最終話 今日という日が特別でないのなら

思ってたよりも普通だ。


別に特別な事はない。


泣いたり、笑ったり、後悔したり、せいせいしたり…別にそういう気持ちはない。


普通だ。とにかく普通だ。


高校の卒業式って言えば、ドラマとか漫画とかだったら、感動のクライマックスだ。級友や恩師との別れ、慣れ親しんだ学び舎からの巣立ち、新しい世界への旅立ち。


そんな今日という特別な日は普段は冷めている自分でも涙を流し、別れを惜しむことが当然だと思っていた。…そう期待していた。


しかし、実際のところはどうだろうか?


3年間という長いような短いような高学校生活の終わりである今日の日を迎えて、少しは感傷に浸ったり、涙を流したりするのかと期待していたが…僕の心は不思議となんの波風は立たなかった。


もちろんこの3年間、楽しいことも嫌なこともあった。たくさんあった。…本当にたくさんあった。


だから今日という日が少しは特別であると期待してたのに…僕の心は凪のように穏やかだった。


多分、無意識のうちに『卒業なんてこんなもんだろ』と、納得してしまっているからなのだろう。…いや、もしかしたら心に刻まれるほど特別な出来事がこの3年間には無かったからなのかもしれない。


ドラマのような甘い恋愛とか、スポーツ漫画のような熱い展開とか、そういう特別なことがあれば、僕もこの場で涙を流すことが出来たかもしれない。


そしてそれが出来ない僕は、思い出も、経験も、人間性も浅いちっぽけな生き物なのだろうなと、悲観的に見てしまう。


無難に生きて、平凡に暮らして、無気力に過ごしてきたツケがここで回ってきたんだ。


今日という日が特別と思える人はきっと、この3年間を無為にすることなく、一生懸命に日々を過ごして、精一杯生きて来たのだろう。…たとえそれが一見無意味に思えても。


だから、この場で人目もはばからずに泣ける人が羨ましく思えた。


「櫻井、今日は高校生最後の日だけど…どんな気持ちよ?」


体育館の壇上で校長先生が長ったらしい話をしている中、僕の隣のパイプ椅子に座る加藤が僕にそう話しかけてきた。


「別に普通」


僕はそっけない返事を返した。


「おいおい、櫻井よ。高校生っていう大事な3年間の集大成を『別に普通』で終わらすとはどうなんだ?」


「じゃあお前はどうなんだよ?加藤」


「俺はその…想像していたよりは普通だ」


僕の質問に、加藤は歯切れの悪い返事を返した。


「俺はてっきり、卒業式は思わず泣いちゃったりするんだろうなって思ってたけど…涙とか全然出てこないわ。卒業証書なんて紙切れ一枚渡されただけじゃ卒業の実感も湧かないし。…あーあ、可愛い女の子に桜の木の下に呼び出されて告白でもされりゃあ、少しは感動できるんだろうけどなぁ…」


