第20話 辛い闘い

 ゴブリンが本当に多い。ユウの強力な支援魔法がかかっているとはいえ、つらすぎる。ゴブリンはほとんど一撃で倒せるものの、次から次へと湧いて出てくるため、精神的にもつらい。面倒くさくなったため、周りに人がいないことを確認し、大技を繰り出す。

隕石メテオ!」

 狙ったところに隕石が落ちる。洞窟なのに何故?ということは考えない。多分魔法だからだろう。必殺の威力を持つ大岩が、追い込まれたゴブリンを駆逐していく。隕石がやんだあとには大量の焦げた肉と金属片が落ちていた。冒険者カードを見ると、24まで上がっていたレベルが、30まで上がった。自分でも驚いた。ゴブリンたちもさすがに引いたのか、離れていく。ちょうどいいから少し休むことにした。もう一度カードを見てみると、

『MP 40/80』

 と表記されている。やっぱり魔力消費が多いな。あくまで切り札としてとっておくことにしよう。

 しばらくして魔力と生命力をすべて回復させてから、さあ行こうと立ったら武器を持ったゴブリンが突進してきた。俺はステップでよける。ゴブリンは壁にぶつかり、抜刀した俺はそのゴブリンを切りつけ殺す。後ろから襲ってくる気配を察知し、振り返り、今まさに俺に斬りかかろうとしていたゴブリンを斬る。左手の剣も抜き、警戒した。囲まれたようだ。



 右手と左手を高速で動かす。動かすたびゴブリンは切れていくがさらにその後ろからゴブリンが襲ってくる。終わりの見えない戦い。時々魔法も使いながらゴブリンを切り裂いていく。精神が擦り切れそうだ。

 あれを使うか……いや、近くにほかの人がいたらどうしよう。自分も巻き添えを食らうし………でも……。

 考えたところで隙が生まれたらしく、攻撃を当てられた。頭を殴られ、肩を斬られた。痛い。腹が立ったので、自爆覚悟で魔法を使う。

魔法強化チャージ隕石メテオ!!!」

 ボゴォォンチュゴォォォズドォォンンン!!

 大きな爆破音と皮膚が焼ける感覚、浮遊感、そして猛烈な脱力感。ただでさえ高威力な隕石魔法に魔力を多めにこめることで魔法の威力を上げる魔法強化をかければ、当然自分も巻き添えを食らうし、その上吹っ飛んでもおかしくない。そして、魔力が切れることも当然だ。

 頭から壁にぶつかる。頭に鋭い痛み。意識が離れかける。俺は意識をつなぎとめようとして、やめた。俺は、もう死ぬのだろう……。

 そう確信した。一年に二回死ぬなんて、そう無い経験だ。これまで何度かあった命の危険の中で、最も死に近い。しかし、何でか俺は死んでもいいと思えた。人生でやるべきことをやり遂げたからか。もうどうでもいいや。

 こうして俺は16年で2度目の人生の幕を下ろした


 ――と思ったのもつかの間、肌にぬくもりを感じた。

 痛みが消え、意識が戻っていく。命の瀬戸際だった俺はどこへやら。いつの間にかもとの状態に戻っていた。

 どういうことだ……ああ、そういうことか。

 ユウの方を見ると、ピースサインで返してくれた。

 ありがとう、我が友よ……。

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