八月二十七日、二十八日

 二十七日。

 村じゅう、藁草わらくさのにおいでいっぱい。雨が降るまえに仕事を終わらせようと、どこの田にもはたらくひとがいる。

 ある家の裏庭うらにわで今年もぶどうが生ったと、おすそわけをいただく。よくよく冷やす。つぶで甘くて美味しい。


 二十八日。

 夕方の村をゆっくりと一周する。

 土手にニラの花。ツクツクボウシ、コオロギらしい、やさしい声。トンボもよく飛ぶ。

 よその庭にはサルスベリが満開で、海の生きもののような、あのピンクの花弁をひろげている。


 いきづくげんし

 ちよりのぼつて

 たゆたういのち


 きんのたなだに

 きんのらせんの


 あおのしだれに

 あおのしぶきの


 ひかりのげんし

 たかくうたつて

 すみきるいのち


 あかのいりひに

 あかのほさきの


 くろのはたけに

 くろのわだちの

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