第17話 戦闘開始

 その夜、俺たちは武装し、ゴブリン大征伐クエストに出かけた。

 ユウは先に出かけた。恐らくこの町最強の回復師ヒーラーなので、第一陣として駆り出されたのだろう。

 第二陣といえどもそう簡単にはいかない。仕事は、ゴブリンがアジトにしている洞窟から逃げて森に出てくるゴブリンの駆除だが、それがとても多い。

 森に入るといきなりゴブリンが現れた。数が多く、とても一気に倒しきれるような数ではない。しかし、

付与エンチャント火花スパーク

 麻痺効果のある刃で斬りつけてから倒せばこの限りではない。動きが止まれば圧倒的に倒しやすくなる。

 普通のゴブリンは、背丈は人間の子供のそれと大差は無く、討伐はあまり難しくない。むしろ、今まで倒してきたスライムよりも大きい分、斬りやすい。

 向かってきたゴブリンを剣で突き刺す。衝撃と確かな手ごたえ。相手が肉質のものだからこそ感じる命を奪った感覚。それに怖気づきながらも流れ込む力も感じた。経験値か。

 経験値とは、生き物が内に秘めた魂の記憶の別称である。ほかの生物の生命活動に止めを刺すことでそのものの魂の記憶の一部を吸収する。それが経験値である。経験値が一定数たまるとレベルが上がり、強くなる。つまり、経験値とレベルはその生き物の強さとともにその生き物がどれだけ生き物を殺したかも暗に示しているのだ。

 湧き上がる力に疑問を感じ、冒険者カードを見たら、なんとレベルが一気に5から11に変わっていた。レベルが一気に上がると、力が底から湧き上がる様な感覚があるらしい。それを体感しているようだ。こいつはどれだけの命を奪ったのだろう。目の前の、肉の塊と化したものを見て物思いに耽っていたところをゴブリンが襲ってきた。誰も気付いていない。一人で2体のゴブリンを相手にしなくてはならないようだ。

 俺に襲い掛かってくるゴブリンのうち片方は棍棒を持った青い肌のもの、もう片方は、どこから手に入れたのか、鉄製の剣と皮製の防具を使っていた。考えること、約0,1秒。防具を身に着けた方を攻撃することに決めた。二刀流をしようと思ったからだ。

 前から向かってくるゴブリンに右手に持ったままだった剣を振る。青い肌の方に当たり、そちらは痺れて動きを止める。スパークの効果で麻痺状態になったらしい。そして、そのまま流れるように剣を振り上げ、皮製の胸当ての上に見える首筋の緑色の皮をめがけて振り下ろした。

 果たして、その剣は命中。首を跳ね飛ばした。

「グギャッ」

 悲鳴を上げて絶命したゴブリンの剣を左手で奪い取り、そのまま、固まっていた青色のゴブリンを斬りつけて殺した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る