第2部 第2章 王都到着編
第82話 王都到着……Ⅰ……!
ようやく王都に到着した。町に入るための検問所が大きくて驚いた。
温泉の町であったような問答を挟んで、ようやく町に入る。
「すごいな。いろいろとあの町とは大違いだ」
「それはそうだよ。だって、王都だよ? 王様のお膝元だよ?」
「確かに。それも納得できるな」
それほどにはいろいろと桁違いだった。
まず、馬車を置くための駐車場が大きい。
道路も、まるで東京の都心並みには広い。その全体が歩道なので、むしろ人間の交通量は東京都心をも越えるかもしれない。
そこを歩く人間の数も半端ない。広い道路いっぱいに人があふれかえっているのだ。かつてエンテの町に来たときも人の多さや人種の多様さに驚いたが、それどころではないほどにはすごい。人種の坩堝という言葉がよくわかってくる。異世界の亜人種の多さには圧倒されるばかりだ。
そして。
「そもそもここはどこだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「カイさん!?」
「この町は広すぎるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
このカイさんの叫び通り、町が広い上に道がややこしい。
まっすぐ王城のほうへ歩いているつもりでいても、いつの間にかまったく別の方向にいたり、その先は行き止まりだったりするのだ。
つまり、いまの俺たちは……
「迷子だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ということである。
俺たちは、行き止まりの壁の前で行き詰って座っている。
「ちょっと、どうするんですかこれ!」
「うむ、ちょっとどうしよう。幸い誰もはぐれていないようだがな……」
「こういうのって、東京のあるあるなんだよな……。みんなは気をつけようね」
「ジュンヤ、誰に向かってなにいってるんだ?」
「いや、なんでもない」
「ならいいんだが。お~い、誰か地図を持っているやつはいないか?」
手は上がらなかった。いないようだ。リリスは言った。
「すまない。事前に調べられたらよかったのだが、さまざまな理由で難しかったのだ」
「仕方ないよ。この町は広すぎる上に、基本的にいつもどこかで工事されているからいつまでたっても地図ができないんだよ。できても一年経たずに買いなおさなきゃ使えないんだ」
ユウの言葉に、「それどこの横浜駅だよ」と、突っ込みたくなった。横浜駅もいつも工事しているからな……。まあ、横浜駅の地図は変えなくてもあんまり問題ないけど……いや、あるかも。
「そういえば一年前はこんな道なかったものね……。あった道が消えてたわ」
「いや、覚えてたんかい!」
ファイの言葉に突っ込むカイ。夫婦漫才か。
そこで、ラビが正しい意見を言う。
「さて、どうしましょうか。これじゃあ埒が明きませんよ」
「確かにな。さて、どうするか」
「ぐるぐる回ってどうにかする~?」
「チェシャ、お前ってたまに恐ろしいこと言うよな」
「そう?」
「そうだよ。さすがに一日中町を回っていられるほどの精神力はない」
「あ、そう」
何もでない。と、思いきや。
「でも、その町を回る方法しかない気がするぜ」
「カイさん!?」
「ちょうどここに鉄の棒もあるし」
「まさかのダウジング!? というかなんであった鉄の棒!」
「大丈夫、去年もその方法でどうにか王城を探し当てた」
「すごいね! 実績があるなんてすごいね!」
「大丈夫だ。実績はあるが確証はない」
「どこが大丈夫なんだろう……」
「まあ、心配するな」
「心配しかない」
こうして、そのカイ自慢のダウジング術を使った町探検を始めたのだった。
――そうして、捜索を開始してから一時間四十二分後。
「ここが、王城の西口門だ」
「ホントに着いちゃったよ!」
そう、本当に着いちゃったのである。
にしても、広い門だな……あ、守衛の騎士が敬礼してる。
すると、その騎士の一人がこちらに走ってきて、話しかけてきた。
「こんにちは。本日の御用は何でしょうか」
その声は女性のそれであった。つまり、女騎士なのか。
それはともかく、その質問には代表してカイが答える。
「ちょっと王様に面会。あといろいろと報告」
「ちなみに、後ろの方々は?」
「俺の連れだ」
「そういうことでしたら、どうぞ」
「おう、こっちの騎士にもよろしくな」
「はっ!」
無事通れたらしい。やはり、地位は持っておくと便利。
王城の中は広々としていて、清潔感があふれていた。まるで役所のような……まあ、ある意味役所のような面は持ち合わせているらしいんだけど。
王様がいる執務室はこの最上階にあるらしい。
が。
「こんなとこ、初めて……」
「おい、ノア。しっかりしろ……。高級品の放つオーラに負けるな……」
「うん……お兄ちゃん……。ぼく……がんばりゅ……」
「この二人大丈夫なの?」
駄目みたいだ。こんなに輝いた空間初めてで、緊張で息が詰まりそうだ。もともと洋服屋と高級な施設は苦手なんだよな……。
まあ、受付などの処理を済ませてからなので時間は空いたものの、どうにか王様との面会が許された。
ああ、王様ってどんな人なのだろうか、と、心を躍らせた。
そして。
「入ってよいぞ」
という女騎士の声が執務室の中から聞こえた。
コンコンコン。
三回ノックをして、『失礼します』といい、執務室内に入る。そこにいたのは。
「こんにちは、わたしは魔道王国アレスの国王。名前は……名前…………何じゃったっけ」
控えめに言ってただのボケジジイであった。
なんだろう。すっごく残念な気持ち。
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