第49話 首長竜 後編

 二人とも怒っていたわけではなく、すぐに許してもらえた。

 そして、作戦会議である。

「ライケンも遠距離攻撃できたのか」

「ああ、操剣のつるぎは便利だぜ。飛ばした剣を直接操れるからな」

 だから、ピンポイントで高速移動する的を狙うことができるのだ。

「それで、二人で頭を直接遠距離攻撃して倒そうと思ったんだけど」

「いや、俺も魔法攻撃をしたら避けられた。頭を狙うのは現実的じゃないと思う。確実に攻撃を当てられるなら別だけど」

 ライケンは可能だが、俺とフォリッジはできる確証がない。むしろ、それをできる人のほうが少ないのだ。

「でも、俺にいい作戦案がある。どうだ?」

「「聞かせてくれ」」

 二人は即答だった。


**********


 首長竜は、少年たちを見下ろしていた。

 彼らはなにやら固まって話していた。

 しばらくして、向こうに行って彼らを襲おう、と判断したとたんに、その少年たちは動き始めた。

 一人がこちらに向かってくる。そして、首の前まで来て、

「オラぁ、向かって来いよぉ!びびってんのか!?コラァ!」

 何か喚いていた。

 よく見れば、さっき襲ってきたからなんとなくぶっ飛ばしておいた黒髪の少年じゃないか。よし、倒そう。

 動物並の知能しか持たないこの首長竜は、目の前の障害に気を取られてしまうと、周りの様子がわからなくなってしまう。それゆえにほかの脅威に気付けないのだ。

 少年は足を攻撃し始めた。何発も高速で鋭い攻撃を当ててくる。しかし、首長竜は全くひるむことはなかった。このくらいの攻撃なら慣れてしまうほど受けている。

 そもそも、この程度の攻撃は硬いうろこがすべて守ってしまう。さすがはドラゴンと間違われるだけはある。

 しかし、彼の狙いは、ダメージを与えることだけではなかった。

 腹に矢が一本飛んできた。その部分のうろこは比較的薄くて柔らかい。矢はうろこを貫いて、肉に刺さった。

 それだけならほとんど何も問題はない。しかし、それだけではなかった。

 矢から電撃がほとばしった。

 未知の痛みに首長竜は唸って、その場から逃げようとした。だが、動けなかった。

 目の前に、首の前に、剣が迫ってくる。

 首長竜は、抵抗もできずに、その長い首と顔、腹や尻尾を斬られ、射られて、動けるようになるころにはところどころに重い傷を負っていた。

 首長竜は倒れた。そのとき死を悟った。そして、最期の抵抗に、炎ブレスを放った。


**********


「何だ!?」

 ライケンが驚いたように言った。

 キクロプスが放った炎ブレスは、森の木を焼き、それが倒れ、さらに倒れた先にあった木が燃える、という風に延焼していっていた。

「あいつは森を燃やすつもりだ!すぐに逃げないと!」

「何だ、そういうことか。これを持ってきていてよかったぜ」

 ライケンは、フォリッジの忠告を聞かず、二本の剣のうち赤いほうを鞘にしまい、つぶやいた。

「どういうことだ!?」

 ライケンはそれを聞かず、青い、龍の彫刻が入った剣を前に掲げ、叫ぶ。


「青龍よ!契約に従い、我が目の前の厄災を凍らせよ!」


 剣から冷気が噴き出し、それが辺り一面を包んだ。

 炎は冷気に消され、森の木は凍る。

 その青い龍のような冷気はすぐに去って行ったが、その影響は多かった。

 森の土には霜柱が立ち、こげた木が凍っていて、気温も息が白くなるほど下がった。

「「・・・寒い」」

 俺とフォリッジはそうつぶやく。

「だって、炎を凍らせちまえば、森はこれ以上燃えずに済むだろ?」

 確かにそうだな。こっちにもダメージが入りそうなほど寒いけど。

「で、やつは?」

「まだ生きているみたいだよ。止めを刺してきなよ」

 フォリッジが言った。

 この作戦は、俺のレベル上げも目的のひとつだったのだ。

「わかった」

 そして、キクロプスの元へ行き、その頭に剣を突き立てた。

 力が湧く感覚。それは一気にレベルが上がる感覚。久々に感じたその感覚に違和感を覚えて、冒険者カードを見ると、『Lv.40』の文字が。俺は一気にレベルが4も上がっていた。

 これで、どうにかあれを習得できる。

 三人はクエストを達成して、さらにはダンジョンの階層ボス撃破の糸口をつかみ、町へと帰っていくのだった。

 

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