十二月九日、十日

 九日。

 外出。静岡県伊東市、野坂オートマタ美術館へといく。

 静かな照明のもとで幻灯げんとうか、サーカスのかけらを拾っていくような時間。

 きぬの衣装に身をつつみ、百年、まなしを変えない人形たち。月と道化師。酒とオルガン。少女と鳥かご。……発条ばねまた歯車が彼らの骨であり神経である。


 十日。

 夜の散歩。山際やまぎわせまる村の天には、んだ湖があらわれる。

 石段へとかけて、息を白くのぼらせて、糸をらして見あげていよう。星のうろこの魚を釣ろう。

 流れていく細い金の釣り針は、おそらく仙人が落としたもの。った手元が狂ったもの。

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