第48話 首長竜 前編

 ―――翌日

 腕試しということで、キクロプス討伐クエストに出かけた。

 以前断ったドワーフのおじさんの依頼である。

 ちなみに、報酬はいい武器素材が入ったらしいので、それで手を打った。

 正直気乗りしなかったのだが、メンバーの戦力を知っておきたいからとフォリッジが提案し、それもそうだ、二刀流の魔法剣士の実力を知りたいと、ライケンが乗っかり、それに流されて俺もうなずいて、今に至る。

 確かに、そういえばライケンが何で剣を三本も持っているのか気になるし。

 ここでウルフが現れた。

 ウルフとは、いわゆるただの狼だ。ウルヴェンの下位互換とも言われている。

 しかし、群れで動くことが多いため、そこそこに厄介なやつである。

 戦闘開始。

 まず、俺がウルフのうち一体に突撃。狼の頭に右手の剣を突き刺す。

 しかし、それでも死なないようだったので、もう片方の剣で狼の首を切り裂いた。

 成功。狼の首から下は倒れた。

 死体処理は後にして、後に残った4体のウルフに向けて剣を構える。

「へ~。二刀流ってそうやって戦うんだ。面白れぇ。俺も負けてられねぇな」

 ライケンは俺の戦い方に興味を持ったようだ。

 さて、そんな彼はどうやって戦うのだろうか。

 ライケンは、「このくらいだったらこれだけで良いか・・・」と意味深なことを言い、両腰と背中に装備している3本の剣のうち、左腰の片手剣を抜いた。

 それは、赤い、龍の彫刻が入った、美しい剣。

 それを前にかざし、彼は叫んだ。


「赤龍よ!契約に従い、我が目の前の障害を焼き払え!!」


 その瞬間、剣から火炎が噴き出した。

 そして、ウルフたちを包み込む。

 それはまるで赤い龍のように―――。


 約5秒後。その炎は消え、後に残ったのはこんがり焼けた狼肉が五つ。美味しそうだ。

 俺は、唖然とした。

 今のはなんだ!?

 剣から火が出て・・・ウルフを美味しそうな肉に・・・・・・何が起こったんだ!?

 今の瞬間に起こった出来事をよく理解できない。

 そこで、フォリッジが解説する。

「どうやら、ライケンは魔剣士だったみたいだね。魔剣ってすごいね」

「・・・確かに」

 そこへ、素材採取を済ませたライケンが戻った。

「二人で何の話してるんだ?」

「魔剣士もすごいね、ってことを話してた」

「おお、そうか」

「じゃあ、行こうか」

 そういって、俺たちは草原を進んでいった。


**********


 こうして森にたどり着いた俺たちを待っていたのは、巨大な首長竜だった。

 討伐対象のキクロプスとはあれのことだろう。早速、俺は剣を抜いて、構える。

 正直言って怖い。巨大な肉体は俺に対して本能からの恐怖を呼び覚ます。

 しかし、それを倒すのが俺たちの仕事だ。冒険者は死と隣り合わせの危険な職業なのだ。

 さて、これをどう調理してやろうか・・・頭が弱点だと聞かされたけど、あれだけ大きければ頭部に刃は届かない。・・・魔法を使うか。

 狙いを定めて、覚えておいたけど使い道がなかったこの魔法を撃つ。

光矢エナジー・ボルト

 その名のとおり、魔力エネルギーを固めて矢として打ち出す魔法だ。隕石を出すよりも消費魔力が少ないが、その分火力もそんなにあるわけではない。なので、牽制として撃ったのだが。

 かわされた。

 首が長くて遠距離攻撃を当てにくい。

 相手に気付かれた。交戦開始。

 俺はこっちに突進してくるキクロプスを華麗にかわし、後ろに回りこむ。

 しかし、後ろにはこれまた巨大な尻尾が生えていて、その尻尾は強力な武器となりうる。それが横からぶんっと音を立てて迫ってきた。

 避けようとするものの、避けきれずに、それが当てられる。そして、ぶっ飛ばされた。

 俺は近くの地面に頭から突っ込んだ。

 空中でとっさに回復してなければ死ぬところだった。

 地面から抜け出し、仲間がいたことを思い出す。

 何をしているのだろうか・・・?


 ―――そのころ、フォリッジとライケンは、茂みの中で作戦会議をしていた。

「あいつ、一人で行っちゃったけど、大丈夫なのか?」

「というか、僕たちが止まったことに気付いていなかっただけみたいだけどね。まぁ、あの実力だし、死ぬことはないと思うよ」

「・・・ぶっ飛ばされてるように見えるけど?」

「・・・大丈夫・・・・・だと思うよ」

「・・・・・・。」

「・・・さて、あれにどうやって攻め込もうか」

「あ、話を強引に変えた」

「頭が弱点だからそこを重点的に狙い打ちたいんだけど、あれほど長かったら絶対避けられるしね。どうしよう」

「確かにな。とりあえず攻め込むことならできるけど」

「え!?どういう方法?」

「剣を飛ばすのさ」

 そういって、ライケンは両腰の剣を引き抜き、なんと、それを投げた。そして、すかさず背中の剣を抜いて、構えた。

 すると、不思議なことに、投げた二本の剣がぴたっと空中に止まった。

 フォリッジは目の前の超常現象に驚いている。

 ライケンが説明する。

「これは“操剣のつるぎ”といってな、近くにある、魔力を持った剣を何本でも操れるんだ。割と遠くから攻撃できるからすごく便利なんだ」

「・・・・・魔剣ってほんとにすごい」

 そうして、二人で遠距離攻撃をすることに決定した・・・・・と思いきや、純也が猛ダッシュで近づいてきた。

 そして、そのままスライディング土下座で謝ってきた。

「忘れていてすみませんでした!」

「とりあえず顔を上げろ」


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