転――迷宮は深く、仲間は少なく……。
第47話 仲間集め
――翌日 朝 アレー冒険者ギルド
俺は仲間集めに取り掛かった。
・・・・・取り掛かったはいいが、早速難航していた。
実は、現実世界では中学まで完全なるいじめられぼっち枠を獲得していた俺である。
高校ではそこから抜けられたものの、その環境は俺に後遺症として、コミュニケーション能力低下―――初対面の人に自分から話しかけられないという呪いのような性質を残しやがった!
畜生っ!何で話しかけようとするとものすごい緊張して口が開けなくなるんだ!
物を買ったりするのは平気なのにな・・・。
エンテで友達ができたのだって向こうから話しかけてもらったからなんだよな。それが無ければ完全にぼっちだったからな。
自分で思ったよりもヘタレだな、俺。
とりあえず、そのせいで仲間ができないのだ。
・・・あ。窓口に『臨時パーティーメンバー募集案内』の文字が!
助かるっ!よくわからんけど。
俺はその窓口に行き、その『臨時パーティーメンバー募集案内』サービスの概要を聞いた。
それによると、『臨時パーティーメンバー募集案内』サービスとは、パーティーを組みたい冒険者が登録をし、登録された冒険者の中からギルドの人が冒険者に紹介したり、臨時でパーティーを組ませたりするらしい。
まさに今一番あってほしいと思ったサービスである。
何でも、最近冒険者ギルド本部で検討され、先月からアレーの冒険者ギルドで試験運用されている新しいサービスらしい。
なので、まだ登録者数は少ないのだが。
「あなたの冒険者カードを見せてください」
ギルドのお姉さんが優しく言ってくる。俺はそれに応じる。
「レベル36の魔法剣士ですか・・・・・・ょゎ」
・・・・・弱いとか聞こえた気がするが先に進めるとしよう。
「では、今回のパーティー結成の目的は何ですか」
「はい、ダンジョンの階層ボス撃破のためです」
「はっ!?・・・いそうですかわかりました何かパーティーメンバーでご要望とかございますか」
この人、今すごい動揺したよな。まあそれは措いておいて。
「特にありません」
「は、はあ・・・・・」
なんだかんだで登録してから5分ほど後、早くもお呼び出しがかかった。紹介する人が決まったらしい。
窓口に向かい、その人の特徴などを教えてもらう。
紹介されたのは二人。
一人は赤髪、黒いバンダナ、背中に両手剣、腰に片手剣×2、イケメン。
もう一人は青い長髪、巨大な弓、長身、端正な顔立ちの美青年。
無論、両方男性。そして、年齢は俺と大体同じくらいだという。
くそっ、女性と出会えればよかったのにっ!
酒場に向かい、その人を探すと、一瞬で見つかった。
うわーかっこいー(無表情)
酒場のテーブルのうちひとつで、仲の良さそうなイケメン二人が談笑している。
特徴とあっている。この二人で間違いない。
すごく苦手なシチュエーション来たー・・・。
仲よさそうに話す二人に割り込んでいかなくてはならない。
しばらく迷ってから、勇気を出して話しかけた。
「すっ、すすすっ、すすっ、すみません」
「ん?何だ?」
赤髪の少年が気さくそうに返す。
(大丈夫だ俺、何とかなる。大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫)
「ほっ、本日、パーティーメンバー紹介で紹介されたものでございますっ!」
「おお、そうか。よろしくな」
よし、何とかなった!
**********
それから、俺たちは自己紹介をして打ち解けた。
赤い髪のほうはライケン、青い髪のほうはフォリッジというらしい。
第一印象は、ライケンは熱血バカ、フォリッジは頭のいいインテリタイプという感じで、実際に話してみた感じからもそれで間違いないだろう。
さて、作戦会議である。
「まず、話を整理しよう。キミはそこのダンジョンの第16階層ボスに挑んで、逃げ帰った。それでいいんだよね」
フォリッジの言葉にこくり、と首肯。
「そいつが強すぎて、全く歯が立たなかったんだな。ほとんどの攻撃は防がれちまって、当たってもダメージを受けねえ。と」
ライケンの言葉にまたもや首肯。
「でも、妙だったのは、俺が攻撃しても防いでこなかったことです。しかも、あいつ、自分から堂々と攻撃を仕掛けてこなかったんですよ。俺の隙を狙って何発か打たれましたけど、すべてかわしてしまいました。どういうことなんですかね」
俺の疑問に、フォリッジが答えた。
「恐らく、君を疲弊させて、食べようとしてたんだよ。オーガ種は大体人肉を主に食べるんだ。攻撃をしてこなかったのは、たぶん自分の体力や魔力を温存しておくためだね」
確かにもう少し戦っていたら、疲れ果てて動けなくなっていたかもしれないな。それを狙っていたとすれば、ものすごく恐ろしいことだ。
「・・・そんなのをどうやって倒せばいいんだ」
ここまで頭がよく、体力もある、いろいろな意味で強い敵を倒す術は、もっていない。
ついに俺のダンジョン探索は詰んでしまったのだろうか。
まだほとんど言い戦利品なんてないのに?まして、
そんなのはいやだ。
考えろ、俺。あれも生物である以上、何らかの弱点があるはずだ。もしくは戦い方や倒し方のひとつぐらいあったっておかしくない。
「・・・・・・自分の手に負えないやつを倒す術ならあるよ」
フォリッジが口を開いた。
「いや、正確には倒すわけではないし、成功率の低さとかかる手間の割には普通に倒すよりもメリットが少ない。だから、できれば出したくなかったんだけど・・・・・・これ以上、犠牲は出したくないから」
そうか。リスクの割にリターンが少ないということか。いつもならもっとリターンが大きいほうを選ぶけど・・・犠牲を出したくないのは俺も同じなんだ。
俺は、少しだけ考えてから、返答した。
「―――わかった。それを詳しく聞かせてくれ」
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