第1部 第2章 ゴブリン大討伐編

第8話 新たな敵

 今日は朝から週末恒例のスライム討伐である……が、いつものクエストが出ていない。どうしたのだろう。まあいいか。

 昨日、魔道書買って新しい魔法も覚えたし。

 ゴブリン討伐か。いつもと違うのもいいかもしれない。

 コボルト討伐もあるのか。面白そうだな。

 スライム討伐あった。1体でいいのか。しかも報酬がすごくいい。

 これにしよう、と思い紙を持ってカウンターに向かおうとすると、マッチョウさんが、

「おい、死ぬつもりか!早まるな!落ち着け!」と止めてきた。

「何でですか」

「だってスライムだぞ。あれに挑むつもりか。あの化け物に」

 いつもやっているじゃないかと言い返そうとしたところで思い出す。

 そういえば、いつものはスライムはスライムでも(幼体)じゃないか。恐る恐る紙を見るとそこにはスライム(成体)と書いてあるではないか!

「ジュンヤ、スライム(成体)はな、ウルヴェンなんかよりはるかに大きくて、巨大な魔獣もその体で丸呑みにしちまうのさ。俺も一回見たことがあるが、怖くてすぐに逃げたぜ。あの時は死ぬかと思ったぜ」

 とマッチョウさんがスライムの怖さを語る。

 怖気づいてきた。やっぱりやめよう。

 ゴブリン討伐にし、フィールドに出かけた。



 ――ゴブリンがいない。どこにもいない。というかここはどこだろう。

 スライムはどこにでもいるが、逆に言うと野生の魔物は(初日の魔獣を除くと)スライムしか見ていない。やべぇ、見たことの無い魔物を討伐するなんて言うんじゃなかった、と心の中でぼやきながら歩く。ここは、いつものフィールドから町を挟んで反対側にある森の中だ。いつもならここには野生の魔物がそれこそうじゃうじゃいるらしいが……

「木以外は何も無いじゃねーか」

 なにかあったのか……?と考える。当たり前の事である。

 しかし、それがフラグになったのだろうか。30分後、約4体のゴブリンが現れた。

 しかし、それらは全員鍛え上げられた肉体を持つ、大きいマッチョメンだった。



「何なんですかあいつら! ゴブリンの癖にすっげーマッチョですよ!」

「知らねーよ! あんなの見たことねーよ!」と、走りながら隣にいるマッチョウさんと会話する。

 今、件のマッチョムッキムキのゴブリンに追いかけられている。

 気付かれたとき、即座に覚えたての速度強化魔法ブースト・スピードを使って逃げたが、それが切れて追い着かれるのも時間の問題だ。

 見るからに強そうだ。多分勝てない。

 町に着くのが先か、追い着かれて殺されるのが先か。

 40分かけて休み休み歩いた道を10分で突っ走る。自分でも驚きのスピードだ。

 しかし、スタミナが切れてきた。後ろから巨大なマッチョメンが迫ってくる。もう死ぬ!

 と思ったら、もうすでに町だった。後ろのおっさんはマッチョウさんだった。

 なんでやねん。

 意識はそこで切れた。

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