第21話 孤独と希望

 命の瀬戸際から這い上がってきたばかりとはいえ、今は戦場の最前線にいる戦士だ。

 立ち上がり、体を動かす。

 正常に動くことを確認し、駆け出す。

 どこだゴブキング! お前を殺せばすべてが終わるんだ!

 心の中で叫びながら両手の剣でゴブリンを切り刻む。

 走り続けた先で、大きなものにぶつかり、立ち止まった。キンコツゴブリンだ。

 自分より頭一つか二つ分高い身長と圧倒的な威圧感、大きな体と厳しい顔。それが、俺に恐れをもたらす。

 しかし、ここを突破しないと戦いは終わらない。

 俺は、すくむ足を奮い立たせ、戦闘を開始した。

 いつまでも終わらない戦い。俺の命だけが削られていく。攻撃を避けても、避けた先に攻撃が飛んでくる。突いてもはじき返され、切ったら皮膚が一枚切れるだけでその先の筋肉が切れない。左手の剣は盾に持ち替え、攻撃を防ごうとしていたが、それもわずか5回の攻撃でひしゃげて使い物にならなくなってしまった。

 孤独な戦い。頼れるものは何も無い。

 これまでとは違い、ユウが体力を回復してくれるため、命の危機にはさらされないが、その代わり、それがいつまでも続く。

 永遠の攻防。こいつを殺す方法も思いつかない。ただただ独りだった。


 助けがほしかった……仲間なんていない。仲間がほしかった……出来るわけが無い。いつかのことを思い出し、泣きそうになる。希望と現実の狭間、叶うはずの無い願いにゆれていたあの時。永遠の孤独を受け入れた振りをして、実は絶望に暮れていた、死をも夢見たあの時。命を捨ててもかまわないと思っていた。本当に大事なものも知らずに――今も知るはず無いが――生きる理由もなく、しかし、死にたくも無くて、ただ生きていた。今も同じだ、あの時と。結局俺の運命は孤独しかなかったのだ。

 俺の精神はもう風前の灯だった。魂は擦り切れていた。死ぬしかなかった。そのとき、俺の目の前に、


「待たせたな」


「さっきも言ったでしょ。あたしたちがいることを忘れないでって」


 希望が――仲間が現れた。


 俺は、一人ではなかったんだ。

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