第100話 死闘、絶望、狂騒、衝動……(後編)
その後、俺はユウの治癒魔法で一命をとりとめた。
一瞬どうなることかと思ったが、どうにかなるときはなるようになるようだ。
まあ、盛大に破壊した上自分も死にかけたとはいえ終わりよければすべて良しだ。
そうして、次の敵の元に向かう。
たどり着いた先は、とある大通り。冒険者ギルドからも、王国騎士団本部からも徒歩1分程度の場所だった。
さっきまでとは趣旨が変わって、大型のロボットのようなものだ。
その姿を見たとき、俺は察した。
あの時とは形こそ違うものの、やはり、“あれ”か。
そう、“魔道兵器”だ。
周囲の有象無象に理不尽な破壊をもたらす、意思ある破壊兵器。
昔のロボットアニメに出てくるような格好のそれは、集まる冒険者や騎士たちを圧倒していた。
「くっ! 刃が通じない!」
「魔法もだ!」
「この鎧を持ってしても攻撃が防げないとはっ!」
「もう駄目なのか!?」
騎士と冒険者は口々に言う。
二十四騎士の人も戦闘に参加しているのが見えた。
俺と戦ったイオタとカッパ、シグマやタウもそのロボットを攻撃していた。
だが、まったく通用していない。
このまま負けてしまうのだろうか……。そう思われた。
そのときだった。
『みんなっ! ちょっとどいて!』
少女の声が響き渡る。
その指示どおり、その場から離れると、上から巨大ロボットが降りてきた。
ダァァン! と、地響きを立てて降りてきた、そのシャープな形状をしたカッコいいロボットは、
『安心して! こいつはボクが制圧する!』
と、そんなことを言う。
俺はカイに聞いた。
「なんですか? あれ」
「あれは、王国騎士団最強の“機械式魔道兵器”、イプシロンだ。搭乗者は、ラムダ。二十四騎士の仲間だ」
要は、あれだな。戦闘ロボってわけだ。フル○タとかで出てくるやつ。
「“学園都市”で世界中の技術を結集させた世界最強の兵器なんだ!」
「そうなのか」
カイさんが目を輝かせながら説明する。
わかるぜ、その気持ち。
男心をくすぐるこの武装の数々。たまらねー!
そんな夢のロボットが、敵方の巨大ロボットに向かって走る。
動きの鈍い敵ロボットはイプシロンをかわそうとするが、避け切れずにぶつかる。
イプシロンはその動きで腰に下げていたマシンガンを取り出す。
ダダダダダダダダダダンッッ!!
撃ちだされた大量の弾は、全弾、敵ロボットに命中。
敵のロボットは、ロボットに見えてもやはり生物兵器だったらしく、撃たれた傷口から血を吹き出す。
だが、その血を吹き出した敵も、黙ってやられているばかりではない。
そいつは、いかにも旧式らしいU字型の手を高速回転させる。そして、そのまま腕をぐるぐる回してイプシロンに突進した。
グルグルパンチか。いかにも弱そうやな。
イプシロンはあわてない。
まず、マシンガンを腰に装着しなおす。そして、背中に背負っていた、見慣れない形の巨大な銃を手に取った。
片膝をつく形で、それを構える。
そして、その引き金を引く。
ドォォァァ――ンッッッ!!
銃声。瞬間、暴風が駆け抜け、破壊をもたらす。
そして、相手の魔道兵器に命中。すると――
ボゴォォァァァ――――ンンッッ!
――爆発を起こした。
圧倒的破壊力。爆風は、十m程度離れているはずの俺にまで感じられた。
敵のロボットは亡骸も残らないほど、木っ端微塵に破壊されていた。
装甲板の欠片は確認出来るものの、それ以外はほとんど灰塵と化していた。
イプシロンは、その体勢のまま両手を地面について、頭を垂れる。
冒険者たちが「なんだなんだ?」と近寄ると、突然、首の辺りがガシャンと開き、中から俺ぐらいの年の少女が出てきた。
青い長髪の彼女――ラムダは、俺たちに向かってお辞儀をした。
そのとき、歓声が起こる。
熱気を帯びる雰囲気の中、その中にいたラムダはフラフラと抜けてどこかに行くのが見えた。
でも、何で今まで出てこなかったのだろう。そして、次の敵は倒しに行かないのだろうか。
とにかく、次の敵の元へ行こう。
**********
つぎは、王城の堀の横にある道。
そこには、一体の魔獣が暴れていた。
猫科の大型肉食獣のような魔獣だ。
「あれは……」
「あ~、キングパンサーじゃ~ん」
「俺の台詞を取らないでくれよ!」
カイの台詞を乗っ取って軽い調子で言うチェシャ。
そんなやり取りを横目に、俺たちは武器を構えた。
だが、それは乱入者の駆動音で遮られる。
ゴォォォォォ……
ジェットエンジンのような轟音。そして、燃え盛る炎のごとき光。俺たちは思わず上を見上げる。
そこには、巨大な球体が浮かんでいた。
ラグビーボールのような形をしていて、下から炎が噴き出している。
その物体はゆっくりと地面に近づくと、にゅるりと足を出す。
そして、魔獣と俺たちの間に降り立った。
さらに、横側面から腕が生えた。
最後に、頂点の部分から頭のようなものが姿を現す。
これで、鉄○2○号のようなものが完成した。
さっきの旧型ロボット風魔道兵器と酷似している。つまり、恐らくこれは味方ではない。
だが、そのロボットは魔獣のほうを向いている。こちらと戦うつもりはないのか?
対峙する魔獣とロボット。先に動き出したのは、魔獣だった。
その鉄の皮膚を切り裂いてやらん、とばかりに飛び掛るその魔獣の爪は、その鋼の胴体に当たり、はじかれてしまう。
しかし、なんと、ロボットは立ち上がる魔獣を一瞥してから、もう興味はない、というかのように振り返った。そう、俺たちの方向に。
そのロボットは、またもや攻撃をしては跳ね返される魔獣を見向きもせず、俺たちに向かって、目のような部分から赤く太い光線を放った。
横に避ける。後ろにいる仲間たちも同じように。
光が通過する。その直後、俺がいた地面は真っ赤に溶けていた。
背筋がぞっとする。もし、これが当たっていたなら、俺たちは死んでいただろう、と。
恐怖、畏怖。倒さなくてはならない脅威。
しかし、その力を町で使われたら、と想像すると、さらに恐ろしい。
だから、負けるわけには、行かない!
俺は駆け出した。
走り、跳ぶ。
片方の剣を抜き、空中で振りかぶり――。
その瞬間、重力が変化した。
遅れてやってくる、強い痛み。骨が折れたかもしれない。それどころか――。
俺は、そのロボットにハエのように叩かれたのだと自覚した。
急激に意識が消えていく。
これは……死んだ……な……。
俺の意識が完全消滅する直前、冷たい感覚を感じた――。
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