三月二十六日、二十七日

 二十六日。

 知人の畑でやわらかな葉ものをいただく。ちらちらと地を白くするのはすももしきみ。ひっそりと実のしたくをする枇杷びわもある。

 朝晩寒く北の山の上側では雪が降ったという。


 二十七日。

 そこの庭でちいさく咲いているものたちの、このような会話。

 「点呼ゥ、サクラソウ」「はい」「カタバミ」「はい」「ムスカリ」「はい」「スイセン」「はい」「ベツレヘムの星」「だァれそれ」「はい」「まあ、いたわ」「ハナニラだって」「ベツ、なんて」「ベツレヘムの星」「なァにそれ」「聖夜の星さ」…

 「みな静かに。全員おるの」「先生がまだ呼ばれてません」「なに、わしはよい、わしはよい」「マグノリア先生!」「マグノリア先生!」「よいと言うのに。わしは花も終わったでの」「なァんだ、つまらない」「つまんない」「さァ座りなさい。もう話をはじめるぞ。きょうは春風とお月夜の決めごとについて…」…

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