第16話 決起集会

 翌日、ゴブリンの隠れ家が判明したらしい。そこに奇襲をかけるのがこのクエストである。

 町の冒険者たちが準備している。例えば武器を買う者、ポーションなどを買う者、教会で祝福を受ける者、家族に最後の別れを告げる者などさまざまだった。中には恋人に告白した人もいたそうだ(明らかにフラグだろう)。

 そして夕方、決起集会を行った。

「いよいよこの日が来たぞぉぉぉ!」

 冒険者たちが歓声を上げる。町の冒険者の全員が参加するらしい。

 それにしても何だこの異常な盛り上がりは・・・酒か。ユウと話していた俺は苦笑した。

 ユウは生前、普通の(最高にリアルが充実した)男子高校生だったようだ。通り魔に刺されて死に、異世界転生を果たしたという。転生時特典(チート能力)は超魔力。膨大かつ強力な魔力を持つというチートである。同じ転生者同士気が合い、よく話すようになっていた。

 いつの間にか決起集会が終わり、マッチョウさんが俺に話しかけてきた。

「ジュンヤ……お前、やっぱり行くのか」

「はい。一人でも多く戦わないと、ゴブリン全滅は難しいので」

「……死ぬかもしれないんだぞ。それでも行くのか」

「はい。人のために戦って死ぬのなら、それは本望です」

「……そうか」

 マッチョウさんはぞろぞろと出て行く冒険者たちの中に埋もれて見えなくなったが、最後にこう聞こえた。

「死ぬなよ」

 聞こえないとわかっていながらも返事をする。

「……はい。そちらこそ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る