第1部 第2.5章 ゴブリン大討伐・後日談編

第27話 後日談

 町の全冒険者を巻き込んだ大決戦は、犠牲を出さずに、人間側の勝利に終わった。

 見事、ゴブリンは全滅。親玉も、突如現れた悪魔憑きの狂戦士デモニック・バーサーカーにより滅ぼされた。

 森に逃げたゴブリンもほとんどが退治された。

 すべては終わった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「よし。報告書書き終わった。あとはこれをリザードマン便で届けてもらうだけだ」

 今は、ゴブリン大討伐の3日後。

 町長の家にて、称号授与式の準備がおこなわれるというので来たら、早く来てしまい、時間が来るまでカイと話しているのだが、

「本当に称号は俺でいいんですか?ほかの人だって活躍していたはずなのに」

「ジュンヤはものすごく謙虚だなぁ。あのゴブリンたちの群れの半分ぐらいはお前が倒したんだぞ。もっと誇れ」

「ほんとですか!?」

 俺は目を輝かせる。

「あぁ。あの爆破はすごかったぜ。死ぬかと思ったぜ」

「ここだけの話、俺も死に掛けました」

「そうか。そりゃぁそうだよな」

 人のよさそうに笑うカイに、俺は嬉しくて微笑む。

 というか、あれの破壊力すごすぎだろ。切り札として使おう。

「後、あの大きいやつ、2体も倒しただろ。お前がいなければたぶん犠牲者が出てたと思う。本当にありがとう」

「いや、そんな。ちょっと考えたら楽に殺せただけです。仲間が来るのがあと少し遅ければ死んでました。精神が。こちらこそ、ありがとうございました。」

 礼を交わし、互いに握手。

 ただ、カイは、俺に聞きたいことがあるらしい。

「そういえば、お前、あれは何だ」

「え、何のことですか」

「剣を二本使っていただろう。あれはどこで覚えた」

「自分で考えた二刀流剣術です」

 実は嘘だ。漫画やラノベにあこがれてやってみたら思いのほか使えたのでそのままやっただけなのだが。

「二刀流か・・・。普通の剣を二本使うというのはすごく画期的だ。よく思いついたなそんなこと」

 ・・・言えない。漫画やラノベにあこがれてやってみたら思いのほか使えたのでそのままやっただけなんて言えない・・・。

 とりあえずその場は笑いで濁しておいた。

 そして、話題を変えるついでに俺も聞きたいことを聞いておいた。

「そういえば、俺以外の称号授与者って誰なんですか」

「ユウだよ。あいつがいなければ絶対死んでたぜ。俺たち」

 そうだろうな。ユウは回復師ヒーラーとしての力がチートな転生者だからな。

「でも、なんだったんでしょうね、あれ」

「ああ、最後に見せたあれか。悪魔憑きの狂戦士デモニック・バーサーカー

「え、呼んだ?」

 振り向くと、いつの間にかユウがいた。

「「うわっ」」

「あはははは~」

 俺たちが驚いているのを見て喜ぶユウ。

「で、何話してたの?」

 カイが、

「お前って一体なんであんなことになったんだ」

「ああ、あれね。殺戮形態ジェノサイドモード

 ユウの話を簡潔にまとめた。

 以前言ったことは間違いなく、ただし、生前はリア充男子高校生で、通り魔と刺されて死に、チート能力の超魔力で半年前までそうだ。

 半年前、強力な魔術師に捕らえられ、そこで力に封印をかけられ、性格が変わり、その結果今のように超強力回復師ヒーラーになったという。

 しかし、元の力が強すぎたため、封印しきれず、HPが半分を切ると元の状態―――殺戮形態ジェノサイドモードに変化するらしい。

 それが悪魔憑きの狂戦士デモニック・バーサーカーの真相だったのだ。

「途中で悪魔も仲間にしちゃってさ。物騒な称号もいっぱいついちゃったんだよなぁ。あ~懐かしい」

 笑顔を全く持って崩さずに軽い調子でユウは語った。

 規格外すぎる。悪魔を仲間にするとか・・・やっぱりやべぇ。

「あ、仲間になった悪魔出そうか?人間に危害は加えないはずだよ。多分。きっと。恐らく。あるいは。」

 そういって手を前に突き出した。悪魔召喚をおこなおうとしているのか。

「必ずと言ってくれあとそもそも出すなぁぁぁ!」

 カイはシャウトツッコミをぶちかまし、悪魔出現を阻止した。

「え~。結構いいやつなのに」

 そうなんだ・・・。でもリスクを避けておくことにこしたことはない。

「ユウ、やめてくれ・・・。死にたくないんだ」

「はーい」

 ユウは(笑顔のまま)少し残念そうに、突き出していた手を下ろした。

「さてと。いよいよ称号授与式だ。心の準備は良いな」

「はい。大丈夫です」

「うん。大丈夫」

「よし。じゃあ冒険者ギルドにいくぞ。ああ、後、ジュンヤは念のためショートソードを持って行きな。多分お前に文句言ってくるやつがいるだろうから」

 そういって部屋を出て行くカイについていき、言いつけ通りに剣を持ち出し、大通りを横切って、向かいにある大きな建物に入った。

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