで、どうしても私たちのお部屋の前を通らなければならないときにだって、着物の袖で顔を隠してしまうほどの徹底ぶりである。
清少納言に聞いても、ここまでお怒りになるほどのことをした覚えはないとして、あまり気にしないように決めたようであった。
しかし、私はあれほど仲の良かった二人が視線も交わさないようになってしまったというのが、物足りなく、さびしく思われた。
「それにしても、君は清少納言に肩入れするのだな」
公任様がにやにやと笑っているので、私は不機嫌になった。
「だって、今回のことは清少納言に原因があると思えませんもの。斉信様がどのようなお話を聞かれたのかわかりませんが、確かめもしないで決めつけるのはいかがなものかと思います」
「言うじゃないか」
「公任様は斉信様のご友人でしょう。何か聞かれてはいないのですか」
「お、私に探りを入れようというのだな。しかし、そう簡単に教えてはやれないぞ。私だって友人に肩入れしたい気持ちがある」
公任様は明らかに面白がっている。この話がどちらに転んでも楽しそうだ。それならばおとなしくこちらに転んできてくださればよいのに。
「いいか、情報にはそれに見合った対価が必要だ。君は私に何ができる?」
そう聞かれて、考え込んでしまう。私は誰かに何かしてやれるような人間ではない。人より少しできることといえば、この箏を弾くことくらいである。まして、相手が公任様であれば、私などに何ができるというだろう。
せっかく温まった指先が、また冷えてきた。握りこんでも一向に温まる気配はない。
「まあいい。“前借り”ということにしておいてやろう」
「え?」
思わず顔を上げると、即座に「その代わり」と付け加えられる。
「課題だ。君はこの宮中で何ができる人間か、しっかり考えておくといい」
話が大きくなっている気がするのは私の気のせいではあるまい。
「返事は?」
「は、はい」
「よろしい」
公任様は満足そうにうなずくと、「さて」と話し始めた。
「私が斉信から聞いた話だと、縁を切りたがっていたのは清少納言だそうだ」
「そんな! でたらめです」
「大きい声を出すな。最後まで聞きなさい」
子供のようにたしなめられて、口を閉じる。
「斉信は清少納言の方が『頭中将にしつこく言い寄られて困っている』という話をいたるところでしているという話を聞いたそうでな。ずいぶんと立腹していた」
「でも、おかしいです。お二人はそういったご関係じゃなかったはずでは?」
「だから斉信も怒っているのさ。二人で知恵遊びとしてやっていたはずのやり取りを本気にされて、あまつさえ迷惑だなんて言われたら失望するだろう」
確かにそうだ。教養のある女房だと思っていたのに、裏切られた気持ちになるだろう。
そうだとしたら、あまりにひどい誤解だ。そんな取るに足らないようなことで二人が絶交してしまうなんて、あってはならないことだ。
「早く誤解を解いて差し上げないと」
「何故、君がそこまでする必要がある?」
「だって、あんなに仲が良かったのに、こんな些細なことで絶交だなんて」
「人の関係なんて、些細なことで壊れるようなものだよ」
突然言い放たれた声があまりに冷たくて、私は凍りついてしまった。
公任様の言葉に、宮仕えを始める前のことが思い出される。たった一晩で音沙汰がなくなった恋人。
「でも、」やっとのことで声が出た。
「些細なことで結ばれるのも人の縁というものですわ」
姫百合の君は、たまたま見かけただけの私に手紙をくださった。幼い子供が泣き出したのが放っておけなかっただけかもしれない。きっと、あの方は私でなくても同じことをされたと思う。
それでも、私はあの時の出来事がずっと忘れられない思い出になっている。
向こうは私のことなど覚えていなくても、私があの包み紙を大切にしている限り、縁は続いているのだ。たとえどんなに細い糸で紡がれた縁であっても。
私が自信満々に言い切ったのが意外だったのか、公任様は驚かれた様子だった。
しかし、すぐにくつくつと笑い出す。
「なるほど、確かにそうだな。しかしまあ、よくもそんなに言い切ったものだ」
あまりにおかしそうなのが気に入らなかったので、私は手紙入れを引っ張り出して例の包み紙をお見せした。
「……これは?」
