十二月二十一日、二十二日

 二十一日。

 道を歩くと、どこの畑で使っているのかたいがにおってくる。ふと生家のそばにあった牛舎を思いだした。

 広い木造の三角屋根。古びたわら小屋ごや。絶えず聞こえてくる鳴きごえは力強く、また可愛らしかった。そこは同級生宅だった。

 よその家にはうまもあった。数年通ううち、ぼうの掃除や馬の手入れ、騎乗などを教わった。

 いま書きながら、手のひらによみがえるかれらの筋肉の熱。長いまつ毛に縁どられた瞳のうるおい。自由な尾のリズムを好ましく思う。


 二十二日。

 冬至。いつの間にか道ばたに水仙の列があらわれている。冬の風のなか、喇叭ラッパを口もとに楽隊でもやっているのだろか。聖夜が近い。

 夜。家のひとが、どこからか柚子をいただいてきて湯に浮かべる。湯気。鼻歌。ぷかぷか、ころころした黄の実を楽しむ。

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