第140話 VS初対面のプロフェッショナル


 さて、予選第十一試合。

「チーム・ハイパースーパーフォーブレイブス対チーム・銃こそ正義!」

 呼ばれて出てきたハイパースーパーなんたらかんたらは……おんなじ様な顔をした少年四人組。全員黒髪であった。

 そして、それには絶対に似合わない高級そうな装備。

 さらに、とんでもなくダサいチーム名。

 俺は一目でわかった。

「こいつら、異世界転生者じゃねーか……」

 いや、まだわからん。ただの黒髪の集まりってだけかも――

「俺たちは異世界から転生してきた勇者だ」

 あほかぁぁぁぁぁぁ!

 それなるべくばらさないほうがいいやつだから! それ聞いて喜ぶのはきっと馬鹿な女の子だけだから!! 現に相手チームの銃を持ったモブっぽい人たち震えてるから!!!

「はじめ!」

 それから先は、俺にも何が起こっていたのかわからなかった。

 なんか爆発音がして、すごい閃光がして、どーんずごーんってなった。

 幼稚園児並みの語彙力で綴ったが、そうとしかいえないほどの超次元の蹂躙であった。

 三秒ほどの長い時間が経って。

「止め! 終わり! もう終わりだから攻撃をやめて! これ以上は相手が死んじゃうわ!」

 審判が戸惑っている。

 四人の大馬鹿者は攻撃の手を止める。

 スタジアムは形が変わってしまい、対戦相手は四人とも全裸で転がっていた。

 黒髪の馬鹿のうち、一人が言った。

「俺、また何かやっちゃいました?」

 やらかしとるわっ!


 さて、予選第十二回戦。午前の最終試合だ。

「チーム・無交流初対面対チーム・ジュンヤ君親衛隊!」

 ……チーム名のつけ方がどんどん適当になってきているような気がする。というか、本当に初対面なら初戦でよく勝てたなと言いたい。

 それはさておいて。

 戦闘が始まった。

 始まるのは、ルミナの猛攻。やはりというべきか、前世がバーサーカーだったのかと思わせるような、拳を使った猛攻だ。しかし――

「すまんな、それだけでは倒れないのだ」

 一人が言う。

 なるほど、初対面組が強いのは、一人一人の練度故だ。

 ……彼らの強さは見た感じ、俺たちと同格か少し弱いくらい。つまり、普通の人にとっては結構な強敵だ。

 一方、ルミナたち、つまり俺の親衛隊は……正直言って、ルミナが妙に強い――恐らく俺よりかは多少強いだろう――のがわかっただけで、ほかは未知数だ。なぜなら、まだ誰も動いていないから。

 さて、どう出るか。

「……ど、どうしましょう」

 いや、本人たちも戸惑っているぞ!

 テネシンのその言葉に、セレンは「本当にどうしよう!」とさらに慌てる。

 そこで、スズがうつむいて、意味深な笑みを浮かべた。

「どうやら、私の真の力を見せるときがきたようね……!」

「それって?」


「実はいままで黙っていたけど――私、異世界人の娘なんだ」


 聞いていた三人に電流が走る! さらに、戦闘が一旦止まった。

「チート? ってすごい力は引き継がれなかったんだけど……その遺伝子は引き継いでるからね。普通の人よりもちょっとだけ魔力や体力が強いの」

 なるほど。初めてスズを見たとき、そのこげ茶色の髪を見て、一瞬日本人と間違えたのだが……そういうことなのか。顔が日本人っぽいのも頷ける。

「いままで黙ってて、ごめん。嫌われちゃうかと思って……」

 沈黙がその場を包み込む。

 そう。異世界人は、文化や価値観の違い、神に持たされた能力の強さ、さらには常識のなさなどの問題で、一部の人間にはあまり良く思われていないのが現状なのである。

 神妙な空気――それを切り裂いたのは、セレンの一言だった。

「わ、私は気にしないよ!」

「……え?」

「スズがどんな生まれでも、スズはスズだよ。……スズが異世界人でも、宇宙人でも、どうだっていい。私は、スズが大好きだから!」

 それを聞いた彼女は、涙を一粒流し――セレンに抱きついた。

「ヤバい……ヤバいよ……っ! ――わたしも、だいすき」

 二人は抱き合った。

 しかし、そんな空気をぶち壊すかのようにテネシンは話し出す。

「じ、じゃあ、二人の力を教えて……」

「テネシン、あんた、よく空気読めないってよく言われない?」

「すみませんです」

「なになにー?」

 セレンとテネシンの会話に首を突っ込むルミナ。

 始まる作戦会議。しかし――。

「そうですね。それなら――こうするのがいいと思います」

 恐るべき、テネシンという男の立案力。

 よく聞いてみると、この短い時間で相手の戦法や戦闘力を分析し、見方の能力や力と照らし合わせながら、綿密で狡猾で確実で適切な戦法を練り上げている。

 ……正直言って、彼らとはあんまり戦いたくない。俺の親衛隊は強すぎる。


 しばらくして。

「じゃあ、戦闘を再開しようじゃないか」

 ルミナのその言葉で、戦いは再開。

 特攻するルミナに、相手の剣士が飛び掛り――「かかったな!」

 飛んでくるヨーヨー。

 セレンはなんとヨーヨーを武器にしているらしい。

「!? ……なんだ、おもちゃか」

 その剣士はヨーヨーを手で払い――驚愕する。

「侮らないほうがいいよ。だって、いまのこれは――」

 ――重い。これは、あまりにも。

「――私の魔法あいで強化されてるんだから」

 スズがしたり顔で言った。

 剣士は、予想外の攻撃に耐え切る事が出来なかったのである。


 一方、ルミナは別のほうに攻撃した。

「きゃあっ! 私は魔法使いよ! 直接戦闘は……」

「すまねぇ、戦いはいつも不条理なんだ。ってわけでゆるしてちょんまげっ☆」

「うざっ。こいつうざっ」

 ルミナが拳で連撃。しかし、そのとき、ルミナの頭に矢が突き刺さる。

「うっ……やられたで……ござる」

 そういいながら倒れる彼女。刺客は、奥にいたのだ。

「もう! 私に当たったらどうするつもりだったの?」

「そうはならなかった。それでいいだろう」

「結果論でしょ! それは!」

「そうそう。謝りなよ」

「うんうん! この人の言うとおり……え?」

 魔法使いと弓士の言い争いに堂々と参加するルミナ。

「コイツ、どんな生命力してんだ」

 弓士の彼が言うとおりであった。

 ルミナよ、お前、異世界から来たわけでも実は異種族だったなんて展開もないんだよな? 本当に人間なんだよな?

 それから、ルミナは唖然とする二人を瞬殺。次の獲物の元へと向かった。


「キミで最後みたいですね……」

 テネシンは最後に残った少女に詰め寄った。

 少女は高らかに宣言した。

「もうギブ! リタイ――」

 ……しようとした、と言うべきだっただろうか。

隕石メテオ

 スズも隕石を落とす魔法を使えたようで。

 出現した特大の隕石は、スタジアムに大きめのクレーターを作ったのであった。

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