「私が十になる頃にとある方からいただいたものです。転んで泣いていたところに、従者から唐菓子を包んで渡されました。どこのどなたかも存じませんが、私がこの手紙を持ち続けている限りあの方との縁は途切れません」
「なるほど、君にもそういった根拠があったのだな」
そう言って、しげしげと文を眺めていた。
よく考えたら、これを誰かに見せたのは初めてだ。
幼いころの思い出に縋っているのだとあきれられただろうか、と少し心配になった。
公任様は、ただ黙って包みを見つめている。
「あの、公任様……?」
「今日はこの辺で失礼しよう」
「えっ」
呆気にとられる私に、公任様は文を差し出した。
「いや、なかなか良いものを見せてくれた。礼を言うよ」
私が包みを受け取ったのを見ると、そのまま立ち上がって行ってしまわれる。
「ああ、そうだ」
あまりに急なことだったので、何も言えずにお見送りしていると、途中で思い出したように振り返られた。
「この手の誤解は自分で解決した方がいい方向に向かうことが多い。余計な口出しはしない方がいいぞ。特に君は無駄に引っ掻き回して終わりそうだ」
いつも何かしら一言多いのだこの方は。しかし、どうやらあきれられたわけでもなさそうなのでほっとする。
手にはーっと息を吐く。寒さのせいか桃色に染まった指先は、先ほどよりは温かさを取り戻しているようだった。
翌日、私は中宮様のお部屋に一人で参上していた。普段は清少納言と連れ立って参上することが多いのだが、この日は清少納言が朝まで中宮様のお部屋にいて、入れ違いで退出したのだった。
中宮様は奥でお休みになられている。女房たちはやることもなく、ただお喋りをしたり、碁を打ったりしていた。
「あなたは余計にこじらせそうだから、もし斉信様がいらっしゃっても前に出ないこと」
先輩女房たちからこう言い含められていた。皆、私が清少納言贔屓だからということで警戒しているのだろう。昨日も似たようなことを言われたばかりなので、私はおとなしく後ろに下がっていた。
清少納言が退出してすぐ、斉信様がいらっしゃった。
斉信様はいかにも通りがかったついでだというように、女房たちにお声掛けする。
「今日は、清少納言殿はいらっしゃらないのか。謝罪の機会をお与えしようと思っていたのに、惜しいことをなさったものだな」
斉信様は、わざとらしく丁寧な物言いで嫌味をおっしゃった。
彼の言葉に、周りの女房は苦笑いである。
私は斉信様がこのような意地の悪い物言いをなさることに衝撃を受けていた。
何故この二人がここまで仲違いしているのだろう。
直接話し合えばすぐにでも解決してしまいそうなものなのに、何故そうしないのだろう。
「斉信様は目と耳が百もあるとお聞きしました。清少納言がいないことくらいご存知ではないのですか」
言ってしまった。周りの女房が私を咎めるように睨みつける。
声が震えていたから、いっそ聞き逃してはくれないだろうかと仏に頼んでみた。
「……どういう意味かな?」
ばっちりとお耳に入ってしまったようだ。先輩方も諦めたようで、私を斉信様の前に突き出すと、知らん顔で後ろに下がってしまった。
私は突然前に出ることになったので、どうしていいものかわからない。思わず後ろを振り返ると、藤大納言だけが私をじっと見据えていた。
「君は、例の箏の……」
「菅式部でございます。ご友人の公任様にはいつもお世話に……」
「まあ、今は問題じゃないね」
挨拶も途中で遮られてしまった。
「君はどうして私に目と耳が百もあると思ったのかな? まさか、私のことを鬼か何かだと思っているのかい?」
「いえ、そのようなことは……」
「それじゃあ、どうして?」
美丈夫の笑顔は時にものすごく恐ろしい。私はこの時初めて知った。
清少納言にも教えてあげたいくらいだ。この斉信様のお顔を見て、まだ美丈夫が至高と言えるだろうか。
「……自分で見聞きしていないことを信じていらっしゃるご様子でしたから」
私は無我夢中であった。一介の年若い女房が中将殿に説教まがいの口をきいているのである。それだけで斉信様がお怒りになって帰ってしまっても不思議ではない。
それなのに、私の話にまで耳を傾けようとする斉信様はたいそう懐が深いのか、私が失言でもすればよいと思っていらっしゃるのか。
