第28話 称号入手

 建物に入った俺たちを迎えたのは大きな歓声だった。

 ギルドのカウンターに立つと、ギルドのお姉さんが箱を持ってきて、

「この上にカードをおいてください」

 冒険者カードに称号の情報を書き込むマジックアイテムか。こう考えるとこの世界は魔法がだいぶ発達しているようだ。

「了解」

 といって、ユウが先に箱にカードを置いた。

 そして、糸で接続した、文字が書いてある板(多分コンピュータのキーボードのようなものだろう)の一際大きな枠(おそらくエンターキー)を押した。

 そうすると、箱に光る魔方陣が現れた。それはカードを包み込む。カードには文字が書かれていった。やがて魔方陣の光は薄れ、消えていった。その間10秒。

「ありがとう」といってユウはカードを取った。

 俺も、「お願いします」といって、箱にカードを置く。

 そして、エンターキー(?)が押され、魔方陣が出現。光が止まってからカードを取り出す。

 カードに新しく出現した“称号”の欄には二つの文字が書かれていた。

『称号

 ゴブリンキラー (ゴブリンを大量に殺したものに贈られる称号)

 上級剣士    (クエストに大きく貢献した剣士に贈られる称号)』

 礼を言って近くの席に着いたら、すごい勢いで質問攻めにされた。

「あれはどうやったの」「あんなにやるなんてキミは何者」「どこで生まれ育ったの」「親は誰」「家を教えて」etc.

 転校生の気持ちがわかった気がした。つらい。

 しばらく後、町長が前にたって話しを始めた。結構長い。

 そして話し終わると、なぜか俺に振られた。

 俺は仕方なく前に立ち、即興で話し始め「ちょっと待った――!!」

(え、誰? どういうこと?)

 疑問はヤンキー風の男が前に出てきたことで掻き消えた。

「おいてめぇ。何で俺を差し置いて“上級剣士”取ってんだよ。マグレじゃねぇのか?」

 実際、マグレなんですが。

 そんな俺のせりふも言わせずに男はわめき続ける。

「俺は100体近くも殺したんだぜ!?なのに貰えねぇとかいかれてんだろ!!てめぇはせいぜい50体前後だろ!?そうだろ!?」

 すみません50体の4倍近くは倒したんですが。そしてそこのニコニコしている人は一撃で俺の1.5倍近くも倒したのですが。

 返答を聞く間も無く男はしゃべり続ける。

「チョーシ乗ってんじゃねぇよ!!あ、そうだ。俺が見極めてやるよ。てめぇが称号を持つにふさわしいか。このデビシ様がなぁ!!!」

 おっと、えらいことになった。どうやら戦わなければならないらしい。

「さぁいくぜ!!」

 そういって、男――デビシは剣を出した。

 今からやるのか。

 このままでは俺が切られて終わるので、仕方なく、護身用に持ってきていた短剣を鞘に収めたまま出した。

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