第83話 王都到着……Ⅱ……!

アレスの国王。

 年齢不詳(推定500歳以上)のエルフで、過去に幾多もの災厄からこの国を守り抜いた最強の為政者である。

 そんな人物がこの目の前にいる。実際に会って見た感想は……正直言ってただのボケた老人である。

「……まあよいか。あなたがたは?」

「はっ! 私は王国二十四騎士が一人、エンテ町長のカイであります!」

「同じく、王国二十四騎士の一人、ファイです!」

 硬くなってるな~。いや、国王の直系の部下に値するらしいからな、王国の騎士って。仕方ないか。

 まあ、俺たちも自己紹介するか。

「俺は純也です。冒険者で彼らの護衛で参りました」

 俺が適当に自己紹介すると。

「平民よ、口を慎め」

 すぐそばにいた女騎士が剣を突き出してきた。マジか。

 ちょっと自己紹介しただけで殺されかけるって怖すぎるだろ。

 しかし、王はまた慈愛にあふれた人物であった。

「まあ、そんなことでいちいち剣を抜かなくともよかろう」

「しかし……」

「自己紹介しただけの相手に剣を向けるのはさすがに恥知らずではないのかね」

「…………」

「とにかく剣を下ろしなさい」

「……はっ!」

 王は、優しい口調で女騎士をなだめ、落ち着かせた。

「つっ、連れのものが申し訳ありませぬ!」

「いいのじゃよ。冒険者は多少無礼なもの。しかもこの程度は無礼ともいえぬわい」

 器が広い。やさしい。この人は聖人君子だな。多少ボケているのはともかく。

「では、今日の報告事は何じゃ?」

「私の町に悪魔が襲来しましたので、この折に報告に参りました!」

「何故このときなのじゃ?」

「王国騎士団会議があるからです」

「……何じゃったっけ、それ」

 俺たちはずっこけかけた。ここでこけるといろいろとまずいのでぐっとこらえたが。

 側近の女騎士が耳打ちし。

「おお。そういうことか。ありがとうの」

「はっ!」

「しかし、悪魔か……」

 考え込む王。何か考えが……?

 そう思い見てみると。


 寝てた。


「殿下!」

「はっ、すまんすまん」

 そんな茶番を見ながら思った。

 デジャヴだな。これ。

 どこかで見たことあるような気がする。というか、こういう老人キャラと会った時ってわりとこういうことになるんだよな……。

「……わかった。その報告は受けたぞ。今夜は休みなさい」

『はっ!』

 カイさんとファイさんは元気よく返事をし、俺たちと部屋を出た。

 もう外は暗くなっていた。


 なんだったんだろう。


**********


 暗くなり、人通りがある程度落ち着いて、歩きやすくなった大通りを進む。

「この道を向こうだよな」

「そうよ。あそこをこういって……」

 俺たちはカイさんの別宅に泊めてもらうことになった。

 ふう、疲れた……。いろいろありすぎて疲れた……。

「だけど、大丈夫か? ノア」

「もう……駄目……」

「ほら、こういうときはこの冷たい空気で深呼吸をするんだ。ほら、気持ちいいだろ?」

「すう……はあ……。気持ちいい……蘇る……」

 高級な空気に押されて死にかけていたノアを蘇生させ。

「ちょっと……ジュンヤく~ん……疲れたのぉぉぉ~」

「なんだアリス、おい、こっちに寄りかかるな!」

「おんぶしてぇ」

「ああああ、もう! しょうがねぇな!」

(やった! 純也君の背中大きくて最高❤)

 なぜかこちらに寄ってきたアリスをおぶって(最後に何か聞こえた気がするが、気のせいだと思う)。

「あ、ここはどこだ?」

「またっすか」

「ダウジングだな」

「またかよ!」

 軽く迷子になりつつも。

「やっと着いた!」

「この屋敷、意外と広い!」

 その日はどうにか無事に眠りにつく事ができたのだった。

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