しかし、私は女房で、中宮様の御前である。何としても失言するわけにはいかないのだ。
頭の中にはぐるぐるとさまざまな事柄が飛び交っている。私は必死に飛び交う言葉を捕まえた。
「斉信様はお顔が広いから、色々な所から話をお聞きになることもあるのでしょう。でも、たくさんの目や耳も、使い方を間違えれば何も見えないし、聞こえないことと変わりませんわ」
「私の方に非があるということかな?」
私はもう顔が上げられない。斉信様のお顔を見てしまえば、何も言えなくなってしまいそうだ。
けれども、俯いて自信のない女房だと思われるのは避けたかった。何を言っても軽んじられてしまう。
ええい、ままよ、と私は一気にまくしたてる。
「いえ、そうは申し上げていません。清少納言だって同じことです。私のような若輩者が差し出がましい真似をと思われるかもしれませんが、お二人とも、結局自分の目が一番よく見えるということをお忘れかと思いまして」
顔を上げて、できるだけ自信たっぷりに聞こえるように繕った。幸い、私の周りは自信家ばかりだ。手本はいくらでもいる。
周りの女房が心配そうにこちらをうかがっているのを感じた。どうせなら助けてほしいところだが、私もいつまでも周りに隠れてばかりではいられないということだ。
御簾の向こうの鋭さが消えた。かすかに押し殺したような笑い声が聞こえる。
「斉信様……? どうなされました?」
「いや、失礼。気を悪くしないでくれ。ただ、よく似てきたなと思っただけだよ」
「どなたにでしょうか?」
「さあ、どちらだろうね」
先ほどとは打って変わって楽しそうなご様子なので、私も他の女房たちも安心する。
「君の言うことにも一理ある。でもね、自分の目で見たことがすべて正しいとは思わない方がいい」
そう言って、斉信様は私の方に手を伸ばす。ちょうど私の目を覆い隠すように。
御簾越しに、着物の袖口から、香の匂いがした。落ち着いた、斉信様らしい香りだ。
私は、この匂いを知っている。どこで知ったか、記憶を辿ってみる。
「こうやって、誰かに目隠しをされることも忘れてはいけないよ」
記憶を捕まえる前に手が離された。御簾の向こうには微笑む斉信様のお顔があった。
「ご忠告、痛み入ります」
「こちらこそ。君が言うように自分の目で確かめてみるのも悪くはないかもしれないな。全く無視して過ごすというのも張り合いがなくてつまらなかったからね。近々彼女に何か手紙でも寄越すことにするよ」
そのままご退出なさった。他の女房たちがすぐさま近づいてくる。
「どうなることかと冷や冷やしたわ」
「本当に。あなたはすぐ思ったことを口にするのだから」
「すみません。でも、斉信様の度量が大きくて助かりましたわ」
そうおどけて見せると、皆が「仕方のない人だこと」と笑った。
不意に視界が真っ暗になった。甘い香りが鼻をくすぐる。
「あなたは本当に清少納言が大好きなのね」
藤大納言だ。私が振り返ろうとするとすぐに目隠しを外してくれる。
「別に、普通です」
私が先の言葉を否定すると、藤大納言は笑った。
「斉信様のおっしゃることはもっともだわ。あなたの素直さは美点だけれど、危うくもあるのよ」
「すみません」
「怒っているわけじゃないのよ。ただ、心配しているだけ」
藤大納言が私の手を取る。相変わらず柔らかい手だ。
「私は、箏の腕とは別に、あなたのことを可愛いと思っているの」
そう微笑まれて、私は思わず俯いてしまう。面と向かって言われるとどう返していいのかわからない。清少納言だったら、堂々と礼を言えるのだろう。
私の様子を見て、藤大納言はただ微笑んで、手を握る力を強めただけだった。
冷え切った私の手にじわりと人肌の温かさが染みわたる。
「あら、こんなに冷えて。早く温まった方がいいわ」
私は藤大納言に連れられるまま、火鉢の元に行った。手をかざすと、凍っていた血が動き出したようだ。
庭の梅はつぼみを付けていた。ここで見る二度目の梅である。
まだ咲くには早いが、今年も美しく咲き誇れと願うばかりである。
二月も終わりにさしかかった頃の、ある夜のことであった。
その日は雨がひどく降っていた。この間ようやく花をつけた梅が心配になる。