そう言う加藤の言葉に、僕は少なからず共感を覚えた。


加藤と同様に、なにか特別な事が欲しいのだ。桜の木の下で女の子に告白されるとか、なんでもいいから心に刻まれるような特別な事が…一生忘れないような格別な出来事が…。


せめて、今日くらいは普通で終わりたくない。


「この卒業式って…なにか特別なこととか無いのかな?」


「そんな特別なことなんてないだろ」


僕の期待を込めた質問に、加藤は投げやりな返事で現実を突き返してきた。


…やっぱり、普通なんだ。


今日という日は、特別なんかじゃない。


ありきたりな普通の日々なんだ…。


僕がそう諦めかけたその時、加藤が口を開いた。


「あ、でも…強いて言えば一つだけこの卒業式には特別な事があるぞ?」


「特別な事?それはなんだよ?」


「それはな、この卒業式には…『在校生からのエールが無い』ってことだ」


「そんなの、普通のことだろ…なにをいまさら…」


加藤の当たり前の発言に、僕はため息まじりに返事を返した。









「第二ボタンって、そんなに欲しい物なのかな?」


とうとう高校最後の行事である卒業式を終え、最後のホームルームを目前に加藤は僕にそんなことを尋ねてきた。


「第二ボタンね。確か心臓に一番近いからとかそんな理由で好きな人の第二ボタンをもらうってやつだろ?。現実で第二ボタンをねだったりするやつなんていないだろ」


「いないのか…。一応、予備のボタンを何個か持って来たんだけどなぁ…」


「無駄に準備がいいな、加藤」


「実費で8個もボタン買ったのになぁ…」


「8個は自惚れすぎだろ」


「仕方ねえだろ。第二ボタンをいつ貰われてもいいように、6年前から予備のボタンを買ってたんだからさ」


「中学の入学前から狸の皮算用してたのか?加藤」


「ああ。数学は苦手だったけど、昔から皮算用だけは上手くてな…」


「悲しい才能だな」


いつものようにくだらないトークをしていると僕達の元にとうとう担任のサカもっちゃんがやってきた。…いや、やって来てしまった。


「卒業おめでとう…ラストチルドレンの諸君」


教壇に立つサカもっちゃんもさすがにこれで見納めだろう。


僕は恩師の最後の言葉を期待込めて見守った。


「今こうやって見渡せば、この卒業という日をみんないろんな顔して迎えているのがわかる。泣いてる人、涼しい顔してる人、虚しい顔してる人…そんな君達ラストチルドレンに問いたい。今ここに、この学校を何の未練も、何の後悔も、何の遺恨もなく旅立てる人はいるか?」


先生の質問に手をあげる生徒はいなかった。


きっと、誰もがこの学校にやり残したこととか、やりたかったこととか、そういう未練や…あの時こうしていればよかったという後悔や、報われない思いを抱えっぱなしで遺恨を残している。


そんな思いを微塵もなく、この場所を巣立てる者など、少なくともこのクラスにはいない。


3年間、部活動に捧げた野球一筋のスポーツ少年でも、クラスの中心の男女グループで楽しんで来たリア充も、机が親友のボッチでも…みんな、この胸に何かしらの思いを抱えている。


この気持ちに蓋をしようとしても、気がつかないふりをしても、知らん振りを決め込んでも、後ろ髪引かれる思いを完全には拭い去れない。


僕達はみんな、青春の中にいた。たしかに青春の中にいた。


だけど、それでも誰もが青春を手に入れることはできなかった。


きっと僕達は…青春に敗北したんだ。


サカもっちゃんは教室にいる誰もが手を上げられないのを見届けると、ニヤリと笑って高らかにこう宣言した。


「今ここに証明された!我々人類は青春に敗北したと!」


突然の敗北宣言に僕達がキョトンとしているのを尻目に、サカもっちゃんは語り続けた。


「我々人類は、誰一人として青春に勝てなかった!。連戦連敗…ただ一つの白星すら許されなかった!人類は青春に大敗した!!」


最後の最後ということもあってか、サカもっちゃんは珍しく僕らの前で熱く語っていた。


「だから悲観的にならなくていい!!。今抱えている思いは、誰もが抱えているものだ!!。誰も抗いようもない、絶対不可侵のカタストロフィだ!!。そんな青春に対抗するただ一つの手段を最後に君達に伝えたい!!」


僕は教壇で声高らかに叫ぶサカもっちゃんの姿を黙ってその目に焼き付けていた。


「青春に対抗する方法…それは君達の過ごして来た日々が青春であったと信じることだ!。君が今まで戦って来たその全てが青春であったと思い込むことだ!。仲間と汗水流した戦いも…衝動に駆られて走り出した道のりも…淡々と続く日々に一人抱えた焦燥も…心の中で絶えなかったどんな小さな思いも…その全ての葛藤が、青春であったと盲信することだ!!。僕が保証しよう、君達はたしかに青春の中にいたと!!君達の日々こそが青春であったと!!」


