第88話 勝利への道!?
俺はいま、猛スピードで迫ってくるディアボロという
俺がいったい何をした!?
あ、いや、これは試合なのだから当然か。あれ? ちょっと待てよ?
何で、俺練習試合でこんなに本気になっているんだ?
いや、もうここまできたら冷静になってはいけない……!
俺はただ、目の前の戦いに勝利するだけだ!
そうして俺は走る。
だけど、もう息が切れてきた。まずい。息を整えたくなってきた。
しかし、一旦止まれば……転がってくるあのディアボロに潰されて……死……。オエッ、考えただけで気持ち悪くなってきた。
はっ、これをそのままあいつにぶつかれば……駄目だ、そのままボールで防がれる……ん?
一度思い出してみろ。
前回、俺の攻撃直後のシーン。
俺の攻撃がボールで防がれた後、すぐにリリスとノアが攻撃していた。
しかし、その攻撃はただの棒に当たっていた。
あのピエロが瞬間移動の能力が使えるのは厄介だがいまのところ重要ではない。重要なのは、そのとき俺の攻撃を受け止めていたボールが消えていた、ということだ。
何故消えていた? 空中にいつの間にか現れたあの棒はなんだったんだ?
そして、いつの間にか二人の攻撃を受けていた棒が消えていて、代わりにいま俺を追いかけているあのディアボロとかいう物が出てきていた。
思い返してみれば、その前も、俺たちの攻撃を受け止めていたジャグリング用品は、いつの間にか出てきては、消えていた。
つまり、あのジャグリング用品の数々は同時に二つ出ていたことはない。
ということは、まさか……。
――それならば、いける!
俺は、脳内に浮かんだ勝利法に思わず口角が上がった。
**********
どうも、ラビです。
僕はいま死のふちから這い上がってきたところです。
まあ、冒険者をやっていればわりとよくあることだったりするのですが。
それはそうと、いま僕の目の前では、ものすごい戦いが繰り広げられています。
茶碗を二つつなげたようなものに追いかけられながら怪しげな笑みを浮かべている友人のほうではありません。
笑顔で女騎士と剣を打ち合っている少しシュールなほうです。
そう、私はそれを期待していました!
彼は、かつて大陸全土に悪名をとどろかせたあの“
かつてたった一つの大魔法で、ぶつかり合っていた二つの軍隊を全滅させたとも言われる彼の実力は、以前この目で見たこともあります。だからこそ、彼の強さは信頼しているのです。
ですが、それだけで済むような相手でもなかったようです。相手の女騎士、イオタさんの強さは予想を超えていました。
彼らは互いに剣を打ち合います。けれども、その刃は双方の身体に届くことはなく、返され、かわされます。
言葉を交し合うのが、かろうじて聞こえてきました。
「……なんだ、やるじゃないか、少年」
「そちらこそ……。でも、あなたの力はその程度かい? 拍子抜けだよ」
「ふっ……! 面白い! だからこそ、戦いは、楽しいのだっ!」
瞬間、ユウの腕が消えます。
いや、正確には消えたように見えた、でしょうか。
一拍遅れて、何が起きたかを知ります。
ユウの腕が戻ったそのとき、イオタさんの鎧、そのちょうど胸部がはじけたのです。
彼は素早すぎる動きで、大量の攻撃をしていたのです。
それも、胸をぴったり狙って。
おっきいおっぱいのお出ましです……!
僕や観客を含めた男性たちは、そのおっぱいを凝視。
一方、チェシャたち女性陣はこの蛮行に引きまくり。
そして、イオタさん本人は、顔を真っ赤に染め上げて――
「み、み、見るなぁぁぁぁぁぁ!」
――叫びました。ちょっとかわいいとか思ってしまった紳士は少なくはないでしょう。
**********
純也です。
【朗報】いま、対戦相手の女騎士がおっぱいさらけ出しました。
にしても、いいですね~。恥じらいのおっぱい!
ちなみに、そのバストは豊満であった。
って、そんなにおっぱいを連呼している場合じゃなかった!
いつの間にか足も止まっていた。
まずい、ぶつかる! ディアボロが、ぶつかる……!
身構えた。
…………しかし、その感覚はいつまでたっても来なかった。
恐る恐る振り向くと、そこにはディアボロが脱力したかのように止まっていた。
(イオタのおっぱいを横目に)周りを見渡してみると、その道化は俺のすぐ目の前で、気の抜けた表情でイオタのほうを見ながら立っていた。
「……う、美しい……」
明らかにカッパの声で、そんな言葉が聞こえてきた。
片言じゃ……ない!?
だが、俺はその重大事実を突っぱねて、目の前の道化姿の(おっぱいの)同士に親指を立てたのだった。
『うわぁ』
女性陣が引く声が背後から聞こえてきた、様な気がした。
というのはともかく。
まだ決着はついていない。
「や、やめろ! そんなに見るな! 視姦しないでくれ! あっ、やっ、らめぇ……」
おっぱいさらけ出した上で自分の世界に入ってしまった女騎士はもう戦闘不能と考えてもいいだろう。
問題は……
「……ムネ、イイナ……」
どう聞いてもセクハラにしか聞こえない発言をしているそこのピエロことカッパである。
一見問題はなさそうだが、いつ正気に戻ってもおかしくない。
いま倒してしまえば問題はないが、なるべく関係を拗らせたくはない。
戦闘力を奪えば、大丈夫だろう……あ。
すぐそばに落ちていたディアボロを拾い上げた。
これで、さっき考えていたことは完遂っ!
まもなくして。
「…………ハッ……! ……ソウイエバ、バトル……ア……」
こちらに気がついた様子のカッパ。
どうだ。これで手も足も出まい。ふふふふふ…………
だが直後、頭に衝撃が。
薄れ行く意識の中で、俺は仲間に告げる。
「後のことは……頼んだ……ぞ……」
誰かの「目の前の巨乳に気を取られないでよ! ……私のおっぱいじゃ駄目なの?」という悲痛なかわいい声が聞こえて。
ピエロが幼女二人に殴られるのが見えて。
試合終了の宣言が聞こえて。
それから目の前が真っ暗になった。
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