私たちは帝と中宮様がお休みになるのをお見送りしてから、物語を読んだり、碁を打ったりして雨夜を過ごしていた。
私が碁で三度目の勝利を収めたくらいの時、清少納言が参上してきた。
「あら、ちょうどいいところにいらっしゃったわね。今、
扁継ぎとは、漢字をばらして組み立てる遊びだ。文字を書き散らしていた女房たちの一人が清少納言に声をかけるけれど、仲間に入ることはせず、そのまま囲炉裏の近くに座った。
私は悔しがる相手の再挑戦を断って、彼女の元に行った。
「今日はずいぶんと遅い参上ですね。中宮様はもうお休みになってしまわれましたよ」
「そうね、これじゃあ来た甲斐がないわねえ」
雨の音がうるさいので、少しでも声がよく聞こえるように彼女のすぐ隣に座る。ふわりと彼女の着物が香った。甘ったるくない、品のいい香である。雨のにおいであたりはむっとしていたのに、彼女の周りの空気はいくらか鮮やかな色がついているようだった。
「そういえば、斉信様からは何かありましたか?」
私がそう聞くと、清少納言はあからさまに不愉快そうな顔をした。この様子ではまだ誤解は解けていないようだ。
「ないわよ」
「あら、おかしいですわ。この間何か書いて寄越そうと思うなんておっしゃっていたのに」
「まさか。気まぐれにいい加減なことをおっしゃったんでしょうよ」
あの時の斉信様のようすからいい加減なことをおっしゃったようには見えなかったが、それを今の清少納言に言ったところで信じてはくれまい。おおかた斉信様の方も、いまさら何を書き送るべきか考えあぐねているのだろう。
「二人とも何の話をしているの」
そう言って、扁継ぎに飽きてしまった女房たちが囲炉裏のもとに集まってくる。そのまま話を続けるのも気が引けて、斉信様の話はそれきりやめてしまった。
女房たちが集まれば、自然、噂話に花が咲く。誰それの歌がどうだとか、素敵な着物を着ていただとか、そういった話ばかりしていた。
雨はいよいよひどくなって、今夜中には止みそうにもない。
「清少納言殿はいらっしゃいますか」
外からよく通る声が聞こえた。こんな時間に誰かしらと思って様子をみていると、もう一度大きな声が聞こえた。
「斉信様の使いで参りました。清少納言殿はいらっしゃいますか」
清少納言がさっそく取次ぎの者を行かせると、「お取次ぎでなく申し上げなくてはならないことがございます」と言う。聞けば、彼は
「ほら、言ったとおりでしょう。さあ、行ってさしあげてください」
私は得意になって、清少納言を急かした。
清少納言は「いまさらなんの使いかしら」と言いながら出て行った。そして、手紙を受け取って帰ってきた。
「斉信様からですか?」
「ええ。でも、まだ参上したばかりだし、もう少ししてからお返事をさしあげるつもりよ」
今や雨は滝のようである。多少小降りになってから使いをやるつもりなのだろう。
ところが、主殿司はそれから少しもしないうちに再びやって来た。すぐに返事ができないのなら、手紙を返してもらうということであった。
「いやに急かしますね」
一度送った手紙をわざわざ取り返すなんて、おかしな話もあったものだ。そこまでするとはいったい何が書いてあるのだろうと気になったが、直接聞いたりはしない。
「本当、どういうおつもりなのかしらね」
そう言いながら、清少納言は文を開けた。そして中身を読むと、その顔にいくらか真剣な表情が浮かんだ。
「少し困ったことになったわ」と言って、彼女は私にも手紙を見せてきた。
青い薄様に、たいそう立派な字が躍っている。彼の字は何度か見せてもらったことがある。間違いなく斉信様の字だ。しかし、書かれているのは私たちが気にしていたような話ではなかった。
『蘭省花時錦帳下
これの下の句はなんでしょうか。きっとお返事ください』
驚きあきれて声も出なかった。女に漢詩を送りつけるとは。
私はたまたま父が学問をしていたので、幼いころから見よう見まねで白居易などを勉強していた。清少納言も頭が良い方であるから、漢字ができないということはない。そうは言っても、漢字はやはり男のものだ。
そもそも、斉信様がお一人でこんな手紙を送ろうとするはずがなかった。
きっと、ただ仲直りするだけではつまらないと思って、仲間内で集まって計画したのだ。
