第29話 そして、戦う。

 戦いが始まった。とはいっても戦況は俺の防戦一方だ。

 攻撃したらいろいろとまずいことになったりしそうだ。

 なるべく攻撃せずに相手を弱らせる方法…………剣を使う…………攻撃じゃないか。駄目だ。ほかの方法…………魔法…………建物を破壊してしまう…………これも却下……いや、あるじゃないか! 建物を壊さずに相手の動きを止める方法!

 決まってから俺は迷わずカウンターのそばへ退避。右手を突き出し、魔力を一点に集中させ、

「スパーク!!」

 魔力を込めた低威力火花魔法は見事相手に命中。

 バチッ

 光が迸る。

「そんなの痛くも痒くもねぇよ! ばかかてめぇは!!」

 そんな事はわかっている。この魔法が与えるダメージはほんのわずか。しかし、そのほかの効果はしっかり効いているらしい。

「てめぇをボコッて大人のベテラン冒険者の恐ろしさを教えてやる……っ!? 体が動かねぇ!? てめぇ……何を……!」

 彼の体にはびりびりと電撃が迸っている。スタン状態になったようだ。

 よし、作戦成功。

「すみません。衛兵さん来てくださ~い」

 そういうと、ちょうどここにいたらしい衛兵が彼を担いで持っていった。

 ちなみに、俺も注意されるかと思ったら逆にものすごい歓声をもらった。そしてめっちゃ褒めちぎられた。

 俺は疲れたので、逃げるように建物から出て行って、平和になった――あるいは寂しくなった――森へと逃げていった。


 ここはやはり落ち着く。誰もいないし、空気も綺麗だ。

 俺は森の中の木を根元で切って作った切り株に腰掛けて落ち着いていた。

 褒められるのも悪くないが、静かな方が好きだ。

 あれはさすがに騒がしすぎる……。

 誰もいないと思ってぼーっとしていたら、追っ手が来たようだ。

 遠くから人の声が…………あれ、人か? しゃべっているのは人じゃなさそうだ……。

 人の言葉じゃない……まさにぎゃいぎゃいといったあれは……ゴブリン語だ!

 ゴブリンが現れた!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る