そして最後に、サカもっちゃんは僕らにこう告げた。


「今は無理でも、いつか…そう思えるように日々を生きて欲しい」


…そういえばいつだったか、サカもっちゃんは言ってたっけ?。先生になるのは『人類が青春に敗北するところを見たくなったから』だって。


きっと、ずっと前から言おうとしていた言葉なのだろうな。


そんなものを見届けるために人生賭けるなんて…ほんと、変な先生だ。


でも…いままでありがとうございした。


おかげで僕は、答えを見つけられました。


でも、それでも…僕の心は穏やかなままで…。卒業なんてそんなもんだろと高を括ってしまっている。


やっぱり、今日という日は特別ではない。


…さすがに悲しいな。


なにか特別な事が無いからとか、思い出に残るような事が無いからと言うよりも、3年間もここで過ごして来たというのに、なんの感情も湧いてこないことが悲しい。


自分でも冷めた人間だと思う。だけど、今日という日になんの感情も抱かないのはそのせいだけだろうか?。


僕はここで何をしたんだろう…何を得たんだろう…。それが無いから何にも思わないのだろうか?。


それじゃあ、まるで僕は何も無い空っぽな人間みたいじゃないか…。


…ふふ、今更何言ってるんだ?。


そんなのもう、とっくのとうに分かってることだろ?。


「櫻井、無事に卒業を迎えた気分はどうだい?」


最後のホームルームを終え、とうとう教師ではなくなったサカもっちゃんは僕にそんなことを聞いて来た。


「別に、普通ですよ」


僕はぶっきらぼうにそう答えた。


「残念だなぁ。今度こそ卒業式で君を泣かせたかったのに…」


「いいじゃないですか。サカもっちゃんには一回大泣きさせられましたし」


2年の文化祭、僕はサカもっちゃんを含めた大勢の前ですでに大泣きしていた。


少なくともサカもっちゃんの目標の一つである『僕を泣かせる』ことはすでに完遂しているのだ。


「今日は卒業式だけど…今日という日は特別じゃない」


どうせ今日という日は特別になんかなってくれない。


そんなの期待するだけ無駄だって僕も知ってる。


だから…僕は決めたんだ。


そして僕は先生に向かって無邪気にこう宣言した。


「だから…今日という日を特別にするんです」


僕の言葉に先生が困惑するのを尻目に、僕らはみんな、示し合わせたかのように一斉に校庭へと走っていった。


今日という日が特別でないのなら…今日という日を特別にすれば良い。


校庭には先程卒業を迎えた全校生徒が続々と集結していた。


だいたいみんなが集まったのを見計らって、僕はみんなの前に立ち、大きな声をあげた。


「みんな!!準備はいいか!?」


僕の呼びかけにみんなはやる気満々で返事をしてくれた。


その手にはみな、どこから持ってきたのかは定かではないが、色とりどりのペンキが握られていた。


その様子を見て僕はニヤリと笑い、声高らかに叫んだ。


「僕達の青春の最後の1ページは…僕達の色で塗りつぶすぞ!!!」


その掛け声と共に、生徒達は予定されていた行程通りに散り散りになって、作業に取り掛かり始めた。


「櫻井…何を始める気なんだ?」


状況についていけずに困惑してるサカもっちゃんがようやく校庭に到着し、僕にそんなことを尋ねてきた。


「なにって…お絵かきですよ?」


僕は悪戯に笑って手に持っていたペンキをこれ見よがしに見せびらかした。


「お絵かきって…何に描くの?」


「そりゃあ絵を描くなら…キャンパスに決まってるじゃないですか」


僕は母校の校舎を指差しながら、ニヤリと笑みを浮かべつつそう宣言した。


この計画は、姫浦から進路を聞かされたあの日から考えていたものだった。


『鷲宮東高校は…取り壊されないかな?』


これからシンガポールへ旅立つ姫浦の心配事を一つでも減らすために、そして母校を守るために、僕は使わなくなった校舎そのものを一つの芸術品に仕立て上げることにしたのだ。