「今日は物忌みですからね。いったい何人籠っていらっしゃるのかしら」
そう言いながら手紙を返した。
「中宮様がお休みになる前なら色々とご意見を伺うこともできたというのに、本当、困ったこと」
外では主殿司が「お早くお願いします、お早くお願いします」と喚いている。その声は震えていて、いかにも寒そうだ。このどしゃ降りの中やって来たのだから無理もない。
もう少し早ければ多少はましだったのに、かわいそうなことだと思った。なんとか彼を早く帰してやりたいと思って、一緒にお返事を考えるけれども、一向にいいものは思いつかない。
「それにしても『蘭省の花の時、錦帳の下、廬山の雨の夜、草庵の中』なんて、嫌味ですわね。どなたが選んだのかしら」
私たちがいるのは中宮様の御座所である。草で出来た粗末な部屋なわけがない。
それを分かった上で、わざわざ清少納言に下の句を書かせようとするのも憎らしい。
「そうねえ」
そう言ったきり、清少納言は黙りこんだ。彼女はずっと斉信様の字を睨み付けている。
下の句をただ書いただけでは、つまらない。漢字は女の本分ではないのだから、知ったかぶりでかえってみっともないと言われることになるだろう。
雨の音はまだ続いている。遠くで雷神の声が聞こえていた。
私は清少納言を見た。彼女は手紙を見ながら何ごとかつぶやいている。
斉信様は清少納言が絶交したがっているということが誤解だったということをご存知のはずだ。なぜここまで回りくどいことをする必要があるのだろう。
斉信様が絶交を言い始めてからすでにかなりの日が経っている。ここにきての手紙は、清少納言が斉信様にとって交流するに足る女房であるか見定めているのだろうか。
清少納言とて、この絶交は不本意なものである。これは彼女自身の汚名をそそぐ絶好の機会なのだ。しかし、下手をすれば中宮様のお顔に泥を塗ることになってしまう。
そこまで考えて、ふと、ここ最近、関白である道隆様の体調が思わしくないことを思い出した。
斉信様のあの笑顔が頭に浮かんだ。優しい微笑みにそぐわない冷たい瞳。
もしかしたら、この絶交騒ぎには別の意味があるのかもしれない。彼女の返事は何を背負っているのだろう。その返事を書くのが自分なら、私に何が書けるというのだろう。
主殿司が「いかがですか、お返事はございますか」と急かしている。
清少納言はすでに返事を書き終えていた。彼女の指先は黒く汚れている。
「取り返そうというくらい大切な手紙のようだし、きちんとお返ししましょう」
見ると、斉信様の御手の下に荒々しい字が書いてある。それは、囲炉裏にあった消し炭で書かれているのであった。
『草の庵を誰か尋ねむ』
私は炭で書かれたみすぼらしい字を見ながら、この漢詩を選んだであろう、自分の師である噂好きな人物の顔を思い浮かべていた。
翌日。朝から『草の庵』を尋ねる公達がたくさんいらっしゃったので、清少納言はうんざりして部屋に引っ込んでしまっていた。
結論から言えば、彼女の返事は大正解であった。斉信様も大喜びで絶交を解消することにしたそうだ。
昨夜降っていた雨がうそのように晴れ、草木の露には日の光がきらめいていた。
「『草の庵』はいらっしゃるかな」
その日何度目かもわからない訪問者は、公任様であった。
私は清少納言が下がってから、何度も口にした言葉を返した。
「そのようなみすぼらしい名前の者はおりません」
「そうか、『玉の台』を尋ねたほうがよかったかもしれないな」
公任様はそう言ってお笑いになる。
「まさか、私の言葉を使ってくるとは思わなかった。昨晩は何人かの男たちで事の次第を見守っていたのだけれど、あの返事に一番驚いたのは私だろうね」
嘘ばっかり。そのつもりで詩を選んでいただろうに。
「いや、確かにあれを選んだのは私だがね。まさか気づかれるとは思わなかった」
「私だって気づきましたよ。それにしても、清少納言を試したのですね」
「人聞きの悪い言い方だな。まあ、端的に言えばそうだが」
人聞きが悪いというわりには悪びれない様子である。
「あんな意地の悪い詩を送りつけて」
「怒るな、怒るな。まあ、ろくでもない返事をするようなら中宮付きの女房もその程度だったということだ。誤解は解けても、絶交は解消できなかっただろうな」
