第1部 第4章 素材集め編

起――こうして俺はダンジョンに行くことになった。

第41話 魔力が足りねぇ!!

 ワンダーランドのメンバーとは、一緒に狩に行く間柄となった。

 無論、毎回ではなく、俺が一人で暇つぶしがてら行くこともあれば、ワンダーランドの方も今までどおり単独で行っていたりもする。

 ただ、定期的に一緒に狩をして、絆を深め合ったりするのだ。

 まさしく、冒険者の絆である。

 しかし、俺には一つ、大きな弱点を持っていた。

 家でクエストの振り返りをして、突如嘆いた。


「魔力が足りねぇっ!!」


「いきなりどうしたんだ?」

 だって、よく考えると、俺は隕石メテオという高火力魔法を持っている。気配を察知される前にそれを使えば圧倒的に戦闘は楽になる。それがいつもの手だ。

 しかし、それは、高火力ゆえに魔力消費も多い。実に、40もの魔力を使ってしまうのだ。それは俺の保有魔力の約半分に匹敵する。

 さらに、俺は魔法剣士だ。魔法や剣技で、俺に足りない攻撃力を補う形を取っている。そのため、40の魔力などすぐに使い果たしてしまう。

 そして、終わったら終わったで、魔物と遭い、戦闘することもある。

 そのため、クエスト終わりには魔力切れでぐったりしているのが常だった。

 魔力ポーションもあるが、ただではない。ゆえに出費もかさむ。

 メテオ攻撃を後何発か打てれば、もっとクエストは楽にすむかもしれない。魔力切れで戦えなくなることが無くなれば、もっとましに戦えるかもしれない。

 後、日頃の火力不足も否めない。

 俺の魔法は、隕石メテオを除いて、相手にダメージを与えることも望めない、肉体強化や、攻撃補助などの魔法だ。せめて、火花スパーク魔法でダメージを与えられればいいのだが、それよりも相手を麻痺させることに特化されているらしく、魔法強化チャージ魔法も、魔法威力増加スキルも、そちらに振られているようだ。

 今日は、一人でクエストに行ったが、帰りの道中、魔物に襲われて命からがら逃げ出した。どうにかして魔物を倒したはいいものの、回復魔法を使えず、クエスト報告をした後、医者に行った。

 幸い、大事には至っておらず、肩に包帯を巻いてもらったが、まだ傷が痛む。回復魔法が使えれば、そこまでひどくならずに、痛みもすぐに引いたのに。

 そこで、先ほどの「魔力が足りねぇっ!!」につながるわけだ。

「何か、魔力を増やすアイテムがあればいいのに・・・」

「ああ、それなら、これがいいんじゃないか」

 近くにいたマッチョウさんが、引き出しから出したのは、紙だった。

「これは何ですか?」

「使用者の魔力を大幅に引き上げる、魔力増強の杖のレシピだ。これを鍛冶屋のおっさんに渡せば、作ってくれるだろう」

 ・・・ありがとうございます。


 ********************


 待ち受けていたのは、辛い現実だった。

「えっ、素材は自分で持って来いって!?」

「当たり前だろうが」

 当たり前といえば当たり前なのだが。


「にしても、これ、難易度高すぎでしょ!!」


 魔獣の骨×10から始まり、ミスリル鋼のインゴット×5、くれないの魔石×2、世界樹の葉である。

 魔獣の骨は、ウルヴェンから取れるからいいものの、魔獣の骨は、剥ぎ取るのが難しいため、一体から二つから三つしか出ない希少なものでもある。

 続いて、ミスリル鋼のインゴットだが、ミスリル自体希少な金属で、さらに、それを加工し金属素材インゴットにした物を5つも持って来いと言うのだ。

 さらに、紅の魔石。これもどこかに採取に行かなければならない。しかも、超希少な魔石で、売れば、10万Gは下回らず、物好きな人ならばその10倍出すこともあるほどの価値を持つ。

 そして、世界樹の葉。この世界の中心にあるという木、世界樹ユグドラシル。その葉っぱである。ありとあらゆる傷を完全に治し、魔力を戻し、さらには全ステータス強化も付いた、いわずと知れた最高最強の回復アイテムである。

 どれもこれも入手困難なものばかりではないか!

「確かにこりゃあ面倒だ。でも、まぁ、どうにかなるものばっかじゃねぇか。俺が承ったものの中にゃあるかどうかもわからねぇものを持って来いって書いてあったものもあったからなぁ。それに比べりゃまだましさ」

 ああ、うん。それに比べればまだましだ。

「というか、そもそもおっさん何者ですか!?」

「ただのしがない鍛冶屋だ。ほかの何者でもねぇ」

 その割にはすげぇな!と思うことが多い人である。ゴブリン戦の時には一軍で重たいメイスを振り回してゴブリンを一掃してたのを見たし。

 それはともかく。

「これ、どこで手に入るんですか」

「ミスリルインゴットと世界樹の葉は市場で売っているからいい」

 売っているんだ・・・。

「そんで、問題は魔石だが・・・ああ、ダンジョンにならあるかもな。近くのといえば、アレーか。あそこなら魔獣もいるし」

「え~と、そこってどこですかね」

「ここから南に歩いて三日ほど、街道から平原を抜けて、隣の村からちょっと行った辺りだな」

 遠いな!と心の中で突っ込んでおいた。

「ちなみにほかの方法は?」

「あるにはあるが・・・危険かつ大変、行くのも取るのも大変だ。それだったらダンジョンに行った方がまだましさ」

「ありがとうございます」

「どーいたしまして」

 ダンジョンに行くことにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る