十一月十三日、十四日

 十三日。

 夢。紅葉を見に、山中の道路を歩く。ところがそのいろどりは舞台に描かれた背景画だったらしく、いつの間にか、わたしは客席にはさまれた通路に立っていた。

 舞台には役者がひとり。なにか劇的な動きで話を進めているけれど、ちっとも内容がわからない。もっとそばで見ようと、明かりに照らされた板のうえへと向かう。

 役者のとなりから客席側に振り向いてみると、勾配のついた椅子がぜんぶ紅葉もみじした色で、そこに立体の山をつくっている。客電は落ち、夜に包まれる秋の山。ひとつきりの照明はさながら満月だった。……


 十四日。

 散歩。歩いていても、いま進めている原稿のことばかり考えている。で、突然足もとに現れるカマキリなどにおどろいたりしている。

 南天の実がどこでも赤い。よくなったところは重さでしなっている。漬けもの用の大根がすだれのごとく干されている。

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