そう言って、公任様はにやりとお笑いになる。
私は手紙を受けたのが自分だったらと想像した。複数の殿方が趣向を凝らした問いかけである。昨夜の私には全く気の利いた返事が思いつかなかった。今朝の話の広まり方を見れば、失敗したらどうなっていたかは想像に難くない。
改めて清少納言が負っていた荷の重さにめまいがしそうだった。
「何にせよ、素晴らしい返事だったと伝えておいてくれ。この私にさえ、あの歌に上の句をつけて返すことができないほどだったよ」
「わかりました。伝えておきます」
公任様は満足そうにうなずいた。彼の持つ扇には、『草の庵』の句が書いてある。宮中の殿方の間で、すっかり流行してしまっているのだ。
「中宮様もこんな素晴らしい女房を召し抱えて、さぞ鼻が高いだろう。ぜひ、中宮様にも私がいかに彼女をほめていたか伝えておいてくれよ」
公任様は私にそう言い置くと、退出なさった。
「私も気が向いたら清少納言に手紙でも送ってみるか」
去り際に思いつきを口にして楽しそうに帰って行かれる。清少納言には評判を上げる良い機会かもしれないが、正直心労の方が大きいと思う。
私も昨夜からずっと中宮様のお部屋に参上し続けていたので、そろそろ部屋に戻ろうと外に出る。
ふと庭に目をやると、昨夜の雨で庭の花が散ってしまっていた。
残るはかすかな梅の香りばかりである。
部屋に戻ると、清少納言は寝ているようだった。先ほどの伝言はまた後で伝えることにしよう。
私も一休みしようかと部屋の奥に向かう。几帳で仕切られた先ではすでに何人かの女房たちが寝息を立てている。
ここは寝るには少し狭そうだ。私は諦めて他の場所を探すことにした。
「あら、菅式部。戻っていたの」
私にそう声をかけてきたのは藤大納言である。手には薄様の紙が握られていた。
「ええ、先ほど」
話しながら、藤大納言の元に行く。
その紙からは、どこか覚えのある匂いがした。花菖蒲の手紙の香りだ。
先日捕まえ損ねた記憶がよみがえる。それは斉信様の香と同じ匂いであった。
「自分の目で見たことがすべて正しいとは思わない方がいい」
斉信様の言葉が思い出される。目の前の藤大納言はいつものように優しく私を見つめていた。
清少納言と斉信様の絶交騒ぎは、二人がお互いと縁を切りたがっているという噂を聞きつけて起こった。しかし実際のところ、これは根も葉もないことであった。
火のないところに煙は起こらない。それなら、火種はどこにあったのだろうか。
「どうしたの? ぼーっとして」
「いえ、あの、その手紙……」
その瞬間、藤大納言の顔がこわばった気がした。
しかし、すぐに元のように微笑む。
「他人の手紙について詮索するのはあまり感心しないわよ」
確かに、藤大納言の言う通りだ。他人の手紙についてなど、聞くべきではない。そう分かっていても、確かめずにいられなかった。
「失礼を承知でお伺いします。その手紙、斉信様からのものですよね?」
藤大納言から笑みが消える。怒らせてしまっただろうか。
「……あちらでお話しましょう。皆が起きてしまうわ」
そう言って、人のいない部屋の隅を示した。私は藤大納言に続いて移動する。
「どうしてそう思ったの? 中を見たわけじゃないでしょう」
「その手紙、斉信様と同じ香の匂いがしました」
藤大納言が「ああ」と頷く。
「文字通り、鼻が利くのね。確かにこれは斉信様からいただいた手紙よ。それがどうかしたの?」
「……清少納言さんと斉信様の絶交の件、藤大納言さんが関係しているのではないですか?」
藤大納言は微笑んだままだ。目だけが笑っていないのが恐ろしかった。
「思いつきで話してはいけないと、この間言われたばかりでしょう。あなたが清少納言を庇いたい気持ちはわかります。でも、発言は慎重にしなさい」
藤大納言の態度は、私の考えが外れていないことを確信させた。
それだけで十分だった。私は彼女を問い詰めたいわけではない。ただ、本当は違うのではないかという淡い期待が私に向こう見ずな発言をさせたのだった。
「はい……失礼いたしました」
「私は存じておりましたけれどね」
後ろから突然声がした。振り返ってみると、清少納言であった。
「え、お休みになっていたんじゃ……」
