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 今日は先週ロードショーされた映画を観る為にショッピングモールを訪れていて、いい天気だったしアイスコーヒー片手に二本目の映画が始まるまでボーっとしようかなぁってベンチに座っていたら、少し先の桜の木の下ですごーく見たことのある二人組を発見。そこにいたのはガタイの良いおしゃれマッチョと、メガネの短い髪の女の子。

イツキちゃんはバイトをしている居酒屋でしか見たことがないから、フワッとした女の子らしいワンピース姿がちょっと新鮮。普段はボーイッシュなのにぐっと可愛らしく見えた。その隣にいるミケは相変わらず小洒落ていて超絶普段着でここにいる俺はある意味二人に出会いたくない訳で。だって映画見るだけの予定だったんだもん! てかやっぱりデートなの? デートなの!

「ふふふ」

「ぎ」

 突然の声にビクッと肩が揺れる。いつの間にこんなに近くにっ! 気づいたらミケとイツキちゃんは低木を挟んだ後ろのベンチに座った様子。うそ、こんな小説的展開になるなんて!

「ミケさんってやっぱり面白んですね」

「そんなことないわよ」

「いいえ、いつも楽しい方だなって思っていましたから」

 面白いってどの辺がっ。顔? 体型? トーク? 全部? なんて。

「これでも飲み屋をしているからね。トーク力だけはそれなりにあるのよ」

「ミケさんのお店ならとっても楽しいでしょうね」

「ふふ、でもイツキちゃんにはまだ早いわね。もう少し大人になってから」

 ミケの声が普段よりも柔らかくて優しい。生まれてからずっとゲイとして生きてきたミケは、イツキちゃんと出会って初めて異性を好きになれた。もちろんそれはいろんな面で簡単なことじゃない。

イツキちゃんにかける言葉の節々に好意と、どこか遠ざけるような印象を受ける。二人っきりでデート出来ていたとしても、まだ完全にイツキちゃんに対しての恋愛感情を受け入れられていないのかも。

「それじゃぁ二十歳を越えたらお店に行けますか?」

「そうねぇ、お酒が飲める歳になればそう言うお店に入ってもいいけれど、あたしのお店はイツキちゃんには」

 ちょっと刺激が強すぎる、か? オネェがネコ耳付けているしね。

「もうちょっといろんなことを勉強してからでも遅くな「じゃぁミケさんが教えてください」

「え?」

「ミケさんが、私を大人にしてください」

「「んっ」」

 ちょっと、えっちょっと。まって、そのセリフ、まって。イツキちゃん? えっ? イツキちゃん?

 低木の向こうを見なくても分かる。きっと今ミケは俺と同じ表情をしているに違いない。

 完全にノックアウト? それとも苦悩の始まり?

 そうか、もともとイツキちゃんはミケに気があったような感じだったし、な。

「どうしたんですか?」

「な、なんでもないわよ。ほら、も、もう時間じゃないかしら?」

「わ、本当だ。そろそろ映画が始まりますね」

 それからベンチを立ち上がる気配。

「うそ」

 映画? もしかしてこのあと二時間も気が気じゃないとかまじ勘弁だよ?

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