第85話 昼・挨拶回り


 さて、覚醒直後いきなりの叫び声でまだ耳がキンキンしている純也です。

 聞けばもうお昼とのこと。さっき神と会話したのが朝日の昇る頃だから……いっぱい寝たな、俺。

 それにしても、この町は混雑がひどい。高校に通っていた頃の満員電車を思い出すぜ。

 7時台の急行は混んでいてつらかったな……。特急よりかはましだっただろうけど。

 懐かしいな。母さん元気にしてるかな。

 なんてことを考えていると。

「よし、ここが……えっと……」

「王国騎士団の本部よ」

「ああ、そうだ。俺たち王国騎士の本部だ」

 今日は挨拶回りらしい。あとで冒険者ギルド本部にも行くそうだ。

「そういえば、カイさん。護衛の報酬とかって貰えるんでしょうかねぇ?」

 ラビがすごくねちっこい口調で言った。ラビって結構けちなところがあるんだよね。少し前にクエスト帰りに出くわした魔獣を報酬のために倒していたって事もあったっけ。

「心配しなくても、しっかり用意してある。冒険者ギルドに着いたら渡すから、待ってな」

「はーい♪」

 心底嬉しそうだな。

 さて。

 ここは王国騎士団本部。王国直属騎士が集まる場所である。たとえば、警察でいう警視庁のようなものである。少し違うかもしれないが。

 そこには……

「よぉ、カイ。元気か?」

「お、そっちこそ元気そうだな、シグマ。今日もいい筋肉してるじゃないか」

 筋肉自慢する全裸のマッチョが一人。

「おっはー、ふぁいふぁい」

「ひさしぶりー。相変わらずヘンな格好だね、タウは」

「ヘンなカッコ言うなし」

 言語がおかしいゴスロリ服の女が一人。

「……オハヨウ……ゴザイマス……」

 なに考えているのかわからない片言ピエロが一人。

 俺たちは色々な意味で開いた口がふさがらない。

 とどのつまり。


(ここ、変人しかいないじゃん!)


 このときばかりは全員の心の声が重なった様な気がした。


**********


 その後、それぞれが自己紹介した。

 玄関を入ったところにはテーブルやソファーなどが置かれており、玄関と言うより、応接室に近い感じになっていた。

 いま、そこで話をしているところである。

「で、彼らに護衛してもらってたわけだな?」

 と、パンツ以外は何も着ていないマッチョのシグマがカイに聞いた。

「ああ。こいつらはルーキーだが相当な腕利きだから、だいぶ頼りになる」

「そーなのね。でも本当に腕いーの? あたいにはもやし×3とパツキンとパツキン幼女とカワイイ色白の少年しか見えないんだけど? こんなのに守って貰ってたとかマジ卍だわ」

 と、あきらかに俺たちに喧嘩売っているゴスロリ服のギャル、タウ。俺はもやし扱いか……。

「って、あれ? もう一人はどうした?」

「チェシャ? あ~、彼女の腐り具合なら、信じられるから」

「同士でしたか~」

 この人も腐ってたのか……。

「でも、彼らの強さと実績は信じるに値するものよ」

「マジ?」

「うん。たとえば……」

「ピキューン…………カレラハ……ホンモノデス……」

 なにを考えているかわからない片言ピエロ――カッパというらしい――が突如口を挟んできた。

「おい、カッパ。どーゆーこと?」

「……セントウリョク……レーダー……ハンノウ……シタ……」

『…………』

 全員、呆れた。なんてコメントすればいいのだろうか。

「ま、まあ、とにかく、腕の立つ冒険者だってことはわかったぜ」

「おう、今日はこいつらの挨拶だけだから、お早めに――」

 カイがそうやって話をまとめて帰ろうとした、そのとき。

「待ちな!」

 近くにあった階段の上から凛とした声が響いた。

 あれ? カイが額を押さえてため息ついてる。何故だ?

「あら、イオタさん。こんな大声出して、なに?」

 ファイが聞いた。

「ちょっと、お手合わせ願いたいのだ。そこの冒険者たちにな」

 そのいかにもな女騎士は、俺たちを指して言った。

「……え?」

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