第66話 驚愕、そして再びの決断。
ここはだれ? わたしはどこ? なにいってるの?
……はっ! いま何をしてた!? そもそもここはどこだ!?
ああ、町長カイの家の客室のベッドか。でも一体なにがあったんだ?
俺の横に寝転がっているアリスの心配そうな顔が見えた。
……3秒ぐらいして、事の深刻さに気づいて、顔が赤くなってしまう。
(ちょっと待て、何で真横にアリスちゃんがいる? そしてなぜ一緒の布団に入っている? え、今どういう状況? いや嬉しいけど! めっちゃ嬉しいけど! でもっ! やっぱり恥ずかしぃぃぃ――!)
俺が目を開けたことに気付くと、アリスちゃんは顔を真っ赤にして言う。
「べべべべっ、別に、一緒にベッドに入るとかに憧れて、あわよくばエッチなことしてみたいな~とか思って入ったわけじゃないんだからね! ただちょっと心配だから一緒に寝ようと思っただけなんだから! 勘違いしないでよ!」
誰もそんな勘違いはしていない。……していない……はずなのにそんなに慌てているということは、そんなことを考えていたんだな、アリスちゃんは。変態ちゃんかよ可愛いな。わざわざツンデレみたいに言う必要無いんだぞ。まあ、かわいいからいいか。
しかし、心配していたのは本当だったらしい。かわいい顔して、こんなことを言ってきた。
「でも、おかしくなったり、気絶してずっと寝ていたり、本当に心配してたんだからね。もうっ、そんなに心配かけないでよ……。……ドキドキが、止まらないじゃない……」
なにこれ可愛い。ツンデレのテンプレか! やべえ、すっごく萌える!
……でも、本当に心配してくれてたんだな。
「ありがとう。心配してくれて。俺はもう大丈夫だよ」
俺は感謝を述べた。
「どういたしまして。安心したよ。……また何かあったら言ってね。いつでも相談に乗るから」
最高の笑顔でアリスは言った。生きててよかった(いろんな意味で)!
**********
――ちなみに、寝る前、アリスはこんなことをしていた。
(ジュンヤくんの寝顔もかっこいいな~! 一緒のベッドに入るぐらいだったらいいよね!? それだけだったら別に犯罪にはならないはずだし! どきどきするなぁ……。ついでにエッチなこともしてみたいかも……。…………はっ! 駄目駄目、そんなこと考えちゃ! エッチな子だと思われたらどうするの! ……でも、このぐらいだったらいいよね。は、恥ずかしいけど……大好き!)
アリスは、寝ている純也のほほに優しくキスをした。
(はうぅぅぅ……。やっぱり恥ずかしいよぉ……。でもでもっ、とってもうれしかったの! 恥ずかしかったけど、ジュンヤくんとつながったような気持ちになったの! もっと一緒にいたいの……。ジュンヤくん、このまま一緒に寝てもいい? ……寝てるから答えられないんだった。…………じゃあ、私も一緒に寝るよ。おやすみ。大好き、ジュンヤくん!)
寝る前に、アリスは思い出した。
(そういえば、少し前にファイさんが恋の話をしてたけど、もしかして、このドキドキする気持ちって……)
アリスの意識は、その答えを出し切る前に落ちてしまった。
**********
話は今に戻る。
それから、俺はみんなが待っているリビングへといった。そして、俺の意識が飛んでいた間の話を聞いた。
要約すると、こうなる。
まず、俺がここまで自力で帰ってきたが、そのときにはなぜか頭がおかしくなったように笑っていた。なに訊いても「あはははは」で答えていたという。どう考えても頭がおかしくなっていたようだ。
それから3時間ほど経つと、急に苦しがって倒れこんだ。すぐに客室のベッドに寝かせた。それから、アリスだけがその部屋に残って面倒を見ていた。ということだったらしい。
ちなみに、ここに来るまでの間に何があったのかは思い出せない。思い出そうとするとなぜか思考が停止する。
あ、断片だけはどうにか思い出せた。え~と、ユウがあらわれて、黒いオーラにつかまって――ここまでは覚えていた――、肉塊が飛び散って、ぐちゃぐちゃの肉片をユウが回復していて、ハーゲンが逃げて、さっき気がつけばここにいた。なるほど、わからん。
みんなにこのことを説明すると、呆れられた。そりゃそうじゃ。
とりあえず、リリスが無事だったなら大丈夫だ。とりあえずユウにひどいことをされたみたいだから、これに懲りたらもう襲ってこないはずだ。ひとまず安心。
「で、これからどうする?」
「どういうことだ? リリス」
俺が聞くと、こう答えた。
「私は旅に出る。お姉ちゃんとユウにはもう話したのだが、ここが知られてしまった以上は逃げなければならない。この町が危険にさらされるのはいやなんだ。だから、ここを離れなければいけないのだ。それについてくるか?」
どうしようか。正直言って、旅には憧れていた。冒険の旅ってものすごくかっこよさそうじゃないか。しかし、そういうことには危険が付き物。この前のアレーの町のときだってそうだった。あそこで何度死ぬ思いをしたことか。まあ、結果として心強い友人ができたことも事実だが。あと、この町を好きな自分がいる。少なくとも決して嫌いではない。
憧れか、身の安全か。新たな発見か、安定した視点か。答えは決まっている。
「俺は一緒に行くよ」
以前の俺であれば、間違いなくこの町にとどまっていただろう。しかし、今は違う。さまざまな経験をして、もっといろんなことを知りたいと思った。この世界のことや、まだ知らない魔法、この世界の技術。それらをもっと知りたい。あと、ついでに神様からの頼まれごともあるし。
「私も行くよ~。きみのこと、もっと知りたいし~」
「僕もです(チェシャのことをやさしく見つめながら)」
「な~に~? 私の顔に何かついてる~?」
「い、いえ、ナンデモアリマセンヨ? あはははは」
チェシャとラビも答えた。
「もちろん、私も行く。リリスは悪魔であっても私の大切な妹には変わりないから」
「……お姉ちゃん……!」
アリスも行くようだ。
「俺たちも行くぜ。ちょうど、王都に用事があったんだ。町のこともあるからそこまでしか付いてこれないんだけどな。そうだろ、ファイ」
「うん。最後まで一緒に居られないのは残念だけど、いつでも帰ってこられるものね」
「ああ、帰ることもできるさ。まあ、長居はできないけどな」
カイとファイも、途中までだが一緒に行けるらしい。
「ちなみに、ユウも行くといっていたぞ。もうひとつの人格をある程度制御できるようになりたいそうだ。確かにあれが出てこられたら困るもんな」
リリスが言った。ユウも行くのか。
「さあ次の目的地は、この国の王都にしよう! 準備もあるから、三日後に出発で良いか?」
リリスの宣言に、全員がうなずいた。
「では、三日後にここで集合しよう! 解散!」
いつの間にリリスが仕切っていたのか知らないが、なぜか彼女が号令をかけた。そこは気にしたら負けなのかもしれないが。
とりあえず、今日は夕食を食べるために、ギルドの酒場に向かったのだった。
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