第64話 みんなの決意と、急襲の悪魔

 三人で話しながらみんなを待った(チェシャはその間ずっと意味深な微笑を浮かべていた)。しばらくするとほかのメンバーも集まり、最終的に全員集合した。

「さて、昨日のことだが、みんなはどうする?」

 最初に答えたのはチェシャだった。

「……私は、リリスちゃんの役に立ちたいな~。神様から許可をもらったし。何より、大事な友達なんだもん」

「……僕もそうするよ。困った人は、見過ごせないから」

 ラビも同意する。

「私も。大事な妹のためだったら、何でもするよ」

 次にアリスが。

「俺もだ。悪魔だったとしてもこの町の住民。だから守ってやらねぇと、町長失格だ」

「あたしもよ。か弱い女の子を守るのはあたしたち大人の義務でもあるもの」

 カイとファイも。そして、ユウも。

「僕も同意。子分がいろいろとお世話になったみたいだから、その恩返し」

 俺も、答えた。

「俺も、力を貸すよ。可愛い女の子が殺されかかっているのに無視なんてできないからね。こんなことをするやつは、俺も許せないから」


「みんな、ありがとう!」


 リリスは感謝した。微笑みながら。

 その微笑に、俺は決意してよかったと思った。その瞬間である。

――ボゴォォォォン

 近くで爆発音が聞こえたのは。

「なんだ!?」

 俺たちは戸惑う。その中、ひとりだけ冷静になっているユウが、こう言った。

「この魔力反応は……昨日のハーゲンという悪魔か」

「は!? どういうことだ!?」

 リリスが説明する。

「みんな、悪魔っていうのは、ゴキブリ並みにしぶとい存在だったりするのだ。あの攻撃では倒れない。せいぜい気絶する程度なのだ。後日改めて止めを刺そうと思っていたが、こんなにも早く復活するとは。あのクソジジイ、しぶといやつめ……」

「あ、俺の索敵範囲内にも入ってきた……って早っ! 時速60キロぐらいか!? こんなに早い物、この世界だと見たことねえ!」

 俺は魔力感知スキルを活用して索敵もできるが、それは、電車と同じぐらいの速さでこちらに迫ってきていた。移動手段は馬車程度のこの世界だと、途方も無く速いスピード。恐ろしい。

「やべえ、あっという間にこんなに近くまで来た! もう逃げられねえ!」

「みんな、私を守ってくれ!」

 ちょっ……待って……もう来てる!? まだいろいろと準備ができてない!

 ――――ズドォォォォォォン

 そいつは、壁を盛大に破壊して、部屋に突入してきた。

「はははははは!リリスはもらっていくぞ! ……なんだ、抵抗するのですか、リリス様。今の私には威圧は効かないと言うのに」

 リリスは、かろうじてあいつを抑えていた。

「ああ、抵抗するさ。私の大切な仲間たちを傷つけさせはしない!」


「はい、皆殺しはさすがにあきらめましたよ。あなたがおとなしくついてくれば、それでいいのです。そうすれば、あなたの大切な仲間たちを傷つけないと約束しましょう。あなたが何も言わずついてくればの話ですが」


「……貴様っ……!」


 リリスは悩んでいるようだ。仲間を取るか、自分を取るか。仲間を取れば、自分は奴隷にされ、自由を奪われ、やがて殺される。自分を取れば、仲間が今ここで全員殺される。

 結果、リリスはハーゲンのほうに一歩踏み出す。

「ほう、あなたにしてはいい選択です。自分を犠牲にして仲間を守るとは」

「……仕方ないだろう。自分のせいで仲間を殺すのはもうこりごりなんだ。かつて、自分のせいで数多くの者を犠牲にしたからな」

「そうですねぇ。全く、あなたが言い出したわがままのせいでこうなったのですから。“裏切り者どもを守りたい”だなどとあほなことを言ったから……。さて、参りましょう、リリス様。魔界へ」


「させねえよ」


 俺は立ち上がった。無事に装備が完了したのだ。

「嫌がる女の子を人質持ち出して無理矢理連れて帰るなんて、お前とんでもねえクズだな。さすがに堪忍袋の緒が切れたぞ。リリス! 俺たちは、必ずお前を救い出す。絶対!」

「何ですか、あなたは……ああ、昨日の馬鹿な外道少年ですか。あなたのやり口には驚かされましたよ。あれはひどすぎる」

「ああ、あのやり方は少しかっこ悪かったかもな。でも、お前が今やっていることは、とても許せねえ」

「あなたが言うことですか」

 昨日の出来事をよほど根に持っているらしい。確かに俺があの方法で倒されたとしたらむしろぶちぎれるな。でも、この悪魔は――

「しかし、私に一度ならず二度までも立ちはだかるとは。いいでしょう。私からリリス様を取り返して見せるがいい! 今度こそ、私も全力で行くぞ!」

「ああ、望むところだ! 行くぞ、みんな!」

 いつのまにか全員が装備を終えていた。臨戦態勢。

 戦いが始まった。


 **********


 ちなみに、この家の持ち主は。

「ん? 何じゃ? ここで何か揉め事かのう。まあよい。この家は自動修復されるからのう。さて、もう一眠り……」

 寝てた。

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