第19話 ゴブリンの洞窟

そんなこんなで洞窟の前にたどり着いた。ここがゴブリンの巣らしい。2~3秒に一回ゴブリンが出てくる。ちょっと怖い。案内なのかどうか知らないが、入り口の前に冒険者が立っていた。

「すみません。第二陣の皆様ですよね」

「はい、そうですけれども」

誰かが返事をする。

「すみません。洞窟内はゴブリンが多いので、手伝っていただけますか」

なんてこった。彼は案内ではなく助けを求めていたのか。しかし、ベテランでもてこずる量ってどのぐらいなんだ。

俺たちは、彼の頼みを快く引き受け、想像もつかないまま洞窟へと入った。そこで見たのは驚きの光景だった。大量のゴブリンと人間が入り乱れ、戦っている。特に、ゴブリンは一体一体は雑魚だが半端無く数が多い。迷宮的なものではなく、ただただ広いスペースになっているようだ。

「おーい。みんなー。2陣が来たよー」

ユウの声だ。どこにいるのだろう。

「二軍の人はどんどんはいってー」

見回してもどこにもいない。

「ジュンヤ君。こっちだよ」

いつの間にか後ろにいた。「うわっ」と驚き、振り返った。

「あはははは。ごめん」

「謝るんならやるな」

「あはははは~。がんばってね~」

「ところで、さっきまでどこにいたんだ」

「あの上」

とユウが指差した場所は、洞窟の壁から小さく突き出ていた岩だった。

「・・・まじか」

「・・・まじ」

笑顔で答えるユウに驚きを隠せない。そんな俺を気にせず彼は言った。

「じゃ、僕はもう行くよ」

そういった彼は、笑顔のまま足に力を込め、笑顔のまま猛スピードで飛んで行った。それが何の比喩でもないことが、少々恐ろしかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る