第5話 お花畑
今年で俺も6歳になった。やっと学園に入れる歳だ。
普段の教会での授業も楽しくはあるんでけど、同い年の人も居ないし、シスターさん達が教えてくれる。いや、教えられるのは魔力の操作くらいなもんだから暇でしょうがない。
この村から学園に入学するのは俺が初めてってことで、今日の夜は村総出で祝ってくれるらしい。嬉しい限りだ。
■
今日も教会での授業が終わって、帰り道に開拓された草原の前を通ると、村の子供たちの遊ぶ声が聞こえてくる。
「あ、おねーちゃん!」
遊んでいる子供たちの中から一人、こちらに向かって走ってくる。
「おーい、走ると危ないぞー」
そう声を掛けながら、こちらも妹に向かって走り出す。
「お姉ちゃん!私ね、お姉ちゃんにプレゼントがあるの!お目目つぶって!」
後ろ手に何か持ちながら、上目使いで聞いてくる。くそっ!そんな目で見られたら断れないじゃないかよ!最初から断る気はないけどさ。
俺は潔く目を閉じる。すると、妹が背伸びをする声と同時に頭の上に何か乗っけられた感覚がした。
「もお目開けていいよ」
ゆっくりと目を開けると、さっきまで遊んでいた子供たちが妹の隣に並んで立っている。
「「「「お姉ちゃん!入学おめでとう!」」」」
子供たち一人一人が俺に対して、フラワーリースや花で編んだレイなどのプレゼントを渡してくれた。
妹は花で作った冠を俺の頭に乗せてくれている。
こんなにうれしいことをしてくれたんだ。俺からもお返しのプレゼントをしよう。
手に魔力を込めて、一つの文字を書く。
【満開】
白く輝く魔力が空中に文字を描くと、辺りのまだ咲いていなかった蕾や枯れてしまっていた花たちが一斉に花を咲かせ始めた。
「「「「うわ~」」」」
辺りに咲き誇った色とりどりの花を見て、子供たちは感嘆の声をあげる。
しかし、俺は重大なミスを犯した。この世界には地球にも居た通常の獣以外に危険生物が居たことを。
「じゃあ、そろそろ村に戻ろうっか!」
皆で横一列に手を繋いで村に帰っていった。村に危険が迫ってきているとは知らずに…
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