一月十二日、十三日

 十二日。

 年が明けて十日も過ぎると、五軒に一軒くらいは、これまで放っていた田に構いだす。

 耕運機で乗り入れて、細く白く枯れ果てた切り房を掘り返す。見る間に草地は黒くなる。

 この黒い土は霜柱が立つのにちょうどいいかたさ。水をふくんだ朝に立派な氷の林をひろげる。あたらしい太陽にく氷の……。


 十三日。

 小正月の村の祭りは、きょう行われた。

 さんの枝さきに団子を付けて、田んぼのに当たりにいく。

 これは神さまの火なので、このなかで焼いた団子をいただくと無病息災であるとかいう。どんな理屈かと考えたら、きっと火の粉がからだろう。

 火の粉は火の子、精霊なので、ぱちっと団子にとりいて、それが体に入るとなると、なるほどやまいの気も退散するほかない。

 ところによっては石づくりのさいかみごと焚き火にいれるそうで、これはご利益すさまじく、山向こうの悪鬼も追い払えよう。

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