十二月十一日、十二日

 十一日。

 起きてみると、呼吸をはじめた朝焼けのした、田畑が霜のとこになっている。なにを着ようか、厚いえりきを出そうか、考えながら台所で湯をわかす。

 夕方になって雨。暗くなるにつれて強くなる。ひやひやひや、ぱたぱたぱた。冬の精がこの水に溶けていて、地の底からあたりをてつかせる。


 十二日。

 昼すぎまで雨粒をいていた雲が、夜のはじめに千切れて三日月を見せる。冷気に磨かれた角の月。山はかっちり影になる。

 闇夜を駆ける、白い獣を幻視する。霜のからだに氷のひづめ。まなこは青銀せいぎんゆき結晶けっしょう。……はしる川水からも冬のにおいがする。

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