「もう十分休んだわよ。それに、楽しそうな話をしているじゃない。仲間外れはずるいわ」
清少納言が微笑む。緊張していた気持ちが少しだけ和らいだ。視界がわずかに歪んでしまったのを悟られないように俯いた。
藤大納言は、清少納言に向き直ると、先ほどと同じように微笑みかけた。
「どういうことかしら?」
「あなたが斉信様と恋仲だということですよ。それだけ頻繁にやり取りしていれば気づきますわ」
清少納言は気後れすることなく言い放つ。
「斉信様に私のことをあれこれ吹き込んだのもあなたでしょう。少し辿ればわかりましたよ」
藤大納言の顔からは、完全に笑みが消えていた。心なしか震えているように見える。
「……だったらなんだと言うの?」
「別に、どうということもありません。時間が経てば解決すると思っていたくらいですから。まあ、この子が騒ぎを大きくしてくれたみたいですけれど」
遠回しに軽率な行動を責められている……。私は清少納言の視線を避けるように、藤大納言の方を見た。
「藤大納言さんなら、二人が恋仲じゃないことくらいご存知だったでしょう? それなのに、なんでわざわざあんなことを……」
藤大納言はしばらく黙って私を見つめた後、口を開いた。
「……ここ最近手紙も、会いに来られる回数も減っていたの。でも、清少納言のところにはよくいらっしゃるから、それが憎らしくて。自分がこんなに嫉妬深いなんて知らなかったわ」
そう言うと、大きくため息をつく。そして、清少納言の方を見た。
「ごめんなさい、迷惑をかけるようなことをして。こんなことだから愛想をつかされてしまうのね」
藤大納言は、そう言って苦笑いをする。
「……そんなことはないと思います」
「え?」
気が付けば、そう口に出していた。藤大納言も、清少納言も驚いたようにこちらを見ている。
「斉信様からの藤大納言さんへの手紙は、いつも斉信様が使っている香の匂いがしているでしょう?」
「ええ、そうね」
「それって、いつでも傍にいると思ってほしい、ということではないでしょうか」
思いもよらないことだったのか、藤大納言はきょとんとしている。
「私、いつも思っていたんです。藤大納言さんはいつも誰かといるみたいだって。二人分の香が香っていたからだったんだわ」
ふいに、清少納言が笑い出した。続いて、藤大納言も笑い出す。
「え、私、何か変なこと言いましたか?」
「いえ、私もあなたのように素直になれたら良かったと思ったのよ」
藤大納言が私に向かって微笑んだ。少し前の凍り付くような笑みではない、いつもの優しい笑顔だ。
その瞳が悲しそうに伏せられる。
「いっそ、宮仕えなんてしなければこんなに誰かに嫉妬することも無かったのかしら」
「あら、それはいけませんわ」
清少納言は、彼女の言葉を明るく切り捨てた。今度は私も目を丸くする番だ。
「嫉妬は競争心の先駆けですもの。誰かと競う気持ちがなければ人は成長できないものです。家に閉じこもっていては、自分の力や才能を無駄にしてしまうだけですよ」
清少納言らしい言い分である。
「本当に、二人とも変わり者なのね」
「嫌だわ、清少納言さんと一緒にしないでください」
「それ、どういう意味かしら?」
私と清少納言が小競り合いをし始めようかという勢いなので、藤大納言が間に入る。
「ほら、喧嘩しないの。似たもの同士仲よくしなさい」
彼女の言葉に私と清少納言は顔を見合わせた。
「似ているのかしら、私たちって」
「さあ? でも、前に斉信様から似てきたとは言われましたよ」
「やだ、斉信様までそんなことおっしゃっているの?」
私たちが話している様子を見て、藤大納言はおかしそうに笑った。
やはり、彼女に似合うのは優しい笑顔だと思う。
梅の花は散ってしまったが、雨に濡れた枝がきらきらと光っているのが美しい。
宮仕えを始めたばかりの頃は、こんな風に自ら梅の木を見上げる余裕もなかった。
清少納言や藤大納言、公任様や斉信様などの様々な人たちに囲まれて、私も少しは成長しているということだろうか。
まだ風の中には梅の香りが残っているような気がする。
私は穏やかな気持ちでその香りに包まれていた。
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