九月七日、八日

 七日。

 道ばたにツルボの群生ぐんせいを見る。やさしいむらさきが立ちあがって、いあっているのは美しい。好きな野花のひとつ。

 いねぶさの根元から新しく青い葉が生えてきて、田はつか、過ぎた季節を取りもどす。

 あぜには曼珠まんじゅしゃが咲いている。


 八日。

 夢。山道を歩いていたはずが、いつのにか見知らぬ町に出ている。雨が降るなかをれて歩く。

 めんでんしゃが動いている。ちいさな螺子ねじのたくさんついたブリキせい。四輪の自動車も信号も、おもちゃのつくりだけれど役をしている。

 見入っているうちに、そうだ、ここはおもちゃ屋なのだと気がつく。うでおくりものの箱を抱えている。中身が濡れていないか、そればかり心配している。……

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