そのためにまず、お盆で我が家に帰ってきたデザイナーである姉に相談し、鷲宮東高校の校舎を基台としたデザインを考えて貰った。


計画を実行するにあたり、かなりの資金が必要だった。


僕は斎藤さんにお願いして、鷲宮隊で集めた鷲中を守るために集めた資金を回してもらうことにした。


NPO法人である鷲宮隊の目的はあくまで町の活性化…だから今回やろうとしたこともそれに当てはまるため、これと言った問題もなく、斎藤さんは僕に資金を託してくれた。


しかし、それだけでは資金が足りなかったため、時田のアドバイスで僕はクラウドファンディングに手をつけてみた。


幸か不幸か、もともと僕はそれなりに知名度があり、おまけにユーチューバーとしてそれなりに活躍しているマキとミカの動画で宣伝もさせてもらい、注目を集めることも出来たので、なんとか目標金額を集め切る事が出来た。


そして先生方にバレないように内密に生徒達に協力を募り、道具を調達し…今に至るのだ。


「…じゃあ、許可も取ってないんだ」


「はい。事前に言ったら、サプライズにならないじゃないですか」


僕は全く悪びれるそぶりも見せずにそう言った。


「ははは、なんだそれ、僕への当て付けかい?」


先生の声はどこか呆れているようにも思えたが、その表情は清々しく見えた。


使わなくなった校舎を守れるほどの芸術品に仕立て上げるには、趣向を凝らす必要があった。


それと同時に、いつか誰かが生まれ、大きく育ち、この学び舎に通う未来が来るというメッセージを込める必要もあった。


だから僕は、姉に一つ、難しいお願いをした。


「きっと、ただ綺麗なだけじゃ…意味は薄いんですよ。いつか来る未来に希望の光を灯す…この鷲宮東高校はそういう存在であって欲しいんです」


姉は僕の無理難題に答えて、趣向を凝らしたデザインを考えてくれた。


色を塗る作業の行程としてはまず、校舎全体を大まかに特殊な染料を使い、パステルピンクで塗り潰す。この染料は特別に乾きやすく、撥水性も高く水にも強く、劣化しにくく、時間が経っても鮮やかな桜色を彩ってくれる。…この染料がなかなか高く付いた。


この上に経年劣化を防ぐ無色透明なコーティングを重ねた後、その色を土台に他の色でどんどん何層にも塗り潰し、全体で一つの作品を描きあげる。


この時に使われる染料は先程の奴よりも劣化しやすいものを使う。


「そして何層も…何層も彩りを重ねた後、ようやく作品は完成します」


「…それがどうして未来への希望になるんだい?」


「この作品は、時間の経過と共に劣化していきます。雨や風に晒されて、風化して表面からどんどん色が剥がれて、下の層に潜む新たな色が顔を出し、校舎はまた新たな顔を見せてくれます」


「つまり…時が経つにつれて変化するってことかい?」


「はい、この作品は未来へ向けて変化するんです。重ねた色がどんどんどんどん剥がれ落ちて行って、その度にまた新たな顔を覗かせて…。そしていずれ、一番下に潜む鮮やかなピンクが顔を見せます。蕾のように点在した小さなピンクが、時が満ちて花開くように大きくなり…いつの日か遠い未来で、満開の桜を咲かせます」


