十二月二十九日、三十日

 二十九日。

 正月を迎える支度にかかる。知人から玄関飾りにと松やクマザサが届いたのを、家のひとが庭の南天とあわせてける。

 また、ひと束いただいた水仙で、いっぱいのよい香り。きめ細かな花びらは冬の便箋びんせん。透かせばきっと言の脈がある。

 何時間も台所に立つのは大変なので今年はやめようといいながら、結局いくつもの鍋に料理をこしらえる。できたてのが大皿に盛られて、村じゅうでおかずの交換がはじまる。


 三十日。

 そら人間ひとの暦に頓着せず凍てついている。山木の枝に星を垂らす。気ぜわしいさなか、無為のきらめきに息をつく。

 池がこおる、窓が氷る。あかいストーブの届かないところで。

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