第79話 「801とはつまりこういうことか」
六日目。
「あれが王都か……」
やっと見えたその町の外観は、とても立派な城壁の先に巨大な塔――王城だろう――が立っていた。
まさに誰もが予想するファンタジーの町じゃないか!
今日はノアも御者席に座っている。例の「二人で御者」というやつだろうか……。一度見てみたいものだが。
アリスは筋肉痛で動けなくなっている。さすがにちょっとスパルタ過ぎたかなぁ。
にしてもここ最近寒いな……。
そういえば、なぜかぜんぜん季節の説明がなかったので今しておこう。
この世界は春夏秋冬が比較的しっかりしているようだ。理由は知らないが。
大体俺がこの世界に来た頃が秋で、今は冬……春が近くなってきた頃だ。ちょうど、俺がもともといたところではなぜか毎年雪が降ってくる頃でもある(作者注:大体二月ごろだと思ってください)。
話を戻す。
こんなに寒いと何かあったかいものが飲みたくなるな……。
毎日のように肉を食べているが、そろそろ飽きてくるところだ。近くに何かあればな……。
そう思って前を見てみると。
川だ!
「おい、ここに川があるぜ!」
「だから?」
「釣りでもしようぜ!」
「いいね!」
アリスは同意。しかし。
『断る(です)』
チェシャとラビは断った。
「何でだ?」
「創作意欲が止まらなくて……」
「描きたい! 早く書きたいのぉ!」
ラビはともかく、チェシャ。その言い方は……まあ、気にしてはいけないな。
「でも、ラビ。なに作っているんだ?」
「小説です」
「へえ、チェシャは何だ?」
「マンガ~」
「ほう、二人ともどんなの描いているんだ?」
『こんなので~す!』
まず、ラビ。
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【百合の花園】
彼女らは、今日もとある宿で秘密の密会をする。
「ねえ、今日も……やる?」
「ええ、もちろん。一緒に気持ちよくなろ? ……ほら❤」
「んっ……。大好きっ……」
少女達は今日も絡み合う。
布団の上で、いまだ幼さの残る、しかし確かな雌の喘ぎ声をこぼしながら――。
~~~~~~~~~~
百合官能小説か……。
題名からして18禁だ。まだほんの書き出しだがなんとなくわかる。
百合Hを題材にしてるのか……。
「そこから甘くとろける少女達の睦事、しかし、彼女らには秘密があって……というストーリーを想定しています」
「すっかり向こうの世界に染まってしまったな……。俺は今軽く引いてるぞ……」
「次は私のも~……みてぇぇぇ」
なんかのばす音のニュアンスが違う!
チェシャはそんなふうに言いながら、裸の男が抱き合っているカラー絵の表紙を押し付けてきた!
~~~~~~~~~~
【甘すぎる! vol.2】
(優しそうに微笑む黒髪の少年と少し困った顔の白髪の少年が裸で抱き合っている)
黒髪の少年「言っただろ、もうお前以外は愛せないって」
白髪の少年「え…」
黒髪の少年「もう、絶対にはなさねぇから」
白髪の少年「じ、ジュン…くん…」
(そのままベットイン。このあとめちゃくちゃ×××(以下自主規制)
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ここで本を閉じた。
なんて濃いボーイズのラブ。確かに甘すぎる。
俺とラビを題材にしているようだ。俺の口から猛烈な勢いでエクトプラズムが出ている。気がする。
駄目だこの腐った何かどうにかしないと!
「どうだった~?」
「ヤヴァイ、吐きそう」
「大丈夫~? 甘すぎた~?」
「いろいろとまずかった」
「あ、そう」
とりあえず、現実逃避のために話を戻すか。
目の前にある川。どうするか。
釣りだ!
というところまでは考えたと思う。
さて、馬車を止めてもらおう。
**********
さて。みんなで仲良く釣りである……と、言っても、ラビとチェシャ、あとアリスは来ていないのだが。
ラビとチェシャはさっき言った通り。
アリスは筋肉痛で動けなかった。
と、いうことで。
釣り中である、が。
「釣れないな……」
なぜか。ふと横を見てみると……
「わーい、大漁だー!」
「これが大悪魔の実力よ!」
「すごーい!」
リリスとノアのペアがすごい釣ってた。
……魔法でも使ったか?
これでは釣れるはずもあるまい。隣で、昔テレビで見たカツオかなんかの一本釣りのごとく大量に釣られていたら、魚がいなくなってしまう。
「なあ、ジュンヤ」
「何ですか、カイさん」
「不漁だな」
「そうですね」
まあ、何もする事がなさ過ぎて暇だもんな。優秀すぎる後輩が無双していて辛い。
下手なチートよりもチートめいた壊れキャラが仲間にいるとか、自分の存在意義がどこかに行きそうで辛いわ。
まあ、それが俺だからな。脇役程度の能力しか持たない男に主人公やらせるラノベだもんな。これって。
メタ発言はともかく。
その日の夕食は、美味しい焼き魚であった。
ちなみに全部リリスとノアが釣ったものでした。
今回俺は何をしたかったんだろう。
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