「…そんなに上手くいくものなのかい?」


「いえ、姉もどうなるかはやってみないことには分からないそうです。でも…だからこそ、将来が楽しみじゃないですか?」


したり顔でそう語る僕の顔を見て、先生はわずかに頬を緩ませて笑ってみせた。


「そうだね。…そういうものがあれば、こんな世界でも未来を楽しみに思える」


そして僕と先生はしばらく、遠い未来で再び合間見えるであろう桜色に染まっていく校舎を見守っていた。


いつの日か…校舎に咲き乱れる満開の桜と共に、誰かがここに通う未来を願って…。


そんな光景を思い浮かべながら、僕は先生に質問をした。


「いつの日か…人類は青春に勝てるでしょうか?」


「さぁね。だけど…一人くらい勝たせてやりたいね」


その日の最後に撮った全校生の集合写真は、みんな制服を色とりどりに汚していたとさ。


こうして僕達が通いつめた鷲宮東高校は一旦、その役目を終えることとなった。


そして…世界中の殆どの高等学校にあたる教育機関が一旦は、今年度をもってその役目を終えるのだ。


その翌日…。


僕はこれから最新鋭のネームレス研究機関への配属を目指すためにシンガポールへ向かう姫浦を見送るために空港に来ていた。


そこには姫浦を見送るためにそれなりの人集りが出来ていた。


そして、各々姫浦へ見送りの言葉をかけていた。


僕は姫浦にかけるべき言葉をぼんやりと考えていた。


だけど…かけるべき言葉は見つからない。


僕はまだ、自分の気持ちですら整理出来ずにいた。


やがて、僕が姫浦に声をかける番になった。


僕はそれでも頭に抱えているモヤモヤした気持ちを理解出来ず、言葉を詰まらせていた。


だけど、刻一刻と出発の時間は近付いているわけで…。


気持ちをまとめきれない僕は苦肉の策で姫浦にこんなことを提案した。


「姫浦…また、文通しない?」


「うん、いいよ」


姫浦はクスリと笑って快く承諾してくれた。


…とりあえず、これでまた僕らの関係を繋ぎ止める事は出来た。


この気持ちの正体は…解明でき次第手紙に綴ればいいか…。


答えを保留して安心した僕に、姫浦はこんな質問をぶつけて来た。


「ねぇ、櫻井は…本当にいつか教師として子供達の前に立てる日が来ると思ってる?」


「えっと…どうだろうね…」


真っ直ぐに僕の目を見つめて尋ねてくる彼女に、僕は思わず目を逸らして曖昧な言葉を返してしまった。


「確証もないのに、そういう未来が来るって叫び続けるんだ。…とんだペテン師だね」


「…仕方ないじゃん」


姫浦の言う通り、僕は多分ペテン師だ。


確証もないハリボテの希望をこれ見よがしに掲げ上げ、みんなを期待させるだけ期待させて…全く、とんだ悪人だ。


でも…それでも世界は希望に飢えている。


だから僕はいいと思うんだ…例えその希望が、偽りだとしても。


そんな風に考えている僕に、姫浦はこんな言葉を伝えてくれた。


「だけど、それでも君は叫び続けて…。嘘でもいい、偽りでもいい、見せかけの希望でみんなを騙して…」


そして最後にこんな一言を付け加えた。




「いつか私が、君の嘘を本当にしてあげるから」



姫浦…やっぱり、君は僕の希望だ。


共に戦い続けた僕らの間に結ばれた因縁という名の絆が、姫浦の言葉を盲信させてくれた。


僕らそれ以上は何も言わずに黙ってお互いの拳をぶつけ合って、別の道から同じ場所を目指して歩き始めた。


世界から子供が産まれなくなってもうすぐ20年…もう少し時が経てば、僕らは成人を迎え、世界から子供は完全にいなくなる。


もうほとんどの人は諦めて、人類の滅亡を受け入れた。


きっと…僕らは人類最後の世代…世界の見届け人たる存在。


僕らの後に道は残らず、僕らが歩くたびに世界はまた一つ、景色を失う。


僕らが受け取ったバトンを繋ぐ者は未だ現れない。


そしておそらく…これからもそんな誰かは現れない。


世界はただひたすらに景色を失い続け、僕らはただ破滅へと向かう未来を強いられる。


それでも…諦めるにはまだ早いと思うんだ。


まだ時間は残されている。


別に結論を急ぐ必要なんてないんだ。


だから、答えはまだ保留にしよう。


…うん、絶望するにはまだ早い。


諦めるにはまだ早い。


そして…きっと…



『ラストチルドレン』にはまだ早い。

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