第9話 町長
翌日、目が覚めたら知らない場所にいた。
辺りを見回す。窓から明るい光が差し込んでいる。ベッドに寝かされていたようで、そばには禿げているマッチョのおっさんがいた。
「お、起きたか」
同じやり取りを1ヶ月以上前にしたような……
「ってここはどこですか!」
「いや、どこも何も町長の家に決まっているだろうが。いや、お前は行ったこと無かったっけ」。
―話によれば、町長が後で話を聞きたいからという理由で、スタミナ切れで気絶した俺をここで休ませていたということらしい。
起き上がって、すぐ近くにあった窓の外を見てみると、2~3mほど離れたところに酒屋の看板が見えた。
冒険者ギルドの前にあった大きな家は町長の家だったのか。
なぜか納得した。
しばらくすると、筋肉が程よくついていて髪の毛をオールバックにした30代前半ぐらいの男がタバコをふかしながら部屋に入ってきた。
「よぉ。よく眠れたか」
……………………上半身裸の変態さんであることも言っておこう。やべぇ。本当の意味でやばい。誰だ、この不審者は。強盗だとしたらどうしよう。マッチョウさんは全く警戒していない。どういう事だ。
10秒ほど考えて、逃げることを決めようとしたその時、ドアが開いた。
「カイ、いつまでその格好でいるの!風邪を引いたらどうするの!」
エプロンドレスを身に纏った少女が現れた。
「ファイ、俺はこいつを見に来ただけだ」
ファイっていうのかこの娘は。かわいいなぁ、年齢は俺と同じくらいかなぁ、などと妄想している間も
その口げんかの中、聞き逃せない言葉が聞こえた。
「もしもこの人が起きていて、あなたの姿を見ていたらどうするの!確実に不審者扱いよ!」。
もう起きているし、もう不審者扱いしている。
「心配性だな。まだ起きてねぇって……多分」
えっ、気付いていなかったのか。さっきの言葉は一体……。
「あのぉ~、すみません」
マッチョウさんが珍しく敬語で話しかけている。
「こいつ、もう起きていますよ」
「「えっ」」
二人がそろって驚きの